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- EBM血液疾患の治療2021-2022
商品情報
内容
血液疾患の諸問題にどう対応し,解決するか,最新のエビデンスをもとに解説したレファランス.治療に必須の知見を,「序論,指針,エビデンス,根拠となった臨床研究の問題点と限界,患者に適応する際の注意点,コメント,文献」の順に紹介し,現時点における最新の治療法や考え方だけでなく,現場で判断に迷うような事柄・問題点に指針を与える.急速に進歩する血液学領域の知識をcatch-upできる,臨床医必携の書だ.
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序文
監修の序
「EBM血液疾患の治療」は,血液疾患の日常診療で遭遇するさまざまな疑問に対し,最新のエビデンスをもって答える書として,長年多くの読者に愛読されてきた.
EBM(evidence‒based medicine)とは,臨床医が自己の経験や直感のみに頼らず,科学的に実証された根拠(evidence)に基づいて,最適な治療法を選択,実践するための方法である.EBMは,日本語では「根拠に基づく医療」と訳されているが,ここで言うevidenceとは,「理論的に確実である」ということを指すのではなく,「臨床試験や治験などの医療行為の実践のなかで確実とされたこと」を意味している.つまり,EBMでは,当該疾患の治療に関する利用可能な信頼のおける最新情報( 医学論文)を,迅速かつ最大限に活かし,医療の現場で実践することが重要となる.しかし,進歩の著しく速い血液疾患領域において,治療に関する膨大な数の医学論文を,日常業務に多忙な臨床医がすべて把握し,医療実践への適否を正確に判断することは困難である.
本書は,治療に必須の知見を,「序論,指針,エビデンス,根拠となった臨床研究の問題点と限界,本邦で患者に適応する際の注意点,コメント」の順に紹介する構成であるが,他の書籍とは異なりエビデンスの基になる医学論文が主役となっている.重要なエビデンスとなる論文が何時出版されたかが一目瞭然で,主題として設定した疑問に対する答えを時系列に把握することが可能になっている.さらに,本書は,治療に関するEBMを取り扱った書籍であるが,将来的に治療に密接にも関わってくる問題,たとえば,近年のゲノム解析の急速な進展に伴う新しい病態解析や診断法の進歩についても取り上げている.
「EBM血液疾患の治療」は,従来,4名の編集体制として,急速な医療の進歩に対応すべく,2年毎に改訂を加えてきた.今回より,大森司自治医科大学教授,山﨑宏人金沢大学准教授の2名の新たな編集者が加わり,2021年~2022年版は,監修者1名,編集者5名の体制となった.専門性の高い,しかも,より広い視点で血液学領域全体を見渡せる強力な布陣となった.
本書が血液学専門医の日々の診療に役立つと共に,他領域の医師,研修医,看護師,臨床検査技師などの方にも有益かつ楽しい書となることを祈念している.最後に,誠にご多忙な折に執筆をお引き受け頂いた先生方にこの場を借りて深謝する次第である.
2020年11月
金倉 譲
序
「EBM血液疾患の治療 2021‒2022年版」をこの度上梓した.血液疾患領域では,ゲノム解析研究の進歩による分子病態解明が急速に進展している.特に,血液疾患の中心となる造血器腫瘍の領域では,ゲノム情報に基づいたがん治療が今後の中心的医療になっていくと思われる.がんゲノム医療は,「診断」,「予後予測」,「治療」の3つの要素からなり,がんの病態形成の中心となる遺伝子異常の同定,その臨床的意義,さらに遺伝子異常に基づく適切な治療法を判断し実践することにある.造血器腫瘍の分野ではがんゲノム医療が他の固形がんに比べ遅れてはいるものの,日本血液学会では,現時点での遺伝子異常に基づくエビデンスを「診断」,「予後予測」,「治療」の観点からまとめた「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」を発刊している.2021‒2022年版では,このようながんゲノム医療の進歩を念頭に,巻頭には骨髄系腫瘍およびリンパ系腫瘍に対するクリニカルシーケンスについてエキスパートに執筆いただいた.
