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- 研修医・非専門医のための外来呼吸器診療エッセンス
商品情報
内容
亀井道場主催者が外来呼吸器診療の心得や診かた・考え方について、症例ベースで具体的に紹介。外来での呼吸器診療において、研修医や非専門医(開業医)にとって目指すべき到達目標を明らかにするとともに、診療上の実際的なポイントも合わせてレクチャー!
「呼吸器診療が楽しくなる」自身の経験を万年研修医向けに余すことなく収録した内容充実の1冊。
※本製品はPCでの閲覧も可能です。
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序文
はじめに
私がまだ若く、駆け出しの研修医であったころ、救急室には、喘息発作の子供や大人達がひっきりなしで訪れ、小児病棟も大人の病棟も、喘息重積発作を起こした人達であふれていました。研修1年目の時、救急外来に訪れた喘息発作の孫につきそった祖母が、私の目の前で喘息発作を起こされ呼吸停止、必至に挿管し救命した記憶、そして耳にこびりつく喘鳴の大合唱は、私を呼吸器疾患から遠ざけるに十分でした。
もともと文系医師を持って任ずる私には、呼吸生理学は、理解を超えていました、そうも言っておれず、苦手を克服しようと、参加した呼吸機能講習会での惨状は、いまでも私に暗澹たる思いを苦々しく蘇らせます。そんな私なのに、巡り巡って、いつの間にか呼吸器内科を標榜し、たくさんの息切れや咳で悩む患者さんの診療に当たっています。
私が、なんとか呼吸器内科の名前のついた診療所で、曲がりなりにもその名にふさわしくなった? のは、病院時代の経験ではなく、開業して、咳や息切れの患者さんに向き合い、それを解決しようと、奮闘してきた結果です。呼吸器診療の技術を教えてくれたのは、診療所、あるいは在宅ケアで出会った患者さん達と言っても過言ではありません。
そんな私だからこそ、万年研修医として呼吸器内科を学ぼうとする皆様に、必要最低限のことをお伝えし、「これならできる」と実感していただけるのではと思う次第です。そして、願わくば、咳や息切れに悩む患者さん達の診療が大好きになっていただきたい、ちょうど私が『万年研修医のための外来循環器診療エッセンス』の著者である伊賀幹二先生に出会い、循環器診療が大好きになったように。
伊賀幹二先生との出会いは2003年のことです。当時は、今のように学生が実際の臨床を体感、学べる場はありませんでした。そんな学生さん達のため、そして呼吸器内科の知識と技術だけでは、日々訪れる患者さんの問題に向き合えないと感じていた私自身のために立ち上げた勉強会である亀井道場の第1回講師に伊賀先生をお招きしたのです。先生から、「研修医と私達プライマリ・ケア医の第一段階の到達目標は同じである、すなわちⅠ音Ⅱ音が聞き分けられること、Ⅱ音の呼吸性分裂が聴き分けられること、内頸静脈の観察ができること、その3つ」と教えていただきました。私は、これだけなら、私にもできる、続けられる、と思いました。それから、1年間、ひたすらこれら3つだけを実践し続けました。そしたらどうでしょう、まず、Ⅲ音がわかり、心不全の診断ができるようになり、ある日完全左脚ブロックに気づき、未診断の70代の僧帽弁狭窄症を見つけたり、といろいろなことを伊賀先生の言葉通り体感できました。もちろん、その都度、伊賀先生にメールで相談し、報告し、独りよがりにならないようにしたのは言うまでもないことです。これならできると体感したそれらの経験は、やや苦手だった循環器診療を、大好きにしてくれました。
出会った当初から、呼吸器診療でも、こういう事、すなわちプライマリ・ケア医の必要最低限の到達目標を示してくれないか、と伊賀先生に言われ続けてきました。まさに臨床のあらゆる事に貪欲な、何にでも興味をもつ、いつまでも万年研修医たらんとする、伊賀先生ならではのご提案でした。大きな宿題をもらったのですが、果たして私に伊賀先生から示していただけたような、プライマリ・ケア医にとって、大切な、かつ、呼吸器診療が楽しくなるような到達目標を示すことができるだろうか? ためらっているうちに月日は流れていきました。
そして、恐れていたことが起こりました。ついに、伊賀先生から先生の御著書『万年研修医のための外来循環器診療エッセンス』の姉妹編を書かないか? と提案される日が来たのです。果たして私にその任が務まるか、一瞬お返事を、ためらいました。伊賀先生の頭の中ではきっとあらゆる領域の「万年研修医のための」シリーズが思い描かれているに違いありません。恐れているばかりでは、進みません。初めて先生に出会い衝撃を受けてから17年以上が過ぎ去り、その間に積み重ねた診療所の呼吸器内科医としての思いを、皆様に伝える機会を与えていただいたと、そう思い直し、震えを武者震いと考え、お引き受けすることにしました。
