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- 神経麻酔最前線―すべては患者の機能維持・向上のために―
商品情報
内容
研究・臨床の質が上がる麻酔科医の必読書
ファジーに表現されていた“神経麻酔”を『脳機能予後を下げないエビデンスを集約した麻酔または関連手技』と再定義して基礎領域・臨床分野の双方から解説! 各種薬剤を駆使して周術期管理を行う際や,てんかん・幼弱脳・サルコペニア/フレイルとの関係,注目の腸内細菌叢と脳機能の関係,脊髄保護戦略と脳低体温療法まで,何をどのように使うべきか深く理解できるワンランク上の解説書で研究・臨床の質をグレードアップ!
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序文
巻頭言
われわれ麻酔科医は,外科医に適正な手術環境を提供するため,鎮静・鎮痛・不動化を目的に各種薬剤を駆使して周術期管理を行っている.全身麻酔薬の多くは脳や脊髄の機能を抑制し,その作用を発揮するわけであるが,例えば麻薬性鎮痛薬が脊髄虚血に悪影響を与えたり,あるいは吸入麻酔薬が幼弱脳に影響を与えることが指摘・懸念されている.さらに,重症患者では脳内炎症が示唆され,大動脈瘤の手術では脊髄保護戦略を駆使し,さらに機能温存のための種々モニターに耐えうる麻酔法の工夫や覚醒下手術に適した麻酔環境の提供など,周術期にかかわるわれわれ麻酔科医の役割ならびに対応は日々刻々と重要性が増し,また複雑化している.
今回,日本神経麻酔集中治療学会ならびにAwake Surgery学会を主催するにあたり,この分野でご活躍のエキスパートにお願いし,神経麻酔にまつわる最前線の話題を提供してもらい,現時点での最良の麻酔環境の考察を試みた.まず,われわれ麻酔科医が頻用する吸入麻酔薬ならびに静脈麻酔薬に加え,水素・キセノンにまつわる話題,さらにデクスメデトミジンの保護作用や新薬レミマゾラムについての話題にも言及していただいた.引き続いて,周術期に関しての有害事象として,脳内炎症,覚醒時興奮,術後認知機能,そして幼弱脳への麻酔薬の影響の話題はもちろん,フレイルやサルコペニア・Post intensive care syndrome,ERAS(術後早期回復)と脳機能維持との関係についても話題を盛り込んだ.そして,脳機能維持を目的としたモニタリングとして,MEP(motor-evoked potential)・SEP(somatosensory-evoked potential)ならびに開頭中のMappingについて,当学内のエキスパートに言及いただいた.最後に,機能維持のための方法論として,覚醒下手術の麻酔管理,術前から積極的に関与するプレハビリテーション,さらに最近注目されてきた腸内細菌叢と脳機能の関係,そして最後に脊髄保護戦略と脳低体温療法に関する最近の知見を紹介いただいた.
それぞれに専門書あるいはガイドラインが出ているものもあるが,改めて2021年時点での最新の知見を盛り込んだつもりである.この著書が多くの医療関係者に読まれ,患者さんのQOL向上に繋がることはもちろん,さらにここからヒントを得た研究が多く行われ,さらにエビデンスが蓄積されていく一助になれば,企画者としては望外の喜びである.
最後に,この企画にご同意いただき,執筆に関わっていただいた著者ならびに企画を受け入れてくれた中外医学社社長青木氏と担当上岡氏には改めてお礼を申し上げたい.
