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- Q&A形式で学ぶ 周術期気道・呼吸管理の基礎と実際
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内容
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序文
監修者序文
麻酔科医の従事する診療業務の中で、周術期の気道管理と呼吸管理は大きな部分を占めています。手術医療を受ける患者の予後をさらに向上するためには、呼吸器系の問題においては麻酔科医の役割が極めて重要で、直接的な介入においても俯瞰的な立場からも術前から術後まで評価や判断に積極的にかかわる必要があります。その意味で麻酔科医は周術期呼吸管理のエキスパートでなければなりません。
このような麻酔科医が日々行っている最も身近で最も重要な一連の臨床行為について、現場で直接指導しているような教科書を長年つくりたいと思ってきました。臨床に直結した教科書をつくることは現場の活き活きとした臨場感をそのままにして、アートをどのようにサイエンスとして洗練させればよいのかという困難もあり実現できませんでした。この度長年の念願が叶い、私が以前勤務した2 つの医療機関のそれぞれ後進にあたる倉橋清泰先生と内田寛治先生が共同して、各施設に勤務する若手麻酔科医の力を結集して現場での直接指導に即応したQ & A形式の麻酔科学の教科書を完成させていただいたことは望外の喜びに感じます。
本書の章の構成は、総論と各論に大きく分けられておらず、経時的に第Ⅰ章が術前準備、第Ⅱ章が麻酔導入、第Ⅲ章術中管理、第Ⅳ章術後管理と割り当てられ、第Ⅴ章が困難症例と単純明快な章立てになっています。一つ一つ説明はしませんが各章の中の項目立てに際立った特色があります。各項目の中では臨床の現場で直接指導する状況を想定してクリニカルクエスチョンを自然な流れでつないであり、各々のクリニカルクエスチョンにわかりやすくしかもエビデンスを提示しながら解説していますので、その後のアンサーとして要約された臨床行為や判断に関するステートメントを納得して理解することが可能になっています。単純明快な項目立てと度々尋ねられるクリニカルクエスチョンの構成によって、気道管理・呼吸管理の臨床を行う際に、疑問に思ったこと、あるいは確認したいことに適した内容を探し出すのが極めて容易であり臨床を行ううえで大変役に立ちます。また各項目の内容が現場の臨場感をうまく活かした記述になっているため、通読性も高いです。
長年の念願が叶った本書を指導医が後輩の麻酔科医に麻酔を指導する際にしっかりとした根拠を詳しく述べている参考書として、また麻酔科医以外の医療者に気道管理・呼吸管理を指導する際の教科書として存分に活用していただけることを期待しています。
2021年5月吉日
国際医療福祉大学三田病院病院長
山田 芳嗣
編集者序文
ある年の日本麻酔科学会学術集会が終わった後に山田芳嗣先生に話しかけられた。「先生の企画した呼吸のセッション凄い人気だったね。会場に入れなかったよ」確かに壇上から見ると立見で参加されている先生も数多く見られていた。それに続いて次のようなお言葉をいただいた。「呼吸はやはり大事だよね。みんな勉強したいのに、適当な教科書がないのだよ」これに続く会話は皆さんご想像の通りです。
教科書を編集するなどという経験は皆無であったが、せっかくつくるならば現場の疑問に即応できる書物をつくりたいと考えた。と言うのも、臨床現場で若手を指導している際、私はソクラテスの問答をするのが好きなのだが、「どうしてこうなったと思う?」、「なぜみんなはこうするのかな?」、これに対して皆ポケットに入っているマニュアル本のページを繰るのだが、もちろん答えは見つからない。「じゃあ医局に戻って調べようか」と言っても使える書物としてはMiller’sAnesthesia しか見あたらず、若手・中堅麻酔科医にとってはハードルが高いようであった。そこで、それらの“学修中の指導者”が、若手に説明する際にパッと手にとって根拠やエビデンスも含めて解説できるような、そんな教科書が必要だと感じていた。そうなると、日本全国から著名な先生方にお願いして原稿をいただくよりも、日々現場でともに苦労しているまさに本書の読者ターゲットとなるような“若手医師”とつくったほうが、臨場感のある使い勝手の良い書籍になるのではないかと考えた(註:難しい内容については医局の先輩にお願いした項目もある)。
