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- 小児の弱視と視機能発達
商品情報
内容
本書は、弱視の病態・検査・治療を深く多面的に学べるよう数多くの科学的根拠を紹介し、基礎研究から最新の臨床まで幅広く取り上げている。弱視の病態に合わせてエビデンスに基づいた治療を選択する助けになり、小児眼科に携わる眼科医療者にとって必携の一冊である。
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序文
序
生まれた時のヒトには,小さな字を読めるような視力はありません.ヒトの視力は生後,適切な視環境が与えられることによって育ちます.その視力の発達が,小児期に十分に起こらないのが医学的弱視です.一方,さまざまな原因による低視力で生活に影響が及ぶような状態も弱視(ロービジョン)と呼び,世間一般には弱視というとロービジョンのことを指し示すことが多いです.しかし,ロービジョンを意味する社会的・教育的弱視と視力発達異常の医学的弱視は全く別の概念なので,この2つの弱視を区別して考えることが必要です.本書では,後者の医学的弱視とそれに関連する小児の視機能発達について取り扱っています.また,視力検査はきわめて重要な検査ですが,視覚の機能は視力だけではありません.そこでここでは,視力よりも広い意味を示す視機能という用語を使っています.弱視の存在は古くから知られていましたが,弱視についてはいまだにわからないことが多く残されています.弱視という疾患のメカニズムもよくわかっていませんし,弱視の治療法も完全に確立されているとはいえません.しかし,実験動物またはヒトの弱視における多くの基礎・臨床の医学研究によって得られた知見により,弱視についての理解が少しずつ進んできています.1981 年にノーベル生理学・医学賞を受賞したHubelとWieselの視覚情報処理の研究は,弱視に密接に関連しています.ヒトの弱視に対しては神経画像研究が盛んです.近年ではゲームを使った弱視治療も話題になっています.
弱視について記載されている書籍は多いですが,弱視にターゲットを絞った成書はこれまで,あまり多くありません.そこで本書は,基礎から臨床までのさまざまな観点からできるだけ深く弱視に迫ってみたい,という考えに基づいて作成されました.本書は,心理学・基礎医学・臨床医学それぞれの分野において弱視を専門とする研究者が執筆しています.しかし,書籍全体の統一性を保ちたいという理由から,少数の著者で内容をまとめました.
本書は,主に眼科臨床に携わる眼科医や視能訓練士などの医療従事者や医療系の学生の方々が弱視についての理解を深められるように書かれています.しかし,弱視の病態には脳の形態や機能も関連しますので,脳科学分野の研究者の方々にも本書が参考になれば幸いです.最後に,本書の企画および編集作業を担当して下さった三輪書店の久瀬幸代さんにお礼を申し上げます.
2020年9月
三木淳司
目次
Chapter1 弱視の病態
1 弱視の定義(三木淳司)
弱視とは何を指すのか?
