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立体模型でよくわかる 腋窩郭清ビジュアルテキスト 改訂2版

  • ページ数 : 152頁
  • 書籍発行日 : 2020年11月
  • 電子版発売日 : 2020年11月24日
5,060
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商品情報

内容

腋窩郭清マスターへの近道~パワーアップした待望の第2弾!

腋窩郭清は,乳癌治療において必要な術式である.しかし若手外科医においては,腋窩の術野を実際に見る機会が減少し,解剖や手術操作を習得することが困難になった.とりわけ,Level1の立体構築や郭清の手術操作の流れを明確にイメージすることは難しい.そのような現状を踏まえて,本書では,立体模型を使った著者のレクチャーを紙面上で再現,改訂2版では,新たな術野の転換方法などを追加し,さらにパワーアップした.

※改訂点について

 改訂2版における改訂点は以下のとおりです.

・エネルギーデバイスの使用について追記しました.2019年より当施設でも各種エネルギーデバイスの使用を開始しました.術中・術後出血は少なく,手術時間の短縮にも寄与し,肋間上腕神経や胸壁の肋間神経などの知覚神経を切離しても術後疼痛が認められないことを実感しております.径7mm 以下の血管や神経の切離に確かに有用と考えられますので,手術操作に追記しました.

・Loose connective tissueの日本語記載を,粗性結合組織から,疎性結合組織に改めました.

・LevelⅢ郭清についての記述には,NCCN(National Comprehensive Cancer Network)腫瘍学臨床診療ガイドライン 乳癌 2020年第5版(監訳:日本乳癌学会)を引用しました.

・腋窩郭清の最初に安全に容易に腋窩静脈を確認し,広々としたLevelⅡの術野を展開する方法に気づきましたので,LevelⅡ・LevelⅠをエネルギーデバイスを用いて郭清する操作とともに,増補1でご紹介します.

・増補2で,私が手術で実際に経験したことから,今後自分自身が腋窩郭清を行う際に意識していきたいと考えていることをご報告させていただきました.

・増補3で,術後経過の改善のために,当施設で行っている工夫について記載しました.

・付録では,初版出版以降に参考にさせていただいた文献を追記しました.

・初版での誤字・脱字を修正しました.



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序文

改訂2版に寄せて


初版の出版から5年が経過いたしました.

初版は,光栄なことに,多くの先生方からご好評をいただきました.また,2016年には日本外科学会雑誌で,LevelⅠの郭清については参照していただきたいと,取り上げていただきました.

そして,このたびは改訂2版を執筆する貴重な機会をいただきましたことについて,中外医学社の皆様に心より御礼申し上げます.この5年間,新たな術野の展開の方法の発見やエネルギーデバイスの使用などの新たな経験,閉創や術後管理の工夫などを重ねてまいりましたので,それらについても本書でご紹介させていただきます.

腋窩郭清(腋窩リンパ節郭清術)は,適応が限られながらも,現在もなお乳癌治療において必要な術式です.

不十分な郭清は腋窩再発を起こす可能性が高いこと,また,局所制御が生存率の向上につながることがデータの蓄積から明らかとなってきており,腋窩郭清は,リンパ節転移個数を確認する目的に加えて,局所制御・生存率向上に寄与する可能性がある術式でもあります.

ちなみに,2013年4月から2018年12月までに当施設で行った,初版および本書に記載している方法での腋窩郭清施行例(N=68)について検討したところ,郭清したリンパ節の個数は,術者が私のときは平均18.0±8.7個(N=51),専修医のときは18.6±8.3個(N=17)でした(有意差なし).腋窩再発例は1例(1.5%)(超高齢の女性で,術後化学療法・放射線治療を施行できなかった方)でした.術後患側上肢のリンパ浮腫を認めたのは1例(1.5%)で,術後化学療法後に発症されましたが,改善傾向です(詳細については,2019年の第27回日本乳癌学会学術総会で発表いたしました).これからもなるべく局所再発・リンパ浮腫その他の合併症が発生しない手術を目指して,今できる最善を尽くしながら,よりよい方法を追求していきたいと思っております.

これまでにお世話になりましたすべての皆様に心より御礼申し上げますとともに,本書がお読みくださる皆様のお役に立ち,腋窩郭清を受けられる患者さんのよりよい経過につながっていくことを祈念いたしております.


2020年9月20日

川崎市立川崎病院乳腺外科部長
萬谷京子




初版より
巻頭言


乳癌においては乳房周囲リンパ節(主として腋窩リンパ節)への転移が高頻度に認められます.

従来,乳癌は腋窩リンパ節を経由して段階的に進展していくという説が一般的でありましたが,昨今,この説は覆されました.しかし腋窩リンパ節転移は,手術後の治療方針決定の際,癌の進行度をあらわす為に重要な指針となります.さらに近年癌治療に対する低侵襲・個別化治療の概念が導入され,乳癌においても不必要な腋窩リンパ節郭清を省略する為のセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)生検が,普及してまいりました.

