皮膚科が変わるか

新しい年が始まりました．今年はトランプ大統領政権が発足し，いろいろなことに変化が出てくるのではと巷で議論されています．アメリカという大国がどのような方向に動き出すのか，我が国にとってプラスの方向に動き出すのか，読者の方々も興味を持って見つめられていることと思います．英国のEU離脱，フィリピンのドゥテルテ大統領の誕生，また，トランプのクリントンに対する勝利などの事態がおこっています．世の中の人々が自国内に目を向け，国粋主義者的行動をとることになるのでしょうか．留学して以来ずっと国粋主義者で生活している筆者にとっては興味がわくところです．世界が小さくなり，それぞれの国の区別がつきにくくなっていることが原因の一つなのでしょうか．

かつて「グローカル」なる言葉を提案したことがあったが，正しくグローカルな姿勢が必要になるのでしょうか．皮膚病の世界では，最新の研究はどんどんグローバル化しているが，臨床皮膚科ではローカルな部分が大きな位置を占め，ローカルからグローバルへ，そしてローカルへと循環している．人々の動きが大きくなりローカルな病気がたちまちにしてグローバル化していることにお気づきのことと思う．リオデジャネイロで大騒ぎされたジカ熱は，あっという間に北アメリカ大陸に拡がり，東南アジアにも拡大し，本邦でもみられるようになりそうである．感染症に比べて一般の皮膚病はその動きが小さく拡大傾向は著明ではないが，本邦で多発し社会問題にもなった重症成人型アトピー性皮膚炎もあっという間にヨーロッパ，アメリカに顕在化するようになった．この変化には，アトピー性皮膚炎の治療に対する認識不足と生活様式の近代化が大きく影響していたのだろう．しかし，このような状態があったからこそ，アトピー性皮膚炎に対する研究成果が積み重ねられたものとも考えられる．

病院の皮膚科は収益が悪い診療科として位置付けられている．生物学的製剤の登場で，その位置取りが多少よくなってきている．しかし，地域医療計画が提案され，患者は高度急性期，急性期，回復期，慢性期の病床にそれぞれ分かれて入院することになりそうだ．皮膚病患者のうち手術患者，救急患者は高度急性期病棟あるいは急性期病棟に入れるが，緊急性はないが生活の質を大きく低下させ新しい治療を求めている皮膚病患者はどこに入院させてもらえるのだろうか．大学病院に入院する患者の種類は限られ，幅広い疾患をみることが出来なくこともおこりうる．学生への十分な教育も難しくなるのではと取り越し苦労をしている．

今年は医療を含めたいろいろな面での変化がおこりそうだ．私たち皮膚科医がどのように動けばよいのか考える年になりそうである．

西岡　清