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- てんかんの薬物療法 改訂版~効果的な治療薬選択のために
商品情報
内容
新しい抗てんかん薬を適切に使用すれば70%の患者で発作が抑制されると報告されています。エキスパートの抗てんかん薬の特質、副作用、適切な使い方の理解を深め,治療効果が高まる1冊。
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序文
改訂の序
早いもので,本書の初版が出版されてからはや10 年になる。本邦にはこの間に,ラコサミド,ペランパネルが新たに上市された。初版で記載された各抗てんかん薬の多くの項目に,この改訂版では10 年間の治験結果,体験が加味され,情報が豊かになり,かつそれぞれが整理され,一層,読みやすくなっている。さらには各抗てんかん薬の効果に加えて,てんかんとは別の新たな疾患にも使用される状態になってきた。例えば,ゾニサミドは幅広いてんかん類型に効果を示す一方,最近ではパーキンソン治療薬としても使用頻度が高まっている。このような各抗てんかん薬の特質から,新たな疾患への展開だけでなく,抗てんかん薬の副作用,使い方への理解が一層深まり,てんかん治療の効果が高まってきている。新しい抗てんかん薬を正しく用いると約70%の患者で発作が抑制されると報告されており,我々もそう実感している。
本改訂版では,新たに導入されたラコサミド,ペランパネルの詳細が追加されている。ラコサミドはナトリウムイオンに関連するが従来の抗てんかん薬とは作用点が異なり,パランパネルはグルタメート阻害薬で,まったく新しい作用機序をもつ。作用機序が異なる抗てんかん薬はこれまでの抗てんかん薬で十分な効果が得られなかった症例に対して,従来の薬剤に併用もしくは従来の抗てんかん薬を新薬に切り替えをすることで,より高い発作抑制効果を期待できる。
臨床家は「てんかんの治療は発作がなく,治療による副作用もない状態」をめざして治療しているが,その先の目標として患者の最高の機能獲得,つまり生活の質(QOL)の向上をめざしているのである。QOL 向上には抑うつ状態にあるか否か,薬の副作用が存在するかなどが関与するが,最も寄与するのは発作の完全抑制の有無である。
本書では各抗てんかん薬の特徴を素早く理解できるように図,表を多く使用し,てんかん治療の基本,薬剤の効果・副作用発生の基本を探求する臨床薬理,薬剤選択,そのための各抗てんかん薬の作用機序の特徴のまとめ,抗てんかん薬の使い方などに章を割いている。これらの構成は読者層を考えて検討された。
初版はてんかん治療に携わる医師向けに書かれたが,改訂版である本書は読みやすく,多くの方々にも利用いただけるように書かれている。もちろん,てんかんを治療している臨床家だけでなく,看護者,薬剤師,臨床薬理学研究者,基礎薬理学者,大学院生を含めた学生,医療関係の教育に携わる方々,学校関係者の方々にもお役に立てるものと考えている。治療を受けているてんかんを持つ患者ご自身とそのご家族にも「この薬はどのような効果や副作用があるのか」の理解ができるように各実薬の写真がカラーで収載されており,薬剤名を知ることができ,専門知識がなくても十分に理解できるように配慮された部分が多い。各章には厳選された文献も引用されているため,専門家の使用にも耐えうる。新たに2 つの抗てんかん薬を加えて,現時点での抗てんかん薬についての最新の内容をまとめた本書が多くの方々に役立ち,てんかん診療向上に少しでも貢献出来ることを願っている。本書の読者の方々から,内容に関する忌憚のないご批判,ご意見を頂ければ執筆者一同,大変幸甚です。
令和3年7月吉日
湊病院北東北てんかんセンター
兼子 直
目次
第1章 抗てんかん薬の作用機序
A ゾニサミド(zonisamide:ZNS)
1.ZNSの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.ZNSの作用機序
B ガバペンチン(gabapentin:GBP)
1.GBPの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.GBPの作用機序
C トピラマート(topiramate:TPM)
1.TPMの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.TPMの作用機序
D ラモトリギン(lamotrigine:LTG)
1.LTGの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.LTGの作用機序
E レベチラセタム(levetiracetam:LEV)
1.LEVの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.LEVの作用機序
F ラコサミド(lacosamide:LCM)
1.LCMの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.LCMの作用機序
G ペランパネル(perampanel:PER)
1.PERの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
2.PERの作用機序
第2章 臨床薬理学的側面からみた第二世代抗てんかん薬の特徴
A 第二世代抗てんかん薬の薬物動態学的特徴
1.ガバペンチン(gabapentin:GBP)
2.トピラマート(topiramate:TPM)
3.ラモトリギン(lamotrigine:LTG)
4.レベチラセタム(levetiracetam:LEV)
5.ゾニサミド(zonisamide:ZNS)
6.ペランパネル(perampanel:PER)
7.ラコサミド(lacosamide:LCM)
B 第二世代抗てんかん薬の有害事象
C 第二世代抗てんかん薬の投与設計と有効血中濃度域
D 第二世代抗てんかん薬の薬理遺伝学
第3章 てんかん薬物療法の概要と課題
A てんかん薬物療法の流れ
B AED単剤療法の意義と限界
1.単剤療法(monotherapy)のメリット
2.AED単剤治療による治療効果の概要
3.いわゆる新規AEDによる単剤療法の意義
C AED療法の限界と難治性(薬剤抵抗性)てんかん(refractory or drug-resistant epilepsy)
1.難治性てんかん(薬剤抵抗性てんかん)とは?