さらに,血液領域の専門性や日常診療の進歩を考慮し,今回から新たにお二人の専門家に編集者として加わっていただき,各領域の専門性をより高めたことも今回の改訂の特徴である.「赤血球系疾患,白血病,リンパ系腫瘍,多発性骨髄腫と関連疾患,出血・血栓性疾患,支持療法・輸血,造血幹細胞移植,血液疾患に対する遺伝子治療・細胞治療」の各分野の主に治療法の進歩を反映した最新のエビデンスを基に,わが国における保険診療の実態も加味し,日常診療に役に立つ実践的な書籍であることが,本書の発刊以来の基本である.各領域の専門家により執筆された本書を俯瞰してみると,この姿勢については,2021‒2022年版においてもしっかりと引き継がれていると感じている.
急速に進歩する血液疾患の診療を担当する我々は,進歩に遅れないように日々勉強する姿勢が求められている.しかしながら,第一線の医師は同時に多くの業務を抱えていることも事実であり,このような多忙な毎日の中で,我々は最新の情報をcatch‒upし,エビデンスに基づいた最良の医療を患者に提供する責務がある.こうした忙しい臨床医のための力強い味方が本書である.
血液疾患の診療はチーム医療が基本である.本書が,医師のみならずチーム医療を担うすべての医療スタッフに役に立つ書籍となり,全国の施設で日々進歩する血液疾患診療の一助になることを祈念する.最後に,忙しい中に本書を執筆いただいた先生方に心より感謝したい.
2020年11月
編者
目次
Ⅰ.造血器腫瘍のクリニカルシーケンス
1 .骨髄系腫瘍に対するクリニカルシーケンス 〈石川裕一 清井 仁〉
2 .リンパ系腫瘍に対するクリニカルシーケンス 〈湯淺光博 片岡圭亮〉
Ⅱ.赤血球系疾患
1 .再生不良性貧血(AA)の分子病態研究の進歩 〈細川晃平 中尾眞二〉
2 .未治療再生不良性貧血に対する免疫抑制療法 〈臼杵憲祐〉
3 .再発・難治再生不良性貧血に対するTPO 受容体作動薬 〈小原 直〉
4 .再生不良性貧血(AA)に対する移植前処置 〈賀古真一〉
5 .先天性骨髄不全症に対する造血幹細胞移植 〈濱 麻人〉
6 .骨髄異形成症候群(MDS)に対する薬物療法 〈市川 幹〉
7 .骨髄異形成症候群(MDS)に対する同種造血幹細胞移植 〈石山 謙〉
8 .骨髄異形成症候群(MDS)に対する開発中の新規治療薬 〈波多智子〉
9 .赤芽球癆(PRCA)の治療 〈藤島直仁 廣川 誠〉
10.難治性自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療 〈和田秀穂〉
11.寒冷凝集素症(CAD)に対する治療と開発中の新規治療薬 〈亀﨑豊実〉
12.発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に対する治療 〈西村純一〉
Ⅲ.白血病
A .急性骨髄性白血病(AML)
1 .AML の分子病態と予後解析研究の進展 〈山口博樹〉
2 .家族性白血病の病態 〈牧島秀樹〉
3 .初発AMLの治療 〈山内高弘〉
4 .高齢者AMLの治療 〈伊藤良和〉
5 .小児AML の治療 〈水野貴基 加藤元博〉
6 .再発・難治AMLの治療 〈半下石 明〉
7 .第1寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植 〈前田嘉信〉
8 .AMLに対する新規治療薬開発の現状 〈福原 傑〉
B .急性前骨髄球性白血病(APL)
1 .初発APLの寛解導入療法 〈横山泰久〉
2 .再発APLの治療 〈入山智沙子 冨田章裕〉
C .急性リンパ性白血病(ALL)
1 .成人Ph陽性ALLの治療 〈土橋史明〉
2 .成人Ph陰性ALLの治療 〈藤澤 信〉
3 .再発・難治ALLの治療 〈吉本五一〉
4 .AYA世代ALLの治療 〈康 勝好〉
5 .高齢者ALLの治療 〈長藤宏司〉
D .慢性骨髄性白血病(CML)
1 .初発CP—CMLの治療 〈渡邊直紀 髙久智生〉
