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  • 外来で診る子どもの発達障害~どこまでどのように診るか?

外来で診る子どもの発達障害~どこまでどのように診るか?

  • ページ数 : 297頁
  • 書籍発行日 : 2021年8月
  • 電子版発売日 : 2021年8月6日
4,620
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商品情報

内容

非専門医がフォローすべき範囲や専門医紹介の基準・タイミング,教育現場との連携など,小児の発達障害診療を行うための実践的なコツを豊富なケーススタディで解説.子どもや家族との寄り添い方が学べる実践書!

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序文

はじめに


「発達障害をかかりつけ医のものにしよう!」が本書のコンセプトです.

発達障害が社会に広く認知されるにつれて,発達が気になる子どもたちは早期から医療を受診するようになりました.今では,「気になる子ども=発達障害かもしれない子ども」が5%以上存在すること,医療的介入により人生の質が改善することがわかっています.子どもの発達に関する医療ニーズは今後も増えていくでしょう.

しかし,発達障害を診る医師は多くありません.そのため数少ない専門医/専門機関に受診が集中し,初診まで6カ月かかったり,自宅から数時間かかる遠方まで通わざるを得ない子どももいます.家から近く,気心のしれたかかりつけ医に発達の相談ができたらどんなに安心でしょうか.2015年にDartmouth 大学のProf.Donnelly は「発達障害は,まずかかりつけ医が対応し,難しい子どもを専門医に紹介する疾患になりつつある」と話してくれました.今,日本でもその動きが本格化しています.発達障害は,かかりつけ医が外来で診るCommon Disease(ありふれた疾患)になっていくと考えられます.

とは言うものの,発達障害診療には独特の難しさがあります.筆者は,2009年から小児科専攻医や家庭医診療科の医師と一緒に発達障害を診療してきましたが,勉強熱心な彼らも最初は発達障害診療に戸惑っていました.

そもそも発達障害が疾患なのか,人類の多様性なのかという議論もあります.実際の診療では「子どもの人生を扱う」側面が強く,普段の「病気を治す」治療のように単純に割り切れない場面にも遭遇します.同じ診断でも一人一人の特性や環境に合わせて介入を調整しなければいけません.薬物だけでは問題は解決しませんし,学校や地域の他職種と連携が必要です.専門医/専門機関への紹介も決まった基準はありません.こうした「いつもの診療とは違う」感覚は,専攻医だけでなくすべての医師が感じることでしょう.

発達障害がCommon Disease になったとしても,かかりつけ医が発達障害をどこまで,どのように診るのか,課題は山積みです.


本書は,こうした疑問に応えることを目指しています.発達障害を専門としない医師や医療スタッフに向けて解説しましたが,学校の先生など医療と連携する職種,あるいは医療に発達の相談をしようとしている家族にも読んでもらいたいと思います.

第1章では,「こんな相談をされたらどうする?」と題して12のよくある症候について,評価方法と鑑別疾患,初期対応を解説しました.第2章「これだけは知っておこう」では,自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如・多動性障害(ADHD),知的能力障害(ID)の基礎知識と検査・診断・薬物を含めた具体的な治療介入の方法と原則を記載しました.また,第1章・第2章では専門医紹介の目安を明示しています.

第3章では効率的な情報収集と子どものアセスメントを紹介します.発達障害診療は,つい焦点がぼやけてしまいがちですが,自分なりの発達障害診療の「型」を作ると診療がスムースになります.「型」の一例として参考になれば幸いです.

第4章は,発達障害診療に欠かせない地域連携を取り上げました.ソーシャルワーカー,学校の先生,家族会,外来看護師など連携のパートナーから意見をいただき,実りある連携のコツを紹介します.

第5章は子どもの成長を扱います.親離れ/子離れ,子ども本人への告知,進路相談,成人診療科へのトランジションについて考えましょう.

わかりやすさを追求するため,すべてのテーマでCaseを提示しました.そのため,どうしても説明表現や治療方針に筆者の考え方や診療スタイルが反映されています.中には首をかしげたくなる箇所があるかもしれませんが,人生そのものを扱うという発達障害診療の性質上,様々な診療スタイルがあり,本書はその一例を紹介したものとご理解ください.


