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INTESTINE 2021 Vol.25 No.2 大腸Ⅱc─症例アトラス
INTESTINE編集委員会 (編) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
見逃していたら1年後,この患者の命は? この怖さを実感させる症例ばかりである.このようなⅡc を見逃さないためにも,多くの症例を見て学ぶ,そしてⅡc を意識した集中力のある観察から実践でpure Ⅱc を1例見つける.それが診断学のスタートとなり一流のコロノスコピストへの道と考える.本特集がその一助になることを期待したい.(編集後記から抜粋)
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序文
序 説
工藤 進英
Shin-ei Kudo
(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
大腸癌発生のメインルートはいったい何なのか? 人間の各臓器に生じるさまざまな癌はほとんどが正常上皮から直接発生している.ところが大腸癌においては,正常粘膜から直接発生するいわゆる“de novo 癌”と,1972年にMorson らが提唱した“adenoma-carcinoma sequence”の大きな二つの学説が存在し,そのメインルート解明に関する議論が非常に盛んに行われていた.1980~1990年代の頃である.しかし残念ながら現在に至るまで未だ一致した見解は得られていない.筆者は1985年に当時勤務する秋田赤十字病院において“de novo 癌”である“Ⅱc病変”の生体での第1例目を発見した(図).それ以降も数多くの“Ⅱc病変”が秋田にとどまらず全国的に発見されるようになり,“幻の癌”もしくは“秋田の風土病”などと呼称されていた“大腸Ⅱc”は,徐々に“現実”のものと認知されるようになった.筆者が代表世話人として開催している「大腸Ⅱc研究会」も今年で30回目となり(2020年はCOVID-19 の影響で休会),毎年のように全国から多くの“Ⅱc型早期大腸癌”が報告されてきた.1997 年には大腸Ⅱc研究会を基盤とし,Ⅱc病変を含めた早期大腸癌を広く検討・啓蒙する雑誌として『早期大腸癌』(現『INTESTINE』)が創刊され,雑誌という形で情報を広く発信し続けている.無論,本邦だけにとどまらず,以前より大腸Ⅱc病変への関心が薄かった欧米諸国に対しても,論文・学会や海外講演,内視鏡ライブといった形で幾度となく啓蒙活動を続けてきた.とくに,1999年に発刊された「WHO Classification of Tumours:Pathology and Genetics of Tumours of the Digestive System」1)には筆者らの意見が数多く取り入れられ,大腸Ⅱc病変の内視鏡画像や病理組織像,pit pattern 分類などが掲載された.WHO 分類に大腸Ⅱc病変が取り上げられたのは初めてのことであり,その意義はきわめて大きかった.さらに2008年には筆者とフランスのLambert 氏を代表として「Kyoto Workshop on Nonpolypoid Colorectal Neoplastic Lesions」というコンセンサス会議が開催された.そこでは世界各国の大腸癌の専門家が京都に集結し,大腸Ⅱc病変についての活発な議論が交わされた.大腸Ⅱc病変が進行癌の前駆病変としてきわめて重要であることを世界各国の先生方と討議し,その内容は『Gastrointestinal Endoscopy』誌2)で紹介され,その後世界へ広く発信されることとなった.
Morson らが発表して以来,大腸癌におけるadenoma-carcinoma sequence はおよそ半世紀にわたりほとんど無批判で受容されてきたともいえる.しかしこの学説にはいくつかの矛盾点も存在する.一つ目は,ポリープ状腺腫が癌化する過程(潰瘍型進行大腸癌への変化)においてその中間形態(頂部に潰瘍を伴う有茎性ポリープ状癌)の多くが見つかっていない点にある.中村恭一3)の言う「大腸癌,夜の破局」である.つまりこの学派の言い分としては,ポリープ状の癌から潰瘍型進行癌への形態変化は急激なるがゆえ,内視鏡医の目にも止まらないのである.しかしこの半世紀のあいだにこれだけ多くの全大腸内視鏡検査が一般的になされるようになった現在においてさえも,このadenoma-carcinoma sequence を裏付ける中間形態がほとんど発見されていないことは,この学派が有する大きな矛盾点である.二つ目は,adenoma-carcinoma sequence が誕生した背景には,「癌組織診断基準」を異型腫瘍腺管の粘膜下層への浸潤像で定義したことが大きく影響している.つまり粘膜内にある異型腫瘍腺管は腺腫であろうと癌であろうとすべてadenoma と定義して,粘膜下層への浸潤という癌組織診断基準によってadenoma-carcinoma sequence を説明してしまっている点にある.これでは大腸粘膜には癌は存在しないことになってしまい,癌は正常上皮から発生するとされる癌理論をうまく説明できていない.
