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- 実践! 輸血療法Q&A
商品情報
内容
輸血療法の現場で起こるリアルなQuestionに答えます
輸血療法を行ううえで生じうるトラブルや疑問点をQ&A形式で解説.基本的ながらも教科書には載っていないような問題など,現場で聞こえるリアルなQuestionを選りすぐった.設問は医師編と看護師編に大別し,医師編はさらに分野別とシチュエーション別に分けることで,知りたい情報に用意にアクセスできるようにまとめた.キーワードから逆引きできるミニキーワード集も収載.学びやすいから頭に入る,使い勝手抜群の1冊だ.
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序文
まえがき
本書を執筆するきっかけは,私が2006年に中外医学社から出版させていただいた「輸血療法トラブルシューティング」について,コンセプトは踏襲し内容を刷新した本を発刊してはどうかと,中外医学社企画部の方からお話しをいただいたことにあります.「輸血療法の実施に関する指針(令和2年3月改正)」および「血液製剤の使用指針(平成31年3月改正)」の改正を含め,輸血療法の状況は少しずつ変化してきており,「輸血療法トラブルシューティング」の内容も現状に追いつかなくなった感は否めませんでした.また,日本医療研究開発機構(AMED)大坂班「ICTを活用した血液の需要や適正使用の向上に関する研究(平成27〜29年度)」において,オンライン輸血教育システム(e-learning)および学習支援システムの開発を担当したのですが,私の力量不足もあり満足のいく結果を残せませんでした.班員の先生方にはご尽力いただいたにもかかわらず,不完全燃焼の感を残したまま申し訳なく思っておりました.今回,「輸血療法トラブルシューティング」の内容を刷新した本の出版についてお話しをいただいた時に,AMED研究班において作成した学習支援システムの内容について,少しでも反映した本を作りたいという気持ちが強くなりました.幸い,班員の先生方にもご執筆いただくことをご了承いただいたことで,本書は共著という形で出版することになりました.
本書の特徴は,輸血療法を実践する上で「こんな時にどうする」といった困った時に,本書の設問と解説をもとに問題を解決していただくQ&A形式の本です.本書は,臨床現場において輸血療法を実践する医療従事者,特に医師と看護師を対象に企画されました.臨床検査技師の方を念頭におかなかった訳ではないのですが,輸血関連検査の技術的な内容に深く立ち入ることは,本書のコンセプトが不明瞭になってしまうことを避けたかったからです.また,100という設問数は少ないのではないか,というご指摘はあると思いますが,本という紙媒体ではボリュームを制限せざるを得なかったというのが実情です.
本書は,第I部医師編,第II部看護師編,第III部ミニキーワード集の3部構成です.第I部医師編は,分野別とシチュエーション別に分け,シチュエーション別の方はAMED研究班の先生方との共著となります.第II部看護師編は,輸血療法の現場での疑問について解説を記載しています.第I部と第II部の本文において,100の設問に関連するキーワードを赤字で示し,第III部を参照できるようにしました.第III部ミニキーワード集は,キーワードに付けた番号(Q000)から逆に設問を選択できるようにしました.本書において,各設問の記載に重複する部分がありますが,Q&A毎に読まれることを念頭においているためです.本書は,輸血療法の実践に主眼をおいており,個々の病態に関する記述は必要最小限にとどめておりますので,必要な場合には他書を参照していただければと思います.
臨床現場において輸血療法を行う上で迷った場合などに,本書を参照していただけましたら,著者としてこの上ない喜びです.本書の発刊にあたり,企画の段階から完成に至るまでご尽力いただいた中外医学社企画部の小川孝志氏および鈴木真美子氏に深謝いたします.また,挫折しそうになった時に励ましてくれた家族なしに,本書は完成しませんでした.改めて感謝の意を表したいと思います.
