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- 臨床診断力で差をつける!循環器医のための実践臨床循環生理学~心機能・心エコーを診断に有効活用するために
商品情報
内容
心機能や心不全に関心のある先生方に日常診療で理解しておくべき循環生理の知識を整理し,臨床で活用するためのポイントを解説。視覚的に理解しやすい紙面構成を重視し,グラフなど図版をふんだんに用い,また要所要所でポイント囲み記事として解説。
本書を読み解けば,今までと患者の見方,心エコー図の読み方などがガラリと変わるかもしれない。
ワンステップ上を目指す臨床医必読の一冊。
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序文
序文
医学部卒業後約40年が経過し,令和3年には定年を迎えることになりました。この機会に自分の学んできた,また研究してきた心臓力学・循環生理学に関することを整理して書籍にすれば,同じ領域に興味を持っておられる方,特に心機能や心不全に関心のある臨床家の方々のお役に立つこともあるかもしれないと思い,現役最終年度にこの本の執筆に取り組みました。もとより心臓力学・循環生理学は理解が難しい分野であり,私もその一端が分かるようになったのは,まだ最近のことです。それゆえ,本書をご一読いただくと,私も先生方と同じようにこの領域での仕事に苦戦してきたことが分かっていただけるのではないかと思います。
さて,私がこの領域において末席であったとしても何とか研究者の一人としてやってこられたのは,すべて優れた先達(研究者)との出会いによるものです。遅ればせながら39歳の時に米国ノースカロライナ州Wake Forest大学Cardiologyの主任教授で米国における心機能研究の第一人者であった故William C. Little教授の元に留学の機会を得ました。当地で慢性覚醒犬に対する生理学的また薬理学的インターベンションを行ったときの左室の応答をリアルタイムに描く左室pressure-volume loopを毎日のように観察してきたことが,私に心臓力学・循環生理学を理解する基礎を築いてくれました。また,彼は米国におけるHFpEF臨床研究の第一人者としてよく知られた存在であり,私にHFpEFという概念の捉え方を教えてくれました。以来私もHFpEFの研究を続けておりますが,彼との出会いがなければ,私が心不全研究者として認識されることはなかったと思います。彼が私に伝えた金言です。
① Cardiac mechanics are classic but are still important for cardiologists.
② The important thing is not where we came from but where we are going to.
留学から帰ったきた後にも素晴らしい出会いがありました。当時東京女子医科大学基礎循環器科教授であられた菅原基晃先生との出会いです。今回の執筆につきましても,私が理解できていないところを懇切丁寧に教えていただき,いくつかの図もご提供いただいております。私が米国留学前からずっと考えていた左室弛緩におけるelastic recoil依存性過程と筋小胞体Ca2+-ATPase依存性過程の分離(本文参照)に対しての決定的な解答をご教示いただきました。以後も心臓力学・循環生理学の師匠としてご指導いただいております。この場を借りて深く感謝申し上げます。
読者の皆様には,classicな話題ではありますが,是非心臓力学・循環生理学に興味をお持ちください。そうすると患者さんの見方,心エコー図の読み方が変わるかもしれません。そのために本書が多少なりともお役に立てれば望外の幸いです。
最後に,勉強を怠らず,そして何か真実を追い求めているところに,その解決をもたらす先達との出会いが向うからやって来ます。私はそう信じています。
令和2年12月吉日
名古屋市立大学大学院医学研究科循環器内科学教授
大手信之
目次
第Ⅰ章 左室収縮能
左室の役割
SVの規定因子
心筋固有の(前負荷・後負荷に独立した)収縮能とは?
遊離心筋において収縮能,前負荷,後負荷の関係から心筋収縮の基本を理解する
In situの左室において,可変弾性モデルで左室の挙動を考える
成犬においてPV loopを描く
左室前負荷の指標とは?
左室後負荷の指標とは?
左室後負荷をさらに理解するために:Hagen‒Poiseuilleの法則と電気回路におけるオームの法則
心機能曲線とは?