近年,内視鏡医の興味はESD やコールドポリペクトミーといった手技的な話題がメインとなりつつあり,大腸癌の病態解明や発生のメインルートに至る話題はやや希薄になった感がある.そして未だに大腸癌発生のメインルートは“adenoma-carcinoma sequence”によるものといった意見がごく当たり前のように多数を占めていることも事実である.しかしトーマス・クーン4)も言うように,科学の歴史における「パラダイムシフト」は,つねに累積的に生じるのではなく断続的に生じるものである.いずれ来るかもしれないパラダイムシフトへ向けて(そのシフトはまさに180度の転換である),われわれ内視鏡医の責務は一つでも多くの症例を実直に,そして日々丁寧に積み重ねていくことに尽きる.
文 献
1)Hamilton S, Aaltonen L:World Health Organization Classification of Tumours:Pathology and Genetics of Tumours of the Digestive System.1999, IARC Press, Lyon
2)Kudo S, Lambert R, Allen JI, et al:Nonpolypoid neoplastic lesions of the colorectal mucosa.Gastrointest Endosc 2008;68:S3-S47
3)中村恭一:大腸癌の構造(第2版).2010,医学書院,東京
4)トーマス・S. クーン著,中山 茂訳:科学革命の構造.1971,みすず書房,東京
目次
特集●大腸Ⅱc─症例アトラス
序説/工藤 進英
Ⅰ.大腸Ⅱcへの思い─ 現在・過去・未来/藤井 隆広
Ⅱ.症例アトラス
(1)Lynch症候群に認めたⅡc症例/多発大腸腺腫の治療経過中に発見したⅡc症例/山野 泰穂他
(2)わずかな色調と粘膜性状の違いで発見されたⅡc/田中 秀典他
(3)絶対陥凹を有した大腸腫瘍に対してESDを施行したⅡc症例/春日 健吾他
(4)T1癌であった陥凹型病変の2例/池松 弘朗他
(5)腫瘍径4mm大の0-Ⅱc型大腸T1a 癌/0-Ⅱc型の直腸S 状部T1b癌/一政 克朗他
(6)わずかな色調変化とひだの変形で発見されたⅡc症例/今野 真己他
(7)便潜血陽性で発見され内視鏡治療を行った0-Ⅱc症例/田中 寛人他
(8)10mm 未満の陥凹型大腸腫瘍の2症例/佐野 寧他
(9)陥凹型早期直腸癌の2症例/福澤 誠克
(10)10mm でSM 浸潤をきたした上行結腸Ⅱc症例/特異な形態を呈したⅡc症例/中野 尚子他
(11)発見し難かった大腸Ⅱc病変の2例/寺井 毅他
(12)反転観察で発見された径9mm,大腸0-Ⅱc型T1b癌の1例/鶴田 修他
(13)ひだのひきつれがきっかけで発見された微小Ⅱc病変/同一患者に二つのⅡc病変を認めた1例/猪又 寛子他
(14)拡大/超拡大観察を行ったPureⅡc症例/髙田 和典他
(15)ひだの形状変化で発見した症例/萬 春花他
(16)詳細な拡大観察を行った5mm 大のⅡc病変の1例/拡大観察が有用であった10mm大のⅠs+Ⅱc型早期大腸癌の1例/寺門 洋平他
(17)発赤陥凹として発見された症例/潰瘍性大腸炎関連腫瘍であった陥凹型の症例/永田 信二他
(18)陥凹型(Ⅱc)由来と考えられたSM癌の2症例/泉本 裕文他
(19)小さな粘膜下腫瘍様隆起にて発見した0-Ⅱc+Ⅱa 型進行癌/淡い発赤と血管透見像消失にて発見した0-Ⅱa+dep型腺腫/木庭 郁朗他
Ⅲ.Ⅱcについての最新の話題
(1)AIによるⅡc発見/高階 祐輝他
(2)Ⅱcの遺伝子学的特徴/神山 勇太他
TOPICS ●─文献紹介〈炎症関連*〉
クローン病小腸粘膜治癒に対する抗TNFα抗体製剤の効果〔Review from ─ Clin Gastroenterol Hepatol 2020;18:1545-1552〕 /竹中 健人
経会陰腸管エコーは潰瘍性大腸炎における内視鏡的・組織学的粘膜治癒を予測する〔Review from ─ Aliment Pharmacol Ther 2020;51:1373-1383〕/佐上晋太郎
会告
次号予告
編集後記/藤井隆広
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書籍情報
- ISBN:9784004202502
- ページ数:114頁
- 書籍発行日:2021年5月
- 電子版発売日:2021年7月25日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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