山田先生の助言をいただきながら、旧知の間柄の内田寛治先生とともに章立てをし、項目を挙げ、それぞれについてクリニカルクエスチョンや解説に含めてほしいこと、コラムタイトルなどなど、かなり細部に渡り内容を詰めた。そして章を分担し、それぞれの同僚に原稿執筆を依頼したのだが、執筆者の中には学会発表の抄録しか書いたことがないというような者も多くいた。結果として原稿用紙が真っ赤になるほどコメントを入れさせてもらった原稿も少なくない。それでも皆、数ケ月後にはいくつもの引用文献を加えてエビデンスを示し、オリジナルの図を作成してわかりやすい解説を加え、と原稿は見違えるように完成に向かって行った。項目によっては10 回近いやりとりをしたものもあるが、最終的にはどの項目も大変に完成度の高い原稿になった。改めて、我々編集者の我儘に付き合い、根気強く最後まで原稿を完成させてくれた執筆者の皆様にこの場を借りてお礼申し上げたい。また、すべての原稿に内田先生と私と2 人が納得のいくまで編集をさせていただいた結果、発刊までに気の遠くなるような年月をお待たせしてしまったことを、とりわけ早々と原稿を完成させてくれた執筆者の皆様にはお詫び申し上げたい。最後に克誠堂の関貴子氏には、我々のこだわりを受け入れ、ページ数の大幅な超過にも目を瞑ってくれたことに感謝申し上げる。
読者の皆様には、もうこれ以上の説明は不要のことと思います。本書を手に取ってページをめくっていただきたい。必ずや知りたい内容の答えが、理由とともに明確に示されているはずです。ぜひ本書をいつも手元に置いて、日々の臨床に、後進の指導に、お役立てください。
2021年5月吉日
国際医療福祉大学成田病院麻酔科部長・ICU 部長・副院長
倉橋 清泰
編集者序文
臨床現場での麻酔科医師の強みは?と考えると、気道管理と人工呼吸、呼吸生理が真っ先に挙がるのではないでしょうか。言い方を変えると、この分野は、周術期管理において、他の診療科医師に頼らない、麻酔科医自身の判断が求められる領域であると考えられます。毎年開催される麻酔科関連の学術集会でも呼吸関連のセッションに参加する麻酔科医が多いことは、この領域への関心の高さを裏付けていると思います。
呼吸に関連した、周術期の様々な判断を要する場面に直面するにつけ、若手の麻酔科専門医に、エビデンスに基づいた判断をする材料を、整理された形で提供する書籍、ある程度の経験をもったベテラン麻酔科医に、日々蓄積される新しいエビデンスを効率よく提示する書籍があると良いと考えておりました。本書はそのような期待に応える書籍として計画されました。
本書では、周術期管理の気道、呼吸管理に関する項目を時系列にそって配置しています。通読しても良いと思いますし、頭に浮かんだ疑問の答えを調べたいときに参照するのも良いと思います。エキスパートオピニオンにあたる部分はコラムにするなどして、エビデンスと区別されるような記載を心掛けました。
本書の執筆者は、編者の出身教室である、横浜市立大学医学部麻酔科学教室、東京大学医学部麻酔科学教室に所属する、比較的若い世代の麻酔科専門医が大半を占めております。執筆にあたっては、フラットな視点で、できるかぎりエビデンスに基づいて論理を展開してもらうようお願いしました。これは、読者が、本書の引用文献を踏まえたエビデンスに基づき臨床判断をしてもらうことで、外科主治医など、他者への説得力をもっていただけるだろうと考えたからです。
執筆者はそれぞれが大変な量の文献調査を経て、原稿を完成させてくれました。また、草稿から完成に至るまで、著者と編集者との間で原稿をやりとりしましたが、この頻度は、こうした書籍を作成する際の一般的頻度の数倍なされたのではないかと思います。臨床家が想起するクリニカルクエスチョンをいくつか設定して、文献的エビデンスやエキスパートオピニオンを提示することで、読者の判断材料を提供するように意識しました。
