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医学のあゆみ266巻13号 心不全のすべて~分子生物学から緩和ケアまで:beyond ガイドライン

  • ページ数 : 302頁
  • 書籍発行日 : 2018年9月
  • 電子版発売日 : 2021年2月10日
6,490
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商品情報

内容

心不全のすべて──分子生物学から緩和ケアまで:beyond ガイドライン
(企画:小室一成/東京大学大学院医学系研究科循環器内科学)

 心不全は生活習慣の改善にはじまる予防が有効であることから,国民への啓発がきわめて重要である.心不全を含め循環器疾患に関しては全国レベルのデータベースがなく,心不全の患者数,ガイドラインの遵守率などがまったく不明である.心不全の予後が不良なのは治療が対症療法にすぎないからであり,心不全発症の原因を明らかにし,原因に基づいた治療法を確立するためには,基礎研究の活性化が必要である.本特集では,最前線の基礎研究から疫学,ガイドライン,診療体制,人材育成,新しい診断法・治療法,予防から終末期医療と緩和ケアまで網羅し,第一人者の先生方に概説いただく.

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序文

はじめに

“医者とは彼自身ほとんど理解していない薬を,さらに理解していない病を治すために,まったく理解していない人体に投与するものである” ヴォルテール

わが国における心不全患者数は現在約100万人であり,すでに総人口が減少しているにもかかわらず,すくなくとも2035年までは増え続け,132万人になると推定されている.心不全患者急増の第一の原因は高齢化であり,団塊の世代が全員75歳以上となる2025年を見据えて心不全の予防や新しい診療体制,治療法の確立が急務である.

一昨年(2016)日本循環器学会は,脳卒中学会をはじめ多くの関連学会と協力して「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」を策定した.重要3疾患として脳卒中,血管病と並んで心不全をあげ,目標達成のために5つの戦略-診療体制の整備,人材育成,国民の啓発・予防,登録事業の推進,研究の強化-を立てた.今までの循環器疾患の診療体制は急性心筋梗塞のための救急医療中心であったが,今後は心不全を念頭に,急性期から回復期,慢性期までシームレスに診療する体制の整備とそのための人材育成が必要である.心不全は生活習慣の改善にはじまる予防が有効であることから国民への啓発がきわめて重要である.心不全を含め循環器疾患に関しては全国レベルのデータベースがなく,心不全の患者数,ガイドラインの遵守率などがまったく不明である.心不全の予後が不良なのは治療が対症療法にすぎないからである.心不全発症の原因を明らかにし,原因に基づいた治療法を確立するためには基礎研究の活性化が必要である.

本特集では,最前線の基礎研究から疫学,ガイドライン,診療体制,人材育成,新しい診断法・治療法,予防から終末期医療と緩和ケアまで,心不全に関するほとんどすべての重要なトピックについて,わが国の第一人者に執筆いただいた.本誌が明日からの診療の役に立ち,未来への扉を開くヒントになることを期待したい.