2 .進行期CMLの治療 〈高橋 聡〉
3 .TKI長期投与による有害事象とその対策 〈小野孝明〉
4 .CMLの治療目標とTKI投与中止 〈髙橋直人〉
E .骨髄増殖性腫瘍(MPN)
1 .骨髄増殖性腫瘍(MPN)における分子病態研究の進歩 〈荒木真理人〉
2 .真性多血症(PV)の治療 〈竹中克斗〉
3 .本態性血小板増加症(ET)の治療 〈杉本由香〉
4 .原発性骨髄線維症(PMF)の治療 〈上運天綾子 下田和哉〉
5 .好酸球増加症候群(HES)の治療 〈田中宏和 松村 到〉
6 .慢性好中球性白血病(CNL)の病態と診断・治療 〈髙橋康之 木崎昌弘〉
Ⅳ.リンパ系腫瘍
A .慢性リンパ性白血病(CLL)
1 .初発CLLの治療 〈太田秀一〉
2 .治療抵抗性CLLの治療 〈鈴宮淳司〉
3 .CLLにおけるMRD検出方法と意義 〈青木定夫〉
B .Indolent B細胞リンパ腫
1 .進行期低腫瘍量濾胞性リンパ腫(FL)の治療方針 〈福原規子〉
2 .進行期高腫瘍量濾胞性リンパ腫(FL)の治療方針 〈棟方 理〉
3 .再発・再燃濾胞性リンパ腫(FL)の治療方針 〈石澤賢一〉
4 .辺縁帯リンパ腫(MZL)・リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)の治療方針 〈鈴木康裕 永井宏和〉
C .マントル細胞リンパ腫(MCL)
1 .若年者マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療方針 〈山本一仁〉
2 .高齢者マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療指針 〈三宅隆明 伊藤俊輔 若山聡雄〉
D .Aggressive B細胞リンパ腫
1 .限局期びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療方針 〈近藤英生〉
2 .若年進行期びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)の初回治療方針 〈宮﨑香奈〉
3 .高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針 〈吉田 功〉
4 .再発・再燃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針 〈瀧澤 淳〉
5 .血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)の治療方針 〈島田和之〉
E .T/NK細胞リンパ腫
1 .CD30陽性T細胞リンパ腫(PTCL)の初回治療方針 〈鈴木律朗〉
[トピックス①]CD30 陽性の判定方法 〈鈴木律朗〉
2 .CD30陰性T細胞リンパ腫(PTCL)の初回治療方針 〈福島卓也〉
3 .節外性NK╱T細胞リンパ腫(ENKL)の治療方針 〈山口素子〉
4 .T╱NK細胞リンパ腫(PTCL・ENKL)に対する免疫チェックポイント阻害薬 〈加藤光次 宮脇恒太 杉尾健志〉
F .成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)
1 .成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の治療方針 〈進藤岳郎 髙折晃史〉
2 .成人T細胞白血病(ATL)に対する造血幹細胞移植 〈菱澤方勝〉
G .ホジキンリンパ腫
1 .限局期ホジキンリンパ腫(HL)の治療方針 〈楠本 茂〉
2 .進行期ホジキンリンパ腫(HL)の治療方針 〈丸山 大〉
3 .再発・治療抵抗性ホジキンリンパ腫(HL)の治療方針 〈蒔田真一〉
Ⅴ.多発性骨髄腫と関連疾患
1 .多発性骨髄腫(MM)の分子病態研究の進歩 〈古川雄祐 菊池次郎〉