収縮能と心機能曲線
後負荷と心機能曲線
後負荷とSVの関係
Guytonの理論から心不全の病態を考える
Guytonの理論の前提は静脈還流量=心拍出量
臨床的な視点からGuytonの理論を検証してみる
左室容積-圧平面における前負荷,収縮能,後負荷と SVの関係
前負荷とSVの関係
収縮能,後負荷とSVの関係
正常の収縮能を有する左室と収縮能の低下した左室の前負荷増加に対するSVの応答性(心機能曲線を左室PV loopで考える)
正常の収縮能を有する左室と収縮能の低下した左室の後負荷軽減に対するSVの応答性
左室容積-圧平面における可変弾性モデルで左室の挙動を考える
臨床的な左室収縮能の指標:LVEF
LVEFを掘り下げる
後負荷不適合をまとめる
左室の構造と機能-どのようにSVは生み出されるか?
左室長軸方向ストレインと左室収縮能
Global longitudinal strain(GLS)の背景
ストレインとLVEFの関係を精密に検討する
ストレイン心エコー図法による局所壁運動の評価
左室のエナジェティックス(エネルギー論)
収縮不全心における左室エナジェティックス
左室-動脈カップリングとは?
心拍数の左室PV loopに与える影響,force-frequency relationと左室-動脈カップリング・機械効率
収縮末期左室壁応力
【Appendix】
右室-肺動脈カップリング
TAPSE/PASPと右室後負荷の関係
第Ⅱ章 左室拡張能
収縮と弛緩の連関
左室弛緩の遅延
急速流入血流左室内伝搬速度Vpとelastic recoilの関係
左室弛緩の評価法
左室弛緩能の規定因子
左室弛緩時定数の求め方
後負荷と左室弛緩
左室のsuctionを可視化する
等容弛緩期心尖部方向血流
等容弛緩期に心尖部方向血流が観察される理由
等容弛緩期心尖部方向血流の速度と心機能の関係
Vector Flow Mapping(VFM) による左室内相対圧較差の表示,suctionの定量化
僧帽弁口血流速波形の意義
左室suctionの拡張期僧帽弁口血流速波形への反映
収縮性心不全(Heart Failure with reduced Ejection Fraction:HFrEF)にみられる僧帽弁口血流速波形の拡張障害パターン
拡張性心不全(Heart Failure with preserved Ejection Fraction: HFpEF)が示す僧帽弁口血流速波形の拡張障害パターン
僧帽弁口血流速波形の弛緩障害パターン(Grade I拡張不全)
左室弛緩能を組織ドプラ法で評価する
e’に与える前負荷の影響
左室拡張能は収縮能と異なり加齢の影響を強く受ける
E/e’の有用性と限界
E/e’を左房圧評価に使用してはいけない症例群
American Society of Echocardiography/European Association of Cardiovascular Imaging (ASE/EACVI)のガイドライン2016による左室拡張能の評価
LVEFが正常の対象で左室拡張障害を診断する
左室流入圧の評価
左室拡張能と運動耐容能̶運動負荷時の左室PV loopの変位
運動耐容能を左室急速流入血流からみる
心拍数と左室弛緩 :relaxation-frequency relation
第Ⅲ章 左房機能
左房機能を肺静脈血流速波形から考える
左房機能を左房ストレインで考える
左房機能と左室拡張能
左房機能と心不全
左房機能の拡張期僧帽弁輪動態への影響-左房機能は左室収縮能と関係する
第Ⅳ章 心不全を考える
循環動態の視点による心不全の定義
HFpEF
HFpEFのいままで
HFpEF最近の知見
HFpEFの心臓力学:40%≦LVEF<58%の心不全を考え直す
LVEFによる患者層別化の意義
PV loopを用いた筆者の見解
LVEF≧58%を呈するHFpEFの病態
左室-動脈のカップリングからHFpEFを考える
薬剤による心不全の発症,再発予防
左室エナジェティックスからHFpEFを考える
脈波の理論から考える孤立性収縮期高血圧と左室後負荷
NT-proBNP,BNPで拡張障害を診断する
左脚ブロック最近の知見
Low-fl ow Low-gradient(LFLG) severe ASの病態を心臓力学的に考察する
第Ⅴ章 総括
文献
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書籍情報
- ISBN:9784758319720
- ページ数:172頁
- 書籍発行日:2021年2月
- 電子版発売日:2021年3月26日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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