2.薬剤抵抗性発現に関連するてんかんの分子病態
D 多剤併用療法(polytherapy)の意義と限界
1.AED変更(switch)か付加投与(add-on)か?
2.AED変更時のtransitional polytherapy
3.合理的な多剤併用療法(rational polytherapy)とは?
E AED療法の限界
1.いかなる段階でAED療法の限界を判断するか?
2.多剤併用は単剤療法よりも効果があるのか?
3.新規AEDの付加による多剤併用の有用性について
F AED療法の限界の克服に向けて
第4章 ガバペンチンのてんかん治療における意義
A ガバペンチンの薬理学的特性
B ガバペンチンの有効性
1.成人の難治焦点てんかんに対する有効性
2.成人の焦点てんかんに対する単剤療法
3.高齢発症てんかんに対する治療効果
4.全般てんかんに対する治療効果
5.てんかん治療ガイドラインにおけるGBPの位置付け
C ガバペンチンの副作用
D ガバペンチンの使用上の留意点
E てんかん治療におけるガバペンチンの意義
第5章 トピラマートのてんかん治療における意義
A トピラマートの薬物動態
B トピラマートの薬物相互作用
C トピラマートの副作用
D トピラマートの用法・用量
E 海外の診療ガイドラインにみる本剤の位置づけ
F 各種てんかん発作ならびにてんかん症候群に対する有効性
1.成人難治焦点てんかんに対する有用性
2.単剤療法の有効性
3.特発性全般てんかんに対する効果
4.小児のてんかん
5.てんかん性脳症に関する効果
G てんかん以外の有効性
第6章 ラモトリギンのてんかん治療における意義
A ラモトリギンの標的症状
1.薬効の広域性と単剤療法の可能性
2.抗うつ効果
B ラモトリギンの臨床上の特徴
1.有効性と忍容性
2.薬剤相互作用と半減率
C ラモトリギンの副作用
1.薬疹
2.妊娠・出産時
3.認知機能
4.体重変化
D ラモトリギンの使用上の留意点
第7章 レベチラセタムのてんかん治療における意義
A レベチラセタムの有効性
1.成人の焦点てんかんに対する有効性
2.小児の焦点てんかんに対する有効性
3.高齢者の難治性焦点てんかんに対する有効性
4.特発性全般てんかん(IGE)に対する有効性
5.その他の病態・疾患・症候群に対する有効性
6.他のAEDとの比較
7.発作の逆説的増加
8.QOLに対する有効性
9.てんかん以外の病態に対する効果
B レベチラセタムの効果発現までの時間差・効果の持続
C レベチラセタムの用量・効果関係
D レベチラセタムの安全性
1.副作用
2.精神・行動面への影響
3.妊娠・授乳への影響
第8章 ゾニサミドのてんかん治療における意義
A ゾニサミドの有効成分に関する理化学的知見
B ゾニサミドの作用機序と薬用量
C ゾニサミドの副作用
D ゾニサミドの小児てんかんにおける有効性
E 成人における二重盲検試験
F ウエスト症候群におけるゾニサミドの有用性
G てんかん性無呼吸発作におけるゾニサミドの有用性
H レノックス・ガストー症候群と大田原症候群
第9章 ペランパネルのてんかん治療における意義
A ペランパネルの開発経過
B ペランパネルの作用機序
C ペランパネルの薬理学的特性
1.AMPA受容体とGluA2サブユニット
2.ペランパネルの薬理学的特性
D ペランパネルの薬物動態・血中濃度・副作用
1.薬物動態
2.副作用
3.副作用の出現時期
E ペランパネルの有効性
1.併用療法
2.単剤療法
3.有効性が指摘されているてんかん類型
F ペランパネルの薬物相互作用
G ペランパネルの使用方法
H ペランパネルの使用上の留意点
I ペランパネルに期待される効果
第10章 ラコサミドのてんかん治療における意義
A ラコサミドの薬物動態・薬物相互作用
B ラコサミドの用法および用量
C ラコサミドの有効性
1.焦点発作
2.全般発作
D ラコサミドの副作用
E ラコサミドの精神面への作用
1.てんかん患者に対するLCMの精神面への作用
2.双極性障害患者に対するLCMの精神面への作用
F ラコサミドの認知機能への影響
G 今後の展望・課題
第11章 これからの抗てんかん薬の使い方
A 薬剤選択
1.作用機序が異なり,同じような副作用を発現しないAEDを選択する
2.現在処方中の薬剤との相互作用を考える
3.AED併用による効果を考える
B 患者治療の最終目標は患者のQOLを最大限にすること
C てんかん以外の疾患に対する使用
D 焦点発作に使用可能なAEDの特徴
E ペランパネルの2段階療法
F これからのAED選択
索引
巻末資料:抗てんかん薬
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書籍情報
- ISBN:9784880029122
- ページ数:220頁
- 書籍発行日:2021年8月
- 電子版発売日:2021年8月6日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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