2021年7月,コロナ禍の終息を願いつつ…
大坂顯通
目次
I 医師編
1.分野別
1-1.分野共通〈大坂顯通〉
Q001 輸血療法において医師が果たすべき役割とは何か
Q002 輸血を安全に行うためにどのような院内体制が必要か
Q003 輸血を行うためにインフォームド・コンセントは必要か
Q004 病院の事務部長から輸血管理料を取得できないかと言われた
Q005 輸血療法委員会の議題は「輸血療法の実施に関する指針」の改正であった
Q006 病院の事務部長から合同輸血療法委員会に出席するように言われた
Q007 血液型検査を依頼したら判定保留の結果が返ってきた
Q008 患者家族から生後1カ月の子どもの血液型を調べてほしいと言われた
Q009 輸血の説明中に,患者から放射線を照射した血液製剤を輸血しても大丈夫かと言われた
Q010 輸血を予定している患者の入院時検査で寒冷凝集素が強陽性と判定された
Q011 輸血部門の臨床検査技師から輸血オーダを修正するように言われた
1-2.外科系〈大坂顯通〉
Q012 手術用準備血は十分過ぎるほど用意すべきか
Q013 手術用準備血はすべて交差適合試験を済ませたものを用意するのか
Q014 手術予定日前日に,患者の不規則抗体が陽性であることが判明した
Q015 指導医から院内採血の新鮮血を申込むように言われた
Q016 手術に際して,輸血は行わないでほしいと言われた
Q017 自分の血液で手術をしたいと言われた
Q018 自己血を800mL貯血した患者の輸血の申込みに際して,手術用準備血は自己血製剤のみオーダすれば良いか
Q019 Hb値9.0g/dLと貧血を認めるが,自己血貯血を行うことは可能か
Q020 自己血の採血中に,患者の顔が青ざめ冷汗が出てきた
Q021 自己血を800mL貯血したが,予定した手術日が延期になった
Q022 自己血貯血を行った患者が他院で手術をすることになった
Q023 回収式自己血輸血はどのように行うのか
Q024 希釈式自己血輸血は有効か
Q025 輸血中に患者がショック状態に陥った
Q026 人工呼吸器装着中の患者で,輸血開始後に尿道カテーテルから赤褐色尿が出現した
Q027 輸血後10日目の患者に貧血と血尿が出現した
Q028 輸血後に血液生化学検査で血清カリウム濃度が増加した
Q029 アフェレーシス中に患者が口のしびれを訴えた
1-3.内科系〈大坂顯通〉
Q030 鉄欠乏性貧血の患者(Hb値6g/dL)に赤血球輸血を行う適応はあるか
Q031 血液透析中の腎不全患者で貧血が進行した
Q032 血小板輸血の際に,赤血球輸血と同様にABO血液型は一致させるべきか
Q033 血小板数5万/μLの患者で血小板輸血の適応はあるか
Q034 特発性血小板減少性紫斑病の患者に血小板輸血を行うことは適切か
Q035 血栓性血小板減少性紫斑病の患者に血小板輸血を行うことは適切か
Q036 劇症肝炎の患者が入院して血漿交換を行うことになった
Q037 輸血感染症のリスクは血漿分画製剤と新鮮凍結血漿で違いはあるか
Q038 非代償期肝硬変患者にアルブミン製剤を投与する適応はあるか
Q039 輸血依存性の患者で注意すべきことは何か
1-4.その他の輸血療法〈大坂顯通〉
Q040 小児に対する輸血療法は成人の輸血療法と違いはあるか
Q041 妊娠時の感染症検査でHTLV-Iが陽性と判定された
Q042 重症黄疸の新生児が入院した
Q043 外来経過観察中の妊婦が超音波検査で胎児水腫が疑われた
Q044 新生児の貧血が進行した
Q045 感染症を併発した好中球減少症患者に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与したが好中球数が増加しない
2.シチュエーション別
2-1.手術・大量出血関連
Q046 胸部大動脈瘤の手術が予定された.輸血はどのように準備すればよいか〈塩野則次〉
Q047 68歳男性,血尿を主訴に来院.膀胱がんと診断され,膀胱全摘除術と回腸導管による尿路変向術が予定されている.既往歴に高血圧があり,カルベジロールを内服している.術前Hb値は7.2g/dLと貧血を認めるが,その他症状や異常所見なし.本患者の術前に赤血球輸血は必要であるか〈岡田尚子〉