小 室 一 成
Issei KOMURO
東京大学大学院医学系研究科循環器内科学

目次

基礎研究は心不全をどこまで解明したか?──心不全を理解するために必要な最新の基礎知識

シングルセルトランスクリプトーム解析──心肥大から心不全発症の分子機序に関するあらたな解析……野村征太郎

次世代シークエンス解析は心筋症の遺伝子解析を変えたか──次世代遺伝子解析による心筋症の理解とprecision medicine……森田啓行

microRNA・long non-coding RNAとは何か──新しい世界からみた心不全……尾野亘

収縮と拡張の分子生理学──心筋の構造から心機能を考察する……沼田玄理・瀧本英樹

カルシウムハンドリング──カルシウムシグナル異常はどこまで解明されたか……小田哲郎・矢野雅文

メタボローム解析でどこまでわかるか──栄養・代謝異常は心不全の原因か……佐野元昭

多臓器連関──心臓と多くの臓器・組織は連関している……梅井正彦・赤澤宏

心不全における慢性炎症の役割と機序――なぜ心臓に慢性炎症が起こり,心不全になるのか……彦惣俊吾

オートファジーと心臓の恒常性──オートファジーは心不全の原因か?……山口修

小胞体ストレスとは何か──小胞体ストレスと心不全発症……富海英・南野哲男

心不全パンデミックとは何か──心不全の現状を知り将来を考える

日本と世界の心不全の疫学――心不全の現在と未来を識る……眞茅みゆき

急性・慢性心不全診療ガイドライン――2017年改訂版のポイント……筒井裕之

超高齢社会における心不全診療提供体制の展望……磯部光章

心不全チーム医療に必要な人材・システムとは……佐藤幸人

行政が考える心不全診療のあり方──人事交流医系技官の立場から……岡田佳築

心不全の新しい診断法──心不全の最新の診断法を真に理解し利用する

バイオマーカーをどう利活用するか?──BNP, NT-proBNPを中心に……斎藤能彦

心エコーによる拡張機能評価──拡張機能をどのように評価するか,またその意義は?……中谷敏

CTおよびMRIによる心不全の評価……後藤義崇・北川覚也

心臓核医学による心不全診断──核医学により何を診断できるのか……田原宣広

血行動態を知る重要性──右心カテーテル検査結果から何を考えるか……波多野将

心筋生検の有用性──病理診断を治療と予後評価にどのように活かすか……池田善彦

心不全の新しい治療法──心不全の最新・最適治療を識る

急性心不全・急性増悪マネジメント──薬物療法から補助循環までロジカルな治療法の選択……佐藤直樹

現在の最適薬物治療――ACEI/ARB, β遮断薬, ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬,利尿薬をどう使い分けるか……森澤大祐・他

難治性心不全の治療戦略──強心薬・補助循環の使用法をマスターする……宮脇大・坂田泰史

未来の薬物療法……猪又孝元

心不全における非薬物療法──CRT,ICD,WCDの最適な使用方法……絈野健一・夛田浩

補助人工心臓の使い方──どのタイミングでどのデバイスを使用するのか?……小野稔

新しいデバイスによる心不全治療……中村研介・山本一博

心臓移植の成績と課題──世界的に最も良い予後と少ないドナーというわが国の課題……澤芳樹

さまざまな心不全──原因別に心不全を診て考える

二次性心筋症の鑑別と治療──いかに高率に二次性心筋症を見分け治療するか……小林淳・竹石恭知

右心機能障害の診断法と治療法──心筋症,VAD植込み後の右心不全の問題……絹川弘一郎

成人先天性心疾患の諸問題――心不全の臨床的特徴と移行医療……三谷義英

超高齢者の心不全──超高齢者ならではの特殊性……日高貴之・木原康樹

心不全患者における不整脈──心房細動と心室性不整脈……中島健三郎

心不全治療としてのstructure heart disease intervention……金子英弘

注目されているonco-cardiology――抗がん剤による心筋障害とがん患者・サバイバーの心不全管理……藤田雅史・塩山渉

睡眠時無呼吸への介入は有効か──呼吸補助療法の適応……百村伸一

周産期心筋症と心疾患合併妊娠──周産期心筋症の治療と心疾患合併妊娠の注意点……神谷千津子

望まれる心不全診療──これからの心不全診療に求められるもの

あらたな心不全予防戦略──心不全の一次予防と二次予防……田中敦史・野出孝一

心不全治療としての運動療法の有用性……網谷英介

心不全患者を地域,自宅でどのように診ていくか……小出雅雄・弓野大

終末期医療と緩和ケア──心不全患者に対する緩和ケアの現状と課題……安斉俊久

心不全と遠隔医療支援システム──OpiVol Fluid Index®,CardioMEMSTMなどの在宅診療を補助するモニタリング……木田圭亮

心不全のトピックス

第3の心不全:HFmrEF──疾患概念とその治療法……江尻健太郎・伊藤浩

心不全におけるカヘキシアとサルコペニアの重要性──体組成に着目する……石田純一

ビッグデータ解析の活用と展望──ビッグデータから何がわかるか……福田弘毅・北風政史

iPS細胞の心不全への応用──iPS細胞を心不全の診断、治療にどのように活かすか……湯浅慎介・福田恵一

重症心不全に対する細胞シートを用いた心筋再生治療……宮川繁

心筋細胞分裂による心筋再生……原弘典・武田憲文

心筋細胞分化誘導における心臓再生――ダイレクトリプログラミングによる心筋細胞分化誘導……貞廣威太郎・家田真樹

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書籍情報

  • ISBN:9784006026613
  • ページ数:302頁
  • 書籍発行日:2018年9月
  • 電子版発売日:2021年2月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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