2 .くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)の治療 〈海渡裕太 田村秀人〉
3 .移植適応初発多発性骨髄腫(MM)の治療 〈石田禎夫〉
4 .移植非適応初発多発性骨髄腫(MM)の治療 〈鈴木智貴 飯田真介〉
5 .再発・難治性多発性骨髄腫(MM)の治療 〈多林孝之〉
6 .多発性骨髄腫(MM)に対する維持療法の意義 〈柴山浩彦〉
7 .多発性骨髄腫(MM)に対する同種移植の現状 〈竹田勇輔 堺田惠美子〉
8 .多発性骨髄腫(MM)の合併症に対する治療 〈角南一貴〉
9 .形質細胞性白血病(PCL)の治療 〈高野 幹 伊藤薫樹〉
10.原発性マクログロブリン血症(WM)の治療 〈櫻井政寿〉
11.原発性アミロイドーシスの治療 〈上田真寿〉
12.キャッスルマン症候群(CD)の治療 〈渡部玲子 大和田千桂子 中世古知昭〉
13.POEMS症候群の治療 〈中世古知昭 大和田千桂子 堺田恵美子〉
14.TAFRO症候群の診断と治療 〈川端 浩 藤本信乃 正木康史〉
Ⅵ.出血・血栓性疾患
1 .特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する最新の治療戦略 〈柏木浩和〉
2 .血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)治療の最前線 〈久保政之 松本雅則〉
3 .血友病診療の新たな展開 〈野上恵嗣〉
[トピックス②]血友病保因者の健康管理 〈西田恭治〉
4 .後天性凝固インヒビターに対する診断・治療の最前線 〈酒井道生〉
5 .抗リン脂質抗体症候群(APS)の治療ストラテジー 〈藤枝雄一郎 渥美達也〉
6 .遺伝性血栓性素因の診断と管理 〈森下英理子〉
Ⅶ.支持療法・輸血
1 .鉄過剰症の治療指針 〈沼田晃彦〉
2 .遷延する発熱性好中球減少症(FN)への対応 〈木村俊一〉
3 .クロストリディオイデス・ディフィシル感染症(CDI)の予防と治療 〈冲中敬二〉
4 .ムーコル感染症の診断と治療 〈康 秀男〉
5 .同種移植後インフルエンザウイルス感染症 〈原田介斗〉
6 .造血器腫瘍患者の妊孕性温存対策 〈蘆澤正弘 神田善伸〉
Ⅷ.造血幹細胞移植
1 .ATGによるGVHD予防の長期予後への影響 〈白鳥聡一〉
2 .新しいGVHD治療薬の開発 〈近藤忠一〉
3 .機械学習によるGVHD発症予測 〈新井康之〉
4 .NIH 基準による慢性GVHDの診断の妥当性 〈大和田千桂子 渡部玲子 中世古知昭〉
5 .非血縁者間移植におけるHLA不適合の影響 〈森島聡子〉
6 .Ph 陽性白血病に対する同種造血幹細胞移植前後のTKI の投与 〈鬼塚真仁〉
7 .同種造血幹細胞移植後の骨塩量の変化 〈石井敬人〉
8 .臍帯血移植での全身放射線照射(TBI)の役割 〈山本久史〉
9 .前処置薬の血中濃度測定の意義 〈松元加奈〉
10. 腫瘍由来循環DNA による同種造血幹細胞移植後微小残存病変の評価 〈横山和明〉
11.移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)の特徴と治療方針 〈藤本亜弓〉
Ⅸ.血液疾患に対する遺伝子治療・細胞治療
[トピックス③]難治性血液疾患に対するCAR—T 療法 〈大嶺 謙〉
[トピックス④]造血幹細胞を用いた遺伝子細胞治療 〈小野寺雅史〉
[トピックス⑤]血友病に対する遺伝子治療 〈大森 司〉
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書籍情報
- ISBN:9784498225244
- ページ数:653頁
- 書籍発行日:2020年12月
- 電子版発売日:2020年12月18日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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