コロナ禍の終息を祈って 2021年5月吉日
札幌医科大学医学部麻酔科学講座教授 山蔭 道明
目次
CHAPTER I 脳機能と麻酔
1 吸入麻酔薬〈堀内辰男 齋藤 繁〉
1.総論
2.各論
[COLUMN 1]神経筋疾患と麻酔〈植村景子 川口昌彦〉
1.中枢神経,中枢〜末梢神経疾患
2.神経筋接合部疾患
3.筋疾患
2 水素・キセノン〈奥田千愛 川口昌彦〉
1.水素には抗酸化作用があり,様々な分野で治療効果が期待されている
2.水素の抗酸化作用は麻酔薬の神経毒性に対する治療となる可能性がある
3.キセノンが麻酔薬として臨床使用を認可されている国もある
4.麻酔薬としてのキセノンには利点が多いが問題点もある
3 プロポフォール〈賀来隆治〉
1.プロポフォールは神経麻酔において中心的な役割を担っている
2.神経麻酔においてPONVに対し抑制作用を持つプロポフォールは有用である
3.プロポフォールは頭蓋内圧を下げ脳灌流圧を保ち,脳保護的に作用する
4.プロポフォールは神経学的モニタリングの信号振幅に大きな影響を与えない
5.プロポフォールの特徴は覚醒下開頭手術の麻酔管理にも適している
4 術後脳機能(せん妄)とデクスメデトミジン〈白水和宏 山浦 健〉
1.特徴
2.薬物動態
3.せん妄予防効果
4.DEXのせん妄に対する有効性の機序
5.小児への作用
[COLUMN 2]デクスメデトミジンはどうして有用か?〈澤田敦史〉
1.術後せん妄および術後認知機能低下に関する有用性
2.神経ブロックに関する有用性
3.中枢神経における神経保護作用
4.デクスメデトミジンの有害作用
5 ベンゾジアゼピン系薬物〈増井健一〉
1.ベンゾジアゼピン系薬物は小児の覚醒時せん妄を改善するか?
2.小児患者における手術室退室後短期間の術後せん妄,術後認知機能障害,退院後行動変化
3.高齢者の術後せん妄とベンゾジアゼピン
4.高齢者の術後認知機能障害とベンゾジアゼピン
[COLUMN 3]新薬レミマゾラムのこの領域における可能性〈増井健一〉
1.レミマゾラムはどんな薬か?
2.術中に血圧を下げないことの術後脳機能に対する意義
3.効果時間が短いことは脳機能回復に有利か?
4.術後の集中治療室での使用は?
CHAPTER II 有害事象と周術期管理
1 脳内炎症と周術期予後〈北村佳久 千堂年昭〉
1.脳内炎症と精神機能は密接に関係している
2.術後せん妄における「脳内炎症」の関与
3.術後せん妄発症のハイリスク薬としてベンゾジアゼピン系睡眠薬がある
4.全身炎症によりGABAA受容体機能が変化する
5.全身炎症により精神機能変化におけるセロトニン神経系の関与
6.周術期管理のまとめ
[COLUMN 4]麻酔と脳内炎症の関連について〈田中具治〉
1.脳内炎症
2.脳内炎症を担う細胞
3.麻酔科医とかかわりの深い脳内炎症
2 術後せん妄(POD)と術後高次脳機能障害(POCD)〈松本美志也 山下敦生 石田和慶〉
1.術後の脳機能障害の分類が整理・統一されつつある
2.PODの機序に脳内神経炎症が注目されている
3.POCDの機序
4.POD・POCDと長期予後
5.PODとPOCDの予防戦略
3 フレイル/サルコペニアによる周術期の影響とその予防〈赤坂 憲 楽木宏実〉
1.高齢者の外科治療
2.CGA,フレイル/サルコペニアの診断とその意義
3.フレイル/サルコペニアによる周術期リスク評価と予防介入の可能性
4 術後早期回復(ERAS®)と脳機能維持〈新山幸俊〉
1.本邦における高齢化
2.術後早期回復(enforced recovery after surgery:ERAS®)
3.高齢者におけるERAS®
4.診療体制の構築と本邦からのエビデンス発信
[COLUMN 5]Post intensive care syndromeとは〈菊池謙一郎 数馬 聡〉
1.重症患者の急性期生存率の向上によって,生存患者の長期予後が注目されるようになった
2.PICSによる認知機能・身体機能・精神機能障害
3.PICS予防のためにABCDEFGHバンドルが提唱されている
5 幼若脳への麻酔薬の神経毒性〈小原崇一郎 蔵谷紀文〉
1.神経発達過程においてγ—アミノ酪酸やグルタミン酸などの神経伝達物質およびそれらの受容体が重要な役割を果たす
2.1990年代の基礎研究:発達過程の幼若脳への麻酔薬曝露は神経細胞のアポトーシスを誘導し,神経発達に影響を与える可能性が示唆された