本書の企画が最初に出たのは2014 年頃でしたので、完成に漕ぎ着けるまで足掛け7 年もかかったことになります。執筆・編集に長期間を要したため、情報のアップデートを再度お願いした章もあります。著者や編集者にとっては試練の期間でしたが、最終的には出来上がったものは、企画段階の意図を十分反映したものになったと思います。日々情報がアップデートされたもの、議論があるものについては今後もぜひ議論をしていただきたいと思います。
編集作業に時間を要してしまった私を励ましつつ、辛抱強く待ってくださった倉橋教授、山田教授、克誠堂関貴子氏には謹んで御礼申し上げたいと思います。本書が読者にとって、明日からの麻酔管理に自信をもって取り組む材料となることを祈念しております。また本書が、呼吸領域の新たなエビデンスを蓄積するモチベーションにつながれば、望外の幸せです。
2021年5月吉日
東京大学医学部附属病院麻酔科・痛みセンター教授
内田 寛治
目次
第I 章 術前準備
A.術前評価
1 気道評価 高橋 紗緒梨
2 呼吸機能評価 倉橋 清泰
3 画像評価 長嶺 祐介
B.術前介入
4 気 道 宮崎 敦
5 呼吸器介入 大川 卓巳
6 禁 煙 馬場 靖子
7 口腔ケア 新井 悠介
C.判 断
8 専門家コンサルト 桑原 沙代子
9 リスク判断 増渕 哲仁
第II 章 麻酔導入
1 導入計画 内田 寛治
2 導入薬物の呼吸に与える影響 加藤 敦子
3 マスク換気 玉井 悠歩
4 喉頭展開 大畑 卓也,内田 寛治
5 気管チューブ 朝元 雅明
6 意識下挿管 日下部 良臣
7 外科的気道確保 平岩 卓真
8 導入時の合併症 露嵜 仁志
第III 章 術中管理
1 麻酔器の構造 佐藤 仁
2 麻酔器の設定 小林 綾子
3 麻酔で呼吸はどう変わるか(生理学的検討) 櫻井 龍
4 手術中の人工換気において肺保護換気を実施すべきか 西周 祐美
5 経肺圧 高木 俊介
6 driving pressure 山口 修
7 モニターの見方 石川 玲利
8 気管チューブにまつわる問題点 松尾 史郎
9 分離肺換気 菅原 陽
10 声門上器具使用時の注意点 宮崎 弘志
11 術中呼吸トラブル 安西 晃子,西村 祥一
12 動脈血ガス分析データを読み解く 藤本 潤一
第IV 章 術後管理
1 抜管計画 水枝谷 一仁
2 抜管の手順 桑島 謙
3 残存筋弛緩 岩切 正樹
A.抜管困難が考えられる症例
4 上気道(airway)の問題 牛尾 倫子
5 下気道(肺実質)の問題 川島 征一郎
6 抜管後非挿管での呼吸サポート 河村 岳
第V 章 困難症例
1 外傷気道 服部 貢士
2 巨大頸部腫瘍,巨大縦隔腫瘍 山口 恭子
3 腫脹性気道緊急:喉頭蓋炎,甲状腺術後出血,気道熱傷 山内 千世里
4 口腔内出血のある患者の全身麻酔 長嶺 祐介
5 慢性閉塞性肺疾患患者の胆囊手術 江見 真梨子,倉橋 清泰
6 間質性肺炎患者の肺手術(非肺手術を含む) 蒲生 正裕
7 重症筋無力症患者の縦隔手術(その他神経筋疾患) 佐々木 誠
8 睡眠時無呼吸症候群患者,病的肥満患者の開腹手術 入江 友哉
9 dependent lungに問題がある場合の対側肺手術 明石 裕里
10 下部消化管穿孔で敗血症,急性呼吸窮迫症候群患者の開腹手術 比留間 孝広
11 続発気胸患者の気膿胸手術 廣瀬 佳代
12 気管の手術 菅原 泰常
13 肺全摘 坊垣 昌彦
14 肺移植 花崎 元彦,小林 求
15 肺胞タンパク症患者の全肺洗浄 内田 寛治
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書籍情報
- ISBN:9784771905511
- ページ数:403頁
- 書籍発行日:2021年5月
- 電子版発売日:2021年7月23日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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