Q048 肝がん合併肝硬変患者が肝がん摘出手術を行うことになった.術前より凝固障害と血小板減少を認めているが,術前〜術中のFFPおよび血小板輸血はどのように行うべきか?〈山本晃士〉
Q049 75歳女性,150cm,45kg,術前値Hb 11.0g/dL.頸胸椎側弯症の診断で,第7頸椎から第8胸椎の脊椎固定術を施行中である.予定している固定部位の半分まで手術が進行した時点で出血量が1,000mLを超え Hb値は6.9g/dLまで低下した.どの時点で輸血を開始すべきか? 出血量がどの程度増加したらFFP 投与を行うべきか〈岡田尚子〉
Q050 76歳男性,胃がんに対して胃全摘術が予定されている.既往歴として,大動脈弁閉鎖不全症に対する生体弁置換術と術後感染による再置換術があり,2度の輸血歴がある.不規則抗体(抗E抗体)が陽性である.一般的に,胃全摘術の出血量が 300gである病院であれば,輸血オーダはタイプ&スクリーン(T&S)である.本症例の輸血オーダはT&S で良いか〈岡田尚子〉
Q051 48歳女性,大量の吐血によるショック状態の患者が搬送されてきた.ただちに血液型検査とパイロット採血を行い,緊急輸血を開始した.その後,血液型はA型,RhD陽性であったが,不規則抗体スクリーニング検査において不規則抗体の存在が疑われた.輸血はどのように行うべきか〈塩野則次〉
Q052 心臓血管外科手術中にAB型RhD陰性の患者が大量出血を起こして緊急で大量の輸血が必要となった.どのような輸血対応を取るべきか〈山本晃士〉
Q053 常位胎盤早期剥離,胎児徐脈のため緊急帝王切開手術(NICE 分類カテゴリー1:超緊急手術)の申込みがあった.外出血は少なく,超音波画像で胎盤肥厚が認められた.出血量が多くないにもかかわらず産科医は FFPを投与するよう指示した.現時点で FFP の投与は必要ないのではないか〈岡田尚子〉
Q054 腹腔内の手術後,ドレーンから淡血性液の漏出が続いており,軽度の血小板減少(10万/μL弱)とPT, APTT値の軽度延長(50%前後)を認めている.どのような輸血対応を取るべきか?〈山本晃士〉
Q055 まれな血液型の患者で,膝の人工関節置換術を計画している.自己血輸血は可能か〈塩野則次〉
Q056 自己血貯血において,400mLの採血バッグに半分程度しか採血できなかった.使用しても良いか〈大坂顯通〉
2-2.内科関連
Q057 がん患者の化学療法後に生じた貧血に対して,赤血球輸血の適応となるHb値はどれくらいか〈加藤栄史〉
Q058 がん患者の化学療法後に生じた血小板減少症に対して,血小板輸血の適応となる血小板数はどれくらいか〈加藤栄史〉
Q059 痔核の慢性的な出血により生じた貧血は,赤血球輸血の適応となるか〈加藤栄史〉
Q060 播種性血管内凝固(DIC)を併発した白血病患者の血小板減少症は,血小板輸血の適応となるか〈加藤栄史〉
Q061 敗血症患者が3万/μL以下の高度な血小板減少とPT, APTT値の延長を呈していた.FFPおよび血小板輸血はどうすべきか?〈山本晃士〉
Q062 28歳女性,初産婦,非妊娠時の体重50kg,既往歴に特記すべきことなし.妊娠26週に血小板数4.4万/μLと低値を指摘され,血液内科にコンサルトされた.妊娠28週に血小板数2.8万/μLとさらに低下したため副腎皮質ステロイド剤による治療を開始した.その後,血小板数の増減を繰り返すため免疫グロブリン大量療法を施行したが反応が悪く,妊娠35週(58kg)には血小板数2万/μLとなり,血小板製剤10単位を輸血して 4.8万/μL まで増加した.この血小板数の増加は想定通りか〈岡田尚子〉
2-3.輸血副作用・合併症関連
Q063 赤血球輸血中に38℃以上の発熱が発症した.輸血は中止するべきか〈加藤栄史〉
Q064 血小板製剤を輸血中に38℃以上の発熱が発症した. 輸血は中止するべきか〈加藤栄史〉
Q065 輸血開始後じんま疹が出現した.どうのように対処すれば良いか〈熊川みどり〉
Q066 FFP-480 1パックを輸血後しばらくして,患者が呼吸苦を訴え始めた.何を考え,どのような治療を行うべきか〈山本晃士〉
Q067 輸血中に患者から血尿がみられた.輸血との関係はあるか〈熊川みどり〉