本書では,かかりつけ医の範囲を超える内容は思い切って割愛しています.例えば,DSM-5の診断基準を満たす「神経発達症(Neurodevelopmental Disorder)」と,その周辺にいる「発達特性を持つ子ども」を合わせて「発達障害」として扱っています.かかりつけ医の外来では,診断よりも子どもと家族の困難や支援の必要性に応じて対応することが現実的だからです.

また,DSM-5の神経発達症のうち自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如・多動性障害(ADHD),知的能力障害(ID)のみを扱っています.かかりつけ医の外来では実施困難な網羅的な評価,専門的な療育や学習指導,治療プログラムも除外したことをご了承ください.

本書が発達障害診療のきっかけになり,「発達障害を,この町で,いつもの先生に診てほしい」という子どもと家族の声に応えられるかかりつけ医が増えてくれたら望外の喜びです.


2021年7月

市河茂樹

目次

はじめに/市河茂樹

第1章 こんな相談をされたら,どうする?~発達障害で見られる症候と初期対応~/市河茂樹

0 発達の相談をされたら ~ Universal Approach ~

1 「言葉が出ません/保育園で“言葉が遅れている”と言われました」

2 「発達障害じゃないでしょうか」

3 「コミュニケーションが苦手みたいです」

4 「人の話を聞きません/言うことが伝わりません」

5 「多動です/集中力がないようです」

6 「集団行動が苦手なようです」

7 「感覚が過敏/鈍いみたいです」「不器用/運動が苦手です」

8 「こだわりが強いです」

9 「乱暴で困ります」

10「勉強が苦手みたいです」

11「行動の切り替えができない/時間の概念が乏しいようです」

12「就学相談の判定について医学的な意見を聞きたい」

第2章 外来で相談にのる前にこれだけは知っておこう/市河茂樹

1 自閉スペクトラム症(ASD)の基礎知識

2 注意欠如・多動性障害(ADHD)の基礎知識

3 知的能力障害(ID)の基礎知識

4 非専門医でも発達障害を診断できる? ~検査と診断を考える~

5 発達障害診療の原則

6 薬物治療はどうする?

7 外来で使える基本的な介入スキル

第3章 発達障害の初期診療~診療の型を作ろう~/市河茂樹

1 「気になる子ども」を見かけたら

2 初回診察 ~効率的な情報収集~

3 発達障害診療もSOAP ~アセスメント~

4 家族への説明

5 具体的な治療的介入とアセスメントの見直し

第4章 地域で発達障害を診る~発達障害診療の「道」を作ろう~

1 発達障害児にソーシャルワーカーができること/大森 匠

2 発達障害診療における外来看護師の視点/〆野文子

3 教育と医療の連携① ~医療の立場から~/市河茂樹

4 教育と医療の連携② ~教育の立場から~/押元香織

5 発達障害の家族会/〆野文子

6 多職種の連携と役割分担/市河茂樹

第5章 発達障害診療は続いていく/市河茂樹

1 初期診療と定期通院

2 発達外来を覗いてみよう ~子どもへの告知~

3 大人になる準備 ~発達障害診療のギアチェンジ~

4 成人診療科への移行(トランジション)

付録

1 家族向け発達問診票

2 学校向け発達問診票

3 家族向け説明文

a「 言葉が遅いかな?」と思ったら? おうちでできる言葉の発達を促す方法

b コミュニケーションが苦手かな? と思ったら

c「わかりやすい生活」のススメ

d「ほめる/無視する/制止する」のススメ

e「トークンエコノミー」やってみませんか

f「かんしゃくにタイムアウト」

巻末資料

1 小児の発達早見表

2 小学校の学年別学習内容

3 発達障害児に関わる主な社会福祉制度


あとがき /市河茂樹

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書籍情報

  • ISBN:9784758123785
  • ページ数:297頁
  • 書籍発行日:2021年8月
  • 電子版発売日:2021年8月6日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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