社会的・教育的弱視(ロービジョン:low vision)と機能的・医学的弱視(amblyopia)
弱視(amblyopia)の定義
弱視の定義の歴史的変遷
弱視に関連した用語
2 小児の正常視機能発達 (荒木俊介・三木淳司)
形態的発達
視力の正常発達
両眼視機能の正常発達
視野の正常発達
3 弱視の疫学と頻度 (荒木俊介・三木淳司)
弱視の有病率
片眼弱視と両眼弱視の頻度
4 弱視の分類 (荒木俊介・三木淳司)
弱視の原因別分類
形態覚遮断弱視
屈折異常弱視
不同視弱視
経線弱視
斜視弱視
微小斜視弱視
5 眼振と弱視 (荒木俊介・三木淳司)
先天眼振
先天眼振と弱視
6 弱視と鑑別が必要な疾患 (荒木俊介・三木淳司)
弱視と間違われやすい網膜疾患
弱視と間違われやすい視神経疾患
弱視と間違われやすいその他の疾患
7 弱視の研究
A 動物モデル(亀山克朗・畠 義郎)
視覚神経経路
大脳皮質でみられる両眼反応性とコラム構造
動物モデルにおける弱視の誘導
動物における視機能の評価
片眼遮閉による生理学的な活動変化
片眼遮閉による解剖学的な構造変化
弱視が起こる時期
弱視を引き起こす分子メカニズム
弱視の治療に向けた基礎研究
B ヒト弱視
心理物理(前原吾朗)
機能画像(三木淳司)
電気生理(網膜電図・視覚誘発電位)(米田 剛・三木淳司)
対光反射(三木淳司)
OCT(荒木俊介・三木淳司)
8 弱視の社会的影響 (荒木俊介・三木淳司)
弱視患者の意識調査
両眼性視覚障害のリスク
就労に視力の制限がある職業や資格
Chapter2 弱視の検査
1 医療面接 (荒木俊介・三木淳司)
医療面接とは
医療面接の流れ
2 屈折検査 (荒木俊介・三木淳司)
調節麻痺薬の種類と副作用
他覚的屈折検査
自覚的屈折検査
3 視力検査 (荒木俊介・三木淳司)
固視反応
嫌悪反射
縞視力測定法
ドットカード法(森実式ドットカード)
ランドルト環を用いた視力検査
4 固視検査 (荒木俊介・三木淳司)
両眼性固視検査
単眼性固視検査
5 4プリズム基底外方試験 (荒木俊介・三木淳司)
4プリズム基底外方試験
6 両眼視機能検査 (荒木俊介・三木淳司)
立体視検査
弱視と立体視
7 眼位検査 (荒木俊介・三木淳司)
眼位検査
8 眼底検査 (荒木俊介・三木淳司)
眼底検査
弱視の眼底所見
9 限界フリッカ値,色覚,視野 (荒木俊介・三木淳司)
限界フリッカ値
色覚
視野
Chapter3 弱視の治療
1 弱視の治療時期 (荒木俊介・三木淳司)
弱視の治療開始時期
何歳まで視力回復は可能か?
弱視や顕性斜視のない中等度遠視に対する治療介入時期
2 弱視の治療法
屈折矯正(荒木俊介・三木淳司)
健眼遮閉(荒木俊介・三木淳司)
健眼アトロピン点眼(荒木俊介・三木淳司)
眼間抑制の低減を目標とした新たな治療法(荒木俊介・三木淳司)
薬物治療(三木淳司)
反復経頭蓋磁気刺激法(米田 剛・三木淳司)
3 弱視の分類別治療法
偏心固視を伴う弱視(米田 剛・三木淳司)
形態覚遮断弱視(三木淳司)
斜視弱視(米田 剛・三木淳司)
不同視弱視(米田 剛・三木淳司)
屈折異常弱視(米田 剛・三木淳司)
4 治療中の近見作業 (米田 剛・三木淳司)
近見作業による視的学習
弱視訓練としての作業手法
5 弱視治療のEBM (米田 剛・三木淳司)
根拠に基づく医療(evidence based medicine)
PEDIGの弱視治療研究(ATS)
屈折矯正のEBM
完全遮閉(健眼遮閉)のEBM
不完全遮閉(Bangerter遮閉膜,健眼アトロピン点眼)のEBM
近見作業のEBM
年齢と治療成績の関連
弱視の予後と再発のリスク
PEDIGの結果と諸外国の治療方針
6 治癒基準と再発 (荒木俊介・三木淳司)
弱視の治癒基準
弱視の再発
7 健診による弱視の発見 (荒木俊介・三木淳司)
小児期の健康診査・健康診断に関する法令
健康診査における視覚異常の判定
健診による弱視の発見
Column
アメリカ留学と弱視の基礎研究(畠 義郎)
Robert F. Hess教授との弱視研究(前原吾朗)
弱視の眼鏡はいつまで装用すべきか(三木淳司)
弱視の健眼遮閉について(三木淳司)
弱視の治療は何歳までか(三木淳司)
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書籍情報
- ISBN:9784895906975
- ページ数:384頁
- 書籍発行日:2020年9月
- 電子版発売日:2020年10月16日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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