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商品情報
内容
スポーツ整形外科とは、平易ないい方をすれば、“日常生活に支障はないが、スポーツ活動には支障を来す疾患の診療を行っている科”といえます。一般整形外科医が、“保存的加療で十分”と判断した疲労骨折であっても、スポーツ選手の場合は、保存療法で症状やレントゲン所見が改善しても、競技復帰後に再骨折(再発)して手術加療が必要になることがほとんどです。このような疾患について、基礎知識から解説します。
序文
編集者の言葉
よく、"スポーツ整形は、整形外科とどう違うのですか?"と尋ねられることがあります。見学に来る学生さんや専攻する科を検討している研修医の先生だけではなく、同じ病院の整形外科や他科の先生にも聞かれることがあります。
"スポーツ整形"というネーミングから、漠然とながらも科のイメージはわきやすいので、"ああ、あのラグビーの試合で選手が倒れたときに、やかん持って走っている、あの人ね"という印象を持たれやすいです。事実、同僚の整形外科の先生でも、"スポーツ選手だけ診ている整形外科医"と思ってらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。
そこでこの場をお借りして、"スポーツ整形とは?"について少し述べさせていただこうと思います。
日本のスポーツ整形外科の歴史を紐とくと、1980年に中嶋寛之先生が関東労災病院に日本で最初のスポーツ整形外科を創立されました。そのきっかけとなったのが、膝の前十字靱帯損傷の診断と治療でした。今では整形外科の先生のみならず、多くのアスリートの間でも広く知られるようになった疾患ですが、MRIもなかった当時は、診断に難渋するどころか疾患の存在すらもわからないものでした。
"膝をひねって腫れたけど1か月もすれば軽く走れるようになった。でも、ひねると膝が痛くなり、ランニングはできるけど、スポーツは満足にできない"という症状は、当初は膝の「半月板損傷」として扱われ、手術が行われてきました。しかしながら、半月板切除をしてもスポーツに復帰できない選手が少なからずいることから、中嶋先生は原因が別にあると考えられ、ようやくこの疾患の存在を突き止め、診断方法と手術治療法を編み出されたのでした。
その後、MRIの登場と関節鏡の技術革新・手術手技の進歩により、前十字靱帯損傷はスポーツ整形外科医であれば、診断と手術は通常の治療として行うことができる疾患になりました。現在では、膝前十字靱帯損傷はスポーツ整形外科の代表的疾患であります。
つまり、スポーツ整形外科とは、"スポーツで受傷した整形外科的疾患の治療を行っている科"であります。平易ないい方をすれば、"日常生活に支障はないが、スポーツ活動には支障を来す疾患の診療を行っている科"といえます。
具体的には、膝前十字靱帯損傷以外に疲労骨折・肉離れ・反復性肩関節脱臼などがあります。疲労骨折のなかでも、例えば第5中足骨基部疲労骨折は、レントゲンでは骨折線はtinyで、保存的加療で骨折線は消失傾向に向かいます。そのため、一般整形外科医は、"こんな小さな骨折線で、転位がなければ保存的加療で十分"と判断してしまいます。
しかしながらスポーツ選手の場合は、保存療法で症状やレントゲン所見は改善しても、スポーツ復帰すれば再骨折(再発)してしまうことが多く、手術加療が必要になることがほとんどです。
肉離れに関しても同様で、一番ポピュラーで治療を慎重に進める必要がある、大腿屈筋の肉離れでは通常、"湿布を貼って安静にしていればいいですよ"とのアドバイスで終わってしまうことがほとんどです。しかしスポーツ選手にとって大腿屈筋の肉離れは、適切な治療を行わないと選手生命にもかかわる重症な怪我なのです。昨今では、日本ハムの大谷選手が受傷から復帰までに2か月余りを要したのは記憶に新しいところです。
以上のように"日常生活には困らないものの、スポーツ活動には支障を来す疾患"に関して、その診断を中心に本書ではまとめてみました。読者の皆様の診療の一助になれば幸いと考えています。
岩噌弘志
目次
概説
スポーツ外傷の病態と診断
Chapter 1 スポーツ外傷の基礎知識
専門医に送るタイミング
女性アスリートの諸問題
ドーピング
Chapter 2 各疾患のマネジメント・発生機序・病態・治療
❖肩関節疾患
外傷性肩関節脱臼
腱板損傷
肩鎖関節脱臼
❖肘関節疾患
外側型野球肘(離断性骨軟骨炎)
内側型野球肘
❖膝関節疾患
前十字靱帯損傷
半月板損傷
❖下腿疾患
下腿疲労骨折
シンスプリント
❖足関節・足部疾患
アキレス腱断裂
足関節外側靱帯損傷
足関節軟骨損傷
足関節軟骨骨棘
ジョーンズ骨折
❖その他
肉離れ
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書籍情報
- ISBN:9784908083198
- ページ数:184頁
- 書籍発行日:2017年9月
- 電子版発売日:2018年12月14日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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