Q068 輸血しすぎて問題になることはあるか〈塩野則次〉
2-4.その他
Q069 過誤輸血はどのような場合に疑われるか.またそのような場合にはどう対処すれば良いか〈熊川みどり〉
Q070 25歳男性,多発交通外傷にて搬送された.持続する腹痛を訴える.血液型,血算,血液生化学検査,血液ガス検査が行われた.血液型オモテ検査とウラ検査の結果不一致が報告された.腹腔内出血のため緊急手術となった.血液型検査でオモテ検査とウラ検査の結果不一致の場合どう対応するのか?〈塩野則次〉
Q071 血液型不明の患者が出血性ショックの状態で搬送されてきた.どのような輸血対応を取るべきか〈山本晃士〉
Q072 血液型検査の結果,本人の記憶とは異なるABO血液型だといわれた〈大坂顯通〉
Q073 赤血球製剤は室温に戻してから輸血すべきなのか,冷たいままでも良いのか〈大坂顯通〉
Q074 赤血球製剤を室温に放置したことが翌日に判明した.そのまま使用しても良いか〈大坂顯通〉
Q075 他院から血液バッグも一緒に患者が搬送された.その血液製剤は使用しても良いか〈大坂顯通〉
Q076 血小板輸血を行ったが血小板数が増加しない.どのように対処すべきか〈大坂顯通〉
Q077 腹水を伴う肝硬変患者において,血清アルブミン値(1.9g/dL)と低い場合にアルブミン製剤投与の適応となるか〈加藤栄史〉
Q078 輸血のルートはどこから確保すれば良いか.またその際に針はどの位まで細くても大丈夫か〈熊川みどり〉
Q079 輸血用血液はどれ位の速度で輸血すべきか〈熊川みどり〉
II 看護師編〈大坂顯通〉
Q080 輸血療法において看護師が果たすべき役割とは何か
Q081 輸血を行う患者にリストバンドの装着は必要か
Q082 輸血の準備に際して,効率を重視して2人分をまとめて準備しても大丈夫か
Q083 輸血の準備中に,ABO血液型の結果はあったが不規則抗体スクリーニングの結果は不明であった.そのまま輸血を行っても大丈夫か
Q084 輸血の準備に際して,点滴セットを使用しても良いか
Q085 赤血球製剤の外観をチェックしたら黒みを帯びていた.輸血を行っても大丈夫か
Q086 血小板製剤が病棟に届いたが,患者がMRI検査のため病棟におらず3時間後に病棟へ戻ってきた.そのまま輸血を行っても良いか
Q087 輸血ルートは他の輸液剤のルートと共有しても大丈夫か
Q088 輸血実施前に患者のバイタルサインをチェックすることは必要か?
Q089 ベッドサイドにおいて,看護師1人で輸血を行っても良いか
Q090 「輸血療法の実施に関する指針」で謳われている「2人による読み合わせ確認」はどのような項目をチェックすべきか
Q091 輸血前のダブルチェックに際して,2人の看護師が同時にチェック項目を読み合わせて確認した.手技として問題ないか
Q092 携帯端末(PDA)を使用する電子照合は行う必要があるのか
Q093 輸血開始後は,何を念頭において患者観察を行えば良いのか
Q094 夜勤帯で看護師が少ないが,医師から輸血を開始するように言われた
Q095 輸血検査用患者検体の採血で過誤が生じた場合,通常検体の採血よりもリスクは高いか
Q096 解凍後3時間以上経過した新鮮凍結血漿を使用しても良いか
Q097 病棟で保管していた新鮮凍結血漿が破損した
Q098 すべての血液製剤に白血球除去フィルターを使う必要はあるか
Q099 輸血部門の臨床検査技師から,輸血の実施手順を確認したいと言われた
Q100 小児科病棟で赤血球輸血の準備中,処置室でシリンジに血液を引き,残血の血液バッグは処置台に置いておいた.手技として問題ないか
ミニキーワード集〈大坂顯通〉
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書籍情報
- ISBN:9784498019300
- ページ数:174頁
- 書籍発行日:2021年8月
- 電子版発売日:2021年7月28日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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