3.2000年代以降の後方視的臨床研究:麻酔薬曝露による神経発達への影響に関してさまざまな結果がみとめられた
4.2010年代の前方視的臨床研究:長時間または複数回の麻酔曝露による神経発達への影響については未だ議論があるが,乳幼児期の短時間かつ単回の麻酔薬曝露は神経発達に影響しないことが示された
5.神経保護作用を有するとされるデクスメデトミジンを用いた臨床研究が進行中である
[COLUMN 6]どうして幼弱脳は麻酔薬に弱いのか? 老齢は大丈夫?〈内田洋介 森本裕二〉
1.麻酔薬の幼弱脳への神経毒性
2.幼弱脳における神経毒性の機序
3.老齢は麻酔後の神経炎症,神経認知機能障害のリスク因子
4.脆弱な乳幼児,老齢患者への麻酔管理
6 小児全身麻酔症例における覚醒時興奮〈茶木友浩〉
1.覚醒時興奮は,セボフルランの登場により顕在化した問題である
2.術前における患児の強い不安は覚醒時興奮の原因となり,中長期的な悪影響を引き起こす
3.麻酔薬の選択を含めた薬物学的介入により,効果的に覚醒時興奮を抑制することが可能である
4.鎮静薬を使用した覚醒時興奮予防を施行した場合,抜管後の厳重な気道呼吸管理が必須である
CHAPTER III 脳機能維持を目的としたモニタリング
1 SEP,MEP〈山田奨人 室橋高男 橋本修一〉
1.体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:SEP)
2.運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)
3.MEPの脳に対する影響と施行条件
4.MEPの警告基準
5.麻酔薬の影響
2 脳機能マッピングとモニタリング〈三國信啓〉
1.脳機能マッピング・モニタリングは脳神経外科手術に必要である
2.脳機能マッピングには脳電気刺激が最も信頼できる検査方法である
3.脳機能維持のためには局在からネットワーク診断が必要となる
CHAPTER IV 機能維持のための方法論
1 覚醒下手術〈鎌田ことえ〉
1.覚醒下開頭手術は,言語機能の温存を可能とする唯一の術式である
2.覚醒下開頭手術における麻酔管理上の要点は,明瞭な意識状態と安定した呼吸状態の維持である
3.術中有害事象として,けいれん発作,気道トラブル,悪心・嘔吐,疼痛および局所麻酔薬中毒が起こりうる
4.覚醒下開頭手術の成功には,十分な術前準備や周術期チーム医療の達成が求められる
[COLUMN 7]てんかんと麻酔の影響〈中山英人〉
1.非てんかん外科手術の麻酔とてんかん外科手術の麻酔
2.術中皮質脳波モニタリング
3.覚醒下手術と全身麻酔
4.全身麻酔下の術中皮質脳波モニタリング
5.抗てんかん薬の長期服用による筋弛緩薬の作用の短縮
6.麻酔薬の選択と脳機能予後
2 術前プレハビリテーション〈河野 崇〉
1.術前プレハビリテーションの概要
2.術前プレハビリテーションの定義
3.術前プレハビリテーションの実際
4.術前プレハビリテーションと術後せん妄
5.術前プレハビリテーションが術後せん妄予防に及ぼす効果の機序
3 腸内細菌叢と脳への影響〈立花俊祐 西原教晃〉
1.腸内細菌叢と脳腸相関
2.腸内細菌叢と周術期管理
3.今後の展望
4 周術期神経学的合併症の予防戦略〜脳脊髄保護〜〈神里興太〉
1.頭蓋内圧の調整
2.薬理学的脳保護の可能性
3.開心術と術後脳卒中
4.低灌流と神経障害
5.人工心肺中の灌流圧と脳梗塞
6.大動脈外科手術と神経保護
7.麻薬性鎮痛薬と虚血性脊髄障害
5 心停止患者に対する低体温療法/体温管理療法〈前川邦彦〉
1.目標体温は33℃なのか?
2.いつTTMを導入するか?
3.TTM維持時間は24時間なのか?
4.誰にTTMを適応すべきなのか?
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書籍情報
- ISBN:9784498055483
- ページ数:192頁
- 書籍発行日:2021年6月
- 電子版発売日:2021年6月11日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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