これは術前にラジオアイソトープや色素を乳癌周囲に局注し,ガンマーカウンターを用いて同定したり,あるいはフルオレッセンなどの蛍光色素を注入後,超赤外光線を照射しリンパ節を検索するなど,診断方法には素晴らしい進歩があり個別化治療が可能となりました.一方,実際の手術に於いては術中MRI装置などを活用する画像・情報誘導下手術が脳外科手術に用いられるなど,大掛かりな研究が国家予算で行われております.しかし日常の外科臨床に於いて,安価で汎用性の高い医療機器が臨床家に望まれている事実は否定出来ません.

私自身も医療現場と技術シーズの現場の乖離を解消すべく,両者の癒合を目的として13の学会と共に一般社団法人日本医工ものづくりコモンズを2009年11月に設立いたしました.時同じくして,「立体模型でよくわかる腋窩郭清ビジュアルテキスト」の著者,萬谷京子博士が手術書「乳癌手術ビジュアルテキスト」の解説書を出版いたしました.

著者が腋窩立体模型を作成し本書にまでたどりついたのは,日本乳癌学会専門医試験の面接で「若手外科医にどのように腋窩郭清を伝えたらよいと思いますか?」という質問を受けたのをきっかけにして,前著の解説書は術野の写真の羅列であり,何かもの足りなさを感じた,ということから始まりました.さらに 2013年にFACS(Fellow of American College of Surgeons)となり,その理念“high qualityの医療の標準化と若手外科医への伝承と育成”を常に心に刻んでいたことが後押ししたからであります.

そこで解説書のqualityを上げる為に努力したのが,腋窩立体模型と解説書の一体化でありました.正しく,画像・情報下腋窩郭清手術の実現であると同時に,近年,国主導により導入がはじまるスタンフォード大学におけるbiodesign fellowshipプログラム,すなわち,臨床現場に即した課題解決型ものづくりへの実践を,著者が実行することになったわけであります.著者より相談を受けたので,以前より親交があった医工連携のオピニオンリーダー,九州大学,大平猛教授に相談を依頼したところ,立体模型の完成に至ったわけであります.

今回出版された本書の特徴としては,著者自身が長年の臨床の現場で乳腺外科専門医の立場で抱いた20の疑問をoperative questionとして模型・術中写真を活用され,解剖と手術操作を明確に解巻頭言説している点であります.LevelⅠの郭清法はもとより,血管・神経の見つけ方,温存法あるいは肥満患者の操作のコツにまで言及されており,経験の少ない外科医にとっては安全な手術の必携の書といっても過言ではありません.さらに著者の経験から,剝離操作を内側から外側,またその逆からの操作について,模型を活用しながら懇切丁寧に説明している点など,現存の教科書にはない特徴であり,乳癌手術のバイブルとして活用いただければ望外の喜びであります.


2015年5月

国際医療福祉大学学長
慶應義塾大学名誉教授
北島政樹

目次

1章 左腋窩立体模型で見る腋窩LevelⅠの解剖

2章 Operative questions

1.LevelⅠの郭清ではどの範囲の脂肪を切除するのか?

2.LevelⅠの郭清で温存する構造物は何か?

3.LevelⅠの郭清で結紮・切離してよい血管・神経はどれか?

4.Axillaryfatpad の周囲で,結紮・切離すべき血管がほとんど存在しない領域はあるか?

5.腋窩静脈を見つけるコツは?

6.胸背動・静脈・神経を見つけるコツは?

7.胸背動・静脈・神経を温存するコツは?

8.長胸神経を見つけるコツは?

9.長胸神経を温存するコツは?

10.広背筋を見つけるコツは?

11.郭清すべき脂肪組織の肉眼的特徴は?

12.腋窩LevelⅠ全体の立体構築を理解しやすくする方法は?

13.重要構造物の立体的な位置関係は?

14.重要構造物を速やかに確認するコツは?

15.どんな操作をするのか?

16.どんなバリエーションがあるか? どう対応するのか?

17.著しい肥満患者の場合の手術操作のコツは?

18.腋窩郭清のときの体位は?

19.Bp+Ax のときの皮膚切開は?

20.ドレーン留置はどのようにするか?

3章 2通りの腋窩郭清について

共通の手術操作

肩甲下筋膜前面の剝離を外側から内側に向かって行う方法【サマリー】

肩甲下筋膜前面の剝離を内頭側から外尾側に向かって行う方法【サマリー】

肩甲下筋膜前面の剝離を外側から内側に向かって行う方法【詳述】

肩甲下筋膜前面の剝離を内頭側から外尾側に向かって行う方法【詳述】

手術操作の流れ(右腋窩の場合)

術中写真で見る腋窩の解剖

4章 腋窩リンパ節生検について

増補1 郭清の最初に容易に腋窩静脈を見つけられて広々とした術野でLevelⅡの郭清を行える方法

増補2 実際に手術で経験したことからのご報告

増補3 当施設での工夫

付録

参考図書・文献

腋窩LevelⅠ立体模型を使用される方へ

さくいん

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書籍情報

  • ISBN:9784498022591
  • ページ数:152頁
  • 書籍発行日:2020年11月
  • 電子版発売日:2020年11月24日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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