皮膚病診療Vol38, No.6(2016年6月号)

  • ページ数 : 100頁
  • 書籍発行日 : 2016年6月
  • 電子版発売日 : 2016年10月28日
2,640
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商品情報

内容

Vol.38 No.6【特集:鑑別に苦慮した皮膚病(2)】

本誌は「臨床医のための月刊皮膚病総合雑誌」を標榜しており、以下の7つを特徴としております。

1.毎号特集形式―実地診療に役立つ
2.カラー印刷―わかりやすく伝える臨床情報
3.多彩な執筆陣―全国にまたがるネットワーク
4.アンケート特集―実地医家の生の声を
5.学会ハイライト―日皮会総会、支部総会の情報を
6.座談会―著名な臨床家、研究家によるディスカッション
7.増刊号―通常号に加えてさまざまな情報を

このほか、読者の方からの意見や投稿を掲載する「声」欄も充実しています。

序文

皮膚科を楽しむ

人工知能AlphaGoが囲碁九段を打ち破ったというニュースが目に留まった.これまでの3千万種のプロ棋士の布石を記憶し,さらに自らと対局して学習する深層学習によってこの快挙に至ったのだという.人工知能は,すでにチェスのグランドマスター,将棋のプロ棋士の打ち破った実績を持っている.これは驚くべき進歩だという.人工知能によるAI文化の進歩は目覚ましく,筆者のようなアナログ文化を楽しんでいる昔人間には到底ついていけない世界である.そんな凡人の行いも人工知能からはお見通しということなるのだろうか.型にはめ込む考え方を拒否し続けながら生きてきたのだが,それも人工知能の手のひらの中での出来事となってしまうのだろうか.素晴らしい進歩であるが,反面,恐ろしさと侘しさを感じさせる.人工知能の導入により,日々の労働時間は短縮し,はては,全人類が失業に追い込まれるのでないかという話も持ち上がりつつある.

 日頃の活動である皮膚科診療を振り返ると,これまで得てきた経験則を駆使して診断と治療を組み立てている.近年の定形型文化の所為か,略語が蔓延し,ガイドラインが横行し,皮膚病の面白さが失せつつあるのを嘆いている.あるとき,略語を駆使して話している若手に,その略語のもとの言葉をこっそり訊ねたことがある.すると,蔑むような眼差しでこちらを眺められたのだが,最後まで答を教えていただくことができなかった.

 皮膚病の診断は,皮膚に表現される症状の形態,性状,色調,分布などの情報を集め,それを総合して分析することによって行われている.ここに人工知能が入ってきたらどのようになるのだろうか.センサーに皮膚をかざしてスイッチを押すと診断名が画面に現れるようになるのだろうか.診断が決まれば「次へ」のボタンを押して「治療薬」ボタンを押すと,機械から軟膏と内服薬がゴトンという音と共に出て,同時に使い方を記した紙切れがプリントアウトして排出されることになるのだろうか.ここまで来ると皮膚科医の役割はなくなってしまう.お飯の食い上げである.「医者が暇であることは人類が平穏な証拠である」と高をくくっている場合ではなさそうである.ありがたいことに今のところ,皮膚症状を十分に感知できるセンサーが出来上がっていないし,また,さらに重要な皮膚病に対する考え方のデータが整備されていないので,何とかお飯を食いつなげているのだが,これも時間の問題かもしれない.患者にわかりやすい医療が推奨されている現状では,医療の機械化が推進されるので,人工知能を駆使した機器の医療への進出が加速されることにもなろう.

 皮膚病診療の神髄はもっと面白味のあるものであると信じている.先人の努力の結果,多くの皮膚科遺産が積み上げられている.同じ皮膚症状を発していても,生命現象の織り成す結果が皮膚病として表現されるので,個々の症状に多様性があり,また,その原因も多種多様である.それらを探しあてるのが皮膚科医である.思いもかけぬ正解に出くわすこともしばしばである.皮膚科の研究分野では日々新しい発見が報告されているが,臨床皮膚科にこそ,もっと楽しい発見が待っているのではなかろうか.皮膚科診療がもっと楽しくなるはずである.是非とも皮膚科臨床を楽しいものにしていただきたいと願っている.

西岡 清

目次

臨床例

毛包炎が疑われた皮膚放線菌症

線状扁平苔癬との鑑別を要した線状苔癬

尖圭コンジローマとの鑑別を要したCrohn病に伴う肛囲病変

卵巣癌治療中に発症し薬疹との鑑別を要した皮膚筋炎

DLEを併発したC1 inhibitor欠損症

当初は血管性浮腫を疑った上大静脈症候群の例

尋常性痤瘡様の皮膚症状を呈した結節性硬化症

弾性線維性仮性黄色腫との鑑別を要した腋窩の多発性丘疹の2例

虚偽性障害(ミュンヒハウゼン症候群)により壊疽性膿皮症様の潰瘍を呈した症例

α2アドレナリン受容体作動薬の外用が紅斑の軽減に有効であった酒皶の症例

舌に生じ,類上皮型血管肉腫との鑑別を要した化膿性肉芽腫(pyogenic granuloma)

結核性反応性関節炎

診断に苦慮した汎発性環状肉芽腫

無治療で消褪と出現を繰り返した顔面肉芽腫

リポイド類壊死症と鑑別を要した皮下型皮膚サルコイド

英文抄録

editorial

皮膚科を楽しむ

topics

乾癬の免疫学的病態

食物アレルギーの原因抗原コンポーネント検索

蝶の博物詩

生態12

学会ハイライト

第79回日本皮膚科学会東京・東部支部合同学術大会を終えて

皮心伝心

リセット

診察室の四季

梅雨

皮膚科のトリビア

第132回

皮膚科が危ない

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書籍情報

  • ISBN:9784992000064
  • ページ数:100頁
  • 書籍発行日:2016年6月
  • 電子版発売日:2016年10月28日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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