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- 大腿骨近位部骨折のリハビリテーション [動画付き]
商品情報
内容
対応が難しく、効果が上がりにくい大腿骨頸部骨折のリハビリが、写真と動画でビジュアルにわかります。
大腿骨頸部骨折の概要・合併症の知識から、急性期から回復期で必要とされる知識や訓練方法、在宅生活に向けての評価や訓練・指導について、内容を構成しました。
養成校卒業後~3年目までの若いセラピストの実力向上に役立つ一冊です。
序文
はじめに
大腿骨近位部骨折はリハビリテーション医療で対応の難しい疾患である。そのことは2018年(平成30年)に回復期リハビリテーション病棟協会がまとめた「全国調査報告書」で、骨折患者は脳血管系患者より約7歳も高齢で、アウトカムを示す実績指数は脳血管系患者に比べて整形外科系患者では約7点も低いことからも分かる。
また現在、全国の回復期リハビリテーション病床数は、当初の必要病床数の約3割も多い80,112床となっている。脳血管系患者/整形外科系患者の入院患者割合の推移を見ると、2001年の70.8%/15.1%から、2017年には45.9%/46.0%と、整形外科系患者が著増している。
このように対応が難しい、効果が上がりにくい、病床数が過剰、患者数が著増といった背景を有する大腿骨近位部骨折患者のリハビリテーション医療への取り組みには、セラピストのスキル向上が求められる。
本書『大腿骨近位部骨折のリハビリテーション』は、入院後の早期退院と元どおりの在宅生活を獲得することを目標に、急性期・回復期のリハビリテーション訓練の実際と、それに必要な知識をまとめたものである。
CHAPTER1で大腿骨近位部骨折に対する急性期リハビリテーション、CHAPTER2で回復期リハビリテーション、CHAPTER3でリハビリテーション後の自宅での過ごし方を、それぞれ述べる。具体的な内容は以下のとおりである。
CHAPTER1では、大腿骨近位部骨折の概要や合併症、術前・術後リハビリテーションに向けての評価法・訓練方法を解説する。急性期病院では、大腿骨近位部骨折のタイプと手術の有無・時期の確認、患者の個人的・社会的・医学的情報の把握、仰臥位~端座位~立位~車椅子移乗やADLについての評価に基づいて術前・術後リハビリテーション訓練を実施する。人工骨頭置換術後では脱臼肢位、骨接合術後では負荷量に留意して訓練を行い、要望の多い排泄動作訓練を実施して、回復期リハビリテーション病棟へ転棟となる。
CHAPTER2では、急性期病院での訓練動作の確認とバリエーション増加のために立位・歩行の評価法を解説し、多様な動作訓練、ADL訓練、筋肉増強訓練を実施する。
急性期リハビリテーションでの獲得動作の再確認と応用動作拡大のため、回復期リハビリテーションでは多様な方法での起立動作訓練、歩行訓練、床からの立ち上がり訓練、乗車訓練を実施する。更衣、排泄、入浴など日常生活動作訓練とともに立位・歩行時の腰部安定性を保つために腰部ローカル筋、グローバル筋の筋力増強、バランス機能の評価・強化、なども行う。これにより「している日常生活」に習慣づけて自宅生活に移行させる。CHAPTER3では、退院後の在宅生活を見据え、患者の置かれる環境の評価・調整、退院指導、退院後自宅で行う自主訓練について解説する。
訓練後の在宅生活に向けて日常生活評価と家屋調査の結果に基づき、家屋環境を整え患者・家族へ再訓練と指導を行なう。退院後も骨粗鬆症治療・転倒予防の指導により再骨折を防ぐとともに、人工骨頭脱臼の予防、自宅でできる抗重力筋の筋力増強訓練を指導する。社会参加を通して活動的な毎日を送り、以前どおりの自分らしい暮らしを生涯にわたって続け、生きがい実現に向けることが、包括的な退院生活指導であることを述べる。
* * *
本書は、セラピストの末永健一と医師の林泰史とが中心になって、多くのセラピストによって著された。
セラピストの末永健一は、既に2004年ごろ、原宿リハビリテーション病院の姉妹急性期病院で、急性期疾患の治療後に心身機能を回復させて生活基盤を維持させることを目標に急性期リハビリテーションに取り組んでいた。
一方、医師の林泰史は、1965年の新人整形外科医時代に、日本の第1期療法士教育のためにアメリカから清瀬リハビリテーション学院へ派遣された理学療法士からリハビリテーション医療の神髄を学んだ。当時、林泰史は、アメリカの理学療法士の通勤経路に当たる東京大学病院の整形外科病棟に勤務していたため、寄り道をした理学療法士から、入院患者の理学療法の実技・講義をしていただく機会を得たのである。
急性期リハビリテーションの夜明け前からセラピストとして活躍してきた末永健一と、リハビリテーション医療の黎明期に本格的な理学療法を学んだ林泰史とが、リハビリテーション医療に関わる経験と熱意を若きセラピストに伝えようと編著したのが本書である。
ぜひ、本書を活用して、近年、その重要性がとみに高まっている大腿骨近位部骨折のリハビリテーションに役立てていただきたい。
2018年5月末日
原宿リハビリテーション病院
林 泰史
目次
CHAPTER.1 回復期リハビリテーションにつなげる急性期リハビリテーション
Contents 再転倒・再骨折を繰り返さない生活基盤づくりの出発点
SECTION.1 大腿骨近位部骨折の概要
