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- 人工心肺ハンドブック 改訂3版
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序文
改訂3版の序
人工心肺は文字通り,人工的に心臓と肺の機能を代行する装置であり,究極の生命維持装置といえます.人工心肺の運転中に心臓は停止され,拍出されるべき血流は途絶え,その間に外科医は心臓や大血管を修復することができるのです.人工心肺の登場によってそれまで治療不可能だった多くの人々が救われ,人類は多大な恩恵を受けてきました.心臓血管外科手術の発展は,この人工心肺の発達と表裏一体といっても過言ではなく,人工心肺が安全に運転できることが治療成績向上の前提となっています.医学と科学技術の発展とともに順調に発達してきた人工心肺ですが,今も人工心肺による体外循環に関連した事故の報告が散見されます.その多くは初歩的な人為的ミスと関連しており,後からみれば防止できた事例が大半なのです.
人工心肺に携わる我々は,人工心肺に命を預ける患者さんの期待に応えられるよう「安全第一」を目標に掲げて,日々ハードウエア(装置)とソフトウエア(技術と教育)の改善と向上への努力を怠ってはなりません.特に,体外循環操作に注意をはらうだけでなく,さまざまなトラブルを想定し,それらから脱出する術(すべ)を身に着けることが必要です.トラブルからの脱出に失敗すれば,患者の死にも直結しかねないのが人工心肺なのです.
本書は好評を得た2004 年出版の初版,そして2009 年出版の改訂第2 版の内容に,新たに装置の基本構造や新しい補助循環デバイス,小切開心臓手術の体外循環などの解説,そしてトラブルの具体例をあげながらその予防策や手技的な対処法を全面カラーの図を多く盛り込んで改訂した第3 版です.これから人工心肺を学ぼうとする学生にも,これまで人工心肺に携わってきたベテランにも納得して頂けるものを目指し改訂いたしました.
なお本書は,理論と筆者らの経験により導かれた技術書です.体外循環のエビデンスは医学の進歩と共に日々進化し更新されるので,最新の学術報告や学術書籍も参考にし,病める患者のために安全かつ確実な体外循環を目指して頂ければ幸いです.
2020年7月
著者
目次
序章 心臓血管外科手術と人工心肺
1.心臓血管外科手術の目的
2.心臓血管外科手術の概要
3.日本における心臓血管外科手術数
4.安全管理の重要性
第1章 体外循環の実際
1.情報の収集と体外循環プランの作成
2.体外循環回路の組み立て
3.回路の充填
4.各部の点検
5.ヘパリンの投与
6.カニューレの挿入(カニュレーション)
7.体外循環の開始
8.冷却(低体温体外循環の場合)
9.完全体外循環(全体外循環:total perfusion)
10.大動脈遮断
11.心筋保護液の注入
12.体外循環の維持
13.復温開始
14.大動脈遮断解除
15.心拍動再開
16.体外循環からの離脱
17.体外循環終了後の処理
第2章 人工心肺装置
1.人工心肺装置
2.血液ポンプ
3.人工肺
4.貯血槽(リザーバー:reservoir)
5.体外循環回路
6.付属回路
第3章 人工心肺の安全装置と周辺機器
1.人工心肺の安全装置と安全モニター
2.冷温水槽1
3.自己血回収装置(セルセーバー:cell saver)
第4章 体外循環中のモニター
1.患者側モニター
2.人工心肺側モニター
第5章 特殊体外循環
1.脳分離体外循環法
2.部分体外循環法(F−Fバイパス)
3.左心バイパスと部分バイパス法(LA−FA,Ao−FAバイパス)
4.超低体温循環停止法
5.手術中の循環補助法(ミニサーキット)
第6章 体外循環の危機管理
1.人工心肺のリスクの分析
2.安全な人工心肺システムの構築
3.トラブルの対処の流れ
4.トレーニング
5.具体的な体外循環トラブルの対処法と予防策
第7章 補助循環
1.補助循環の種類
2.PCPS(経皮的心肺補助装置)
3.IABP(大動脈内バルーンポンプ)
4.VAS(VAD:補助人工心臓)
第8章 システムの設計と教育管理
1.ポンプシステムのレイアウト
2.使用材料の選定
3.体外循環回路の設計
4.教育
5.マニュアル作成
6.日常点検と定期点検
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書籍情報
- ISBN:9784498039186
- ページ数:0頁
- 書籍発行日:2020年7月
- 電子版発売日:2020年7月21日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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