この本の主な読者として、私のように診療所で働く医師、そして、これから万年研修医たらんと、一念発起した医師を対象としました。本書に出てくる患者さん達は、実際に私が、日々の診療で出会った方達です。外来あるいは在宅でであう方達ですので、病院外来、あるいは病棟ベースではないため、ごくありふれた問題を扱うことになり、難解症例をもとめる向学心の高い、あるいは、すでに、高い志を持って、多くの勉強会に参加し、研鑽を積み、私どものレベルをクリアした先生方が本を取られることを想定しておりません。
長尾大志先生の優れた初学者、プライマリ・ケア医向けの書籍がすでに何冊かある中で、少し冒険ですが、私なりに、これならできる、続けられると、診療所で働く皆様が感じ、日々の診療の中で実践し、体感できる到達目標を提示すること、これが本書の到達目標です。
私が開業し、目標を求めて、さまよっていた時、伊賀先生に出会い、それまで曲がりなりにも、ある程度、循環器診療ができていると思いこんでいた自分が、いったん瓦解し、明確な目標を示していただくことで、それに向かって進むことができ、循環器が大好きになった、そんな経験を皆様にしていただければ大きな喜びです。
2021年6月
亀井三博
目次
その1 外来呼吸器診療の心得
1 プライマリ・ケアにおける呼吸器診療の流れ
2 呼吸器診療3種の神器
その2 あなたならどうする? 外来呼吸器診療の診かた・考えかた
症例01 Kさん・30代後半・男性 感冒様症状で来院された2日後、震えが止まらないほどの発熱が起こり、再度来院、何を考えるか?
症例02 Kさん・40代前半・男性 悪寒戦慄を伴う39 度台の発熱、肺炎球菌肺炎と判断、入院をどうするか?
症例03 Hさん・40代前半・男性 咽頭痛、結膜充血、鼻汁、咳痰のため来院され、肺炎であった。喀痰グラム染色で菌が見えにくい、さて、この複数臓器にわたる感染をどう判断するか?
症例04 Tさん・40代前半・男性(事務職:喫煙歴なし) ウイルス性上気道炎と思われる症状が軽快せず、発熱、膿性痰、頭痛が出現、どう考え、診断・治療するか?
症例05 Kさん・30代後半・男性(営業職:喫煙歴なし) 咽頭痛のあと、咳痰が出て来院、急性気管支炎であったが、急性気管支炎に抗菌薬投与は必要か?
症例06 Nさん・40代前半・男性 気道感染を繰り返している病態をどう考えるか?
症例07 Gさん・50代後半・女性 感冒? 後、咳が長引くため来院、他院での胸部レントゲンでは異常なしと言われたが、聴診でクラックルを聴取、抗菌薬の適応は?
症例08 Aさん・20代後半・男性 咳がだんだんひどくなって来院、百日咳を疑う。さて百日咳は診断・治療すべきか?
症例09 Iさん・80代前半・男性 慢性呼吸器疾患と、緑膿菌感染症とはどう付き合ったらよいか?
症例10 Fさん・70代後半・女性 非結核性抗酸菌症(MAC症)とはどう付き合うか? 治療の開始はいつか? そしていつまで続けるか?
症例11 Mさん・30代半ば・男性 何をやってもよくならない慢性難治性の咳はどう対処したらよいか?
症例12 Mさん・20代前半・女性 2週間咳がなかなか止まらない、というよくある状況で来院された患者さんの咳をどう考えていくか?
症例13 Kさん・50代前半・女性 ステロイドの使用に抵抗のある、気管支喘息の患者さんのケアをどうするか?
症例14 Fさん・60代後半・男性(喫煙現役) 自分では余り困っていない、COPDの患者さんにどうお付き合いしていくか?
症例15 Aさん・70代前半・男性 高血圧で定期通院中の患者さん、聴診でクラックルを聴くようになったら、どう判断するか?
NOTE
1 外来ピークフロー測定の奨め
2 病歴の創成:映像化する方法
3 私はいかに所見を見落としてきたか?
4 COVID-19は何を変えたか?
column 日々の診療を通して考えること
アトピー咳嗽の概念は、万年研修医に必要か?
臨床の喜び
診察室は劇場
在宅ケア
だから、病歴はやめられない
コロナが奪ったもの
コロナと肺炎と事前確率
qSOFA、A-DROP、そしてC(U)RB 65
マクロライド少量持続投与の功罪を見てきた
古楽器の演奏
咳喘息は存在するか?
ACOは万年研修医には不要の概念
吸入薬の選択について
お互いの思い込みは間違いのもと
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書籍情報
- ISBN:9784765318730
- ページ数:248頁
- 書籍発行日:2021年7月
- 電子版発売日:2021年7月2日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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