股関節の解剖/大腿骨近位部骨折のタイプ/大腿骨近位部骨折の局所症状/
全身的な合併症とリハビリ阻害因子/大腿骨近位部骨折の治療法/
治療法の選択
SECTION.2 受傷前の生活や心身機能の評価
急性期リハビリの目的/急性期リハビリに向けての情報収集/
術前リハビリでの心身機能の評価
【DVD収録】
1-1 仰臥位→端座位→車椅子移乗までの動作の評価(術前)
SECTION.3 急性期病院での術前リハビリ訓練
術前リハビリ訓練の目的/術前リハビリ訓練の概要/
術前リハビリ訓練の内容/合併症予防への配慮
【DVD収録】
1-2 膝・股関節の可動域訓練(健肢)/1-3 足関節の可動域訓練(健肢)
1-4 大腿骨四頭筋の筋力増強訓練(健肢)/1-5 中殿筋の筋力増強訓練(健肢)
1-6 前脛骨筋の筋力増強訓練(健肢)/1-7 下腿三頭筋の筋力増強訓練(健肢)
SECTION.4 急性期病院での術後リハビリ訓練
術後リハビリ訓練の目的/術後リハビリ訓練に必要な身体機能の評価/
骨折タイプ・術式に応じた術後リハビリ訓練の設定/
術後に新たに追加するリハビリ訓練の内容/高齢者心理に配慮した急性期リハビリ訓練
【DVD収録】
1-8 後外側アプローチによる人工骨頭置換術後の脱臼肢位/
1-9 前外側アプローチによる人工骨頭置換術後の脱臼肢位/
1-10 股関節の可動域訓練/1-11 足関節の可動域訓練/
1-12 大腿四頭筋の筋力増強訓練/1-13 中殿筋の筋力増強訓練(仰臥位)
1-14 中殿筋の筋力増強訓練(側臥位)/1-15 仰臥位→端座位への起き上がり訓練
1-16 移乗動作訓練(ベッド→車椅子)/1-17 平行棒を使った起立訓練
1-18 起立訓練後の筋力増強訓練/1-19 平行棒を使ったステップ訓練
1-20 平行棒を使った歩行訓練(横歩き・後ろ歩き)/
1-21 患者との心理的な関わりとしての声掛け
CHAPTER.2 在宅復帰へとつなぐ回復期病棟でのリハビリテーション
Contents 「しているADL」を獲得し早期の自宅退院を目指す
SECTION.1 起き上がり・つかまり立ちの指導・訓練
仰臥位から端座位への指導・訓練/端座位からの起立動作の指導・訓練
【DVD収録】
2-1 人工骨頭置換術後の患者(仰臥位→端座位)/2-2 運動効率の良い起立動作/
2-3 高座位での起立/2-4 縦手すりでの起立/2-5 前方支持での起立(手すり)/
2-6 平行棒内での起立/2-7 プッシュアップでの起立
SECTION.2 立位から歩行、ADL確立までの訓練
移乗動作訓練/平行棒内歩行訓練/
歩行補助具による歩行訓練/ADL訓練
【DVD収録】
2-8 一般的な移乗動作(ベッド→車椅子)/2-9 患側方向への移乗動作(ベッド→車椅子)/
2-10 平行棒内歩行訓練/2-11 T字杖での歩行訓練/2-12 下衣の脱衣動作/2-13 下衣の着衣動作/
2-14 ズボンエイドの使用方法/2-15 靴下の着脱/2-16 ソックスエイドの使用方法/
2-17 浴槽内への出入りのための環境整備/2-18 浴槽内での立ち座りのための環境整備/
2-19 洗体・洗髪のための環境整備
SECTION.3 ローカル筋・グローバル筋・大腿四頭筋の増強訓練
体幹の構成/ローカル筋の評価と筋力増強訓練/
グローバル筋の筋力増強訓練/大腿四頭筋の筋力増強訓練
SECTION.4 日常生活につながる応用動作訓練
床からの立ち上がり訓練/階段昇降訓練/屋外歩行訓練/
自動車への移乗動作訓練
【DVD収録】
2-20 長座位からの四つ這い位による立ち上がり訓練/
2-21 正座からの立ち上がり訓練/
2-22 テーブルや台を使用した立ち上がり訓練
SECTION.5 立位・歩行安定についての評価
バランス機能とバランスの制御/静的バランス機能の評価/動的バランス機能の評価/
静的・動的バランス機能の評価
回復期リハビリ訓練のまとめ
CHAPTER.3 退院指導での身体機能向上・再骨折予防のスキル
Contents 生活期・在宅期へとつなぐ退院支援としてのリハビリ訓練
SECTION.1 ホームエバリュエーション
ホームエバリュエーションの実施/家屋調査
SECTION.2 活動・社会参加に向けての指導
生活状況の改善を目指すリハビリ/活動・社会参加に向けて必要なリハビリの視点
◆症例研究◆
社会参加への希望に応えるプログラムの構築
事例:80代 男性 要介護2 診断名:大腿骨近位部骨折 既往歴:高血圧症
SECTION.3 退院指導
大腿骨近位部骨折患者への退院指導/再転倒予防のための指導/
骨粗鬆症に対する指導
SECTION.4 退院後の自主訓練と脱臼予防の指導
推奨される自主訓練/自主訓練の実際/脱臼予防の指導
退院指導のまとめ
巻末付録1 機能的自立度評価表(FIM)
巻末付録2 バーセルインデックス(BI)
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書籍情報
- ISBN:9784899964063
- ページ数:192頁
- 書籍発行日:2018年6月
- 電子版発売日:2019年9月4日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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