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INTESTINE 2021 Vol.25 No.3 炎症性腸疾患の分子標的治療を総括する
- ページ数 : 98頁
- 書籍発行日 : 2021年9月
- 電子版発売日 : 2021年10月6日
商品情報
内容
これだけ多くの分子標的薬を治療選択肢として手にすると,それぞれの薬剤について作用機序,治療効果,副作用,そして製剤の特徴について理解したうえで使い分ける必要がある.本特集では,各分子標的薬についてエキスパートの先生に解説していただいた.(編集後記から抜粋)
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序文
序説 炎症性腸疾患に対する分子標的治療
炎症性腸疾患(IBD)の基本的な治療薬は5-アミノサリチル酸製剤とステロイド,クローン病ではそれに加えて栄養療法があるが,近年多くの生物学的製剤や低分子化合物が開発され,実臨床で使用することが可能になっている.その「先駆け」というべき製剤が抗tumor necrosis factor(TNF)-α抗体製剤であり,2002 年にインフリキシマブがクローン病に使用されるようになってから,治療の基本的戦略が大きく進歩を遂げている.抗TNF-α抗体製剤の登場により,それまでの治療に比べて速やかな治療効果が得られ,症状だけではなく内視鏡的にも早期に改善が得られるようになった.この速やか,かつ確実な治療効果によりmucosal healing,deep remission といった,抗TNF-α抗体製剤が登場する前には存在しなかった用語が使われるようになり,現在では内視鏡的な改善・治癒が治療目標として掲げられるようになっている.その後TNF-αを含めたIBDの病態に関連した多くの分子を標的とした治療法の開発が急速に進んでおり,腸管粘膜の炎症を惹起・持続させるサイトカインやシグナル伝達を阻害する薬剤や,腸管血管内皮細胞に接着する分子をターゲットとした治療薬などが実用化されている.
近年多くの生物学的製剤や低分子化合物が保険適用となり,また今後も新規治療法が実臨床で使用することが可能になると考えられるが,実際に治療効果や効果のスピードは中等症から重症の基本的な治療薬であるステロイドと比べ優れているのだろうか? 表は潰瘍性大腸炎に対する,生物学的製剤や低分子化合物の短期的寛解導入率を示したものである.寛解導入の定義が各試験で異なっているため一概にはいえないが,多くの製剤の寛解導入率は20~30%程度と決して高くない.難治例に対して使用されていることを考慮すれば治療効果が得られない症例も少なからず存在することも理解はできるが,寛解導入率だけでなく,治療のスピードも必ずしも速やかではない場合もある.IBD の治療ターゲットに関する概念をまとめた論文(STRIDE-Ⅱ)では1),グローバルなIBD 専門医から構成されるInternational Organizationof Infl ammatory Bowel Disease (IOIBD)のコンセンサスについて記載されているが,クローン病に対する近年開発された製剤の期待される寛解導入までの期間は2~3 カ月であり,決して「即効性」の高い治療法とはいえない製剤も多く含まれているとされ,この点に留意する必要がある.
また抗TNF-α抗体製剤では治療早期は高い治療効果を示すものの,中長期的に治療効果が減弱・消失する二次無効例が存在することも問題となっており,薬物濃度の低下や薬物抗体産生が二次無効の原因であることが報告されている.ウステキヌマブやベドリズマブなどの抗TNF-α抗体製剤以外の生物学的製剤では薬物抗体の発現率が低いものの,トラフ濃度と治療効果との関係を示す報告がなされており,血中トラフ濃度や薬物抗体測定の重要性が指摘されている.しかし本邦ではトラフ濃度や薬物抗体を測定することは困難であり,研究の成果が実臨床で生かされているとは言い難い.またインフリキシマブは免疫調節薬の併用が薬物抗体産生を低下させること,ウステキヌマブやベドリズマブではその意義が少ないことが報告されているが,生物学的製剤を導入する前に免疫調節薬がすでに使用されていることも少なからずあり,このような症例ではすでに使用されている免疫調節薬を継続するか否かについては明確な結論は得られていない.
本企画では炎症性腸疾患に対する分子標的薬に関して,第一線で活躍されている先生方に執筆を依頼させていただいた.本号で生物学的製剤や低分子化合物に対する一般的な知識から最近の知見までを把握することができると考えているが,上述したような課題や問題点があることもご理解いただきながら一読いただければ幸いである.
文 献
1) Turner D, Ricciuto A, Lewis A, et al:STRIDE-Ⅱ:An update on the selecting therapeutictargets in inflammatory bowel disease(STRIDE) Initiative of the International Organizationfor the Study of IBD (IOIBD):Determiningtherapeutic goals for treat-to-targetstrategies in IBD. Gastroenterology 2021;160:1570-1583
長沼 誠
(関西医科大学内科学第三講座)
目次
特集 炎症性腸疾患の分子標的治療を総括する
序説:炎症性腸疾患に対する分子標的治療 長沼 誠
Ⅰ.炎症性腸疾患の内科治療指針を総括する 中村 志郎他
Ⅱ.生物学的製剤・低分子化合物の作用機序 小林 拓
Ⅲ.抗TNF-α抗体製剤 河本 亜美他
Ⅳ.接着分子阻害薬─ ベドリズマブの特性を生かしたIBD 治療 櫻庭 裕丈他
Ⅴ.炎症性腸疾患におけるウステキヌマブ治療 松岡 克善
Ⅵ.JAK 阻害薬 櫻井 俊之他
Ⅶ.生物学的製剤と Treat to Target( T2T) 志賀 永嗣 他
Ⅷ.外科手術患者に対する生物学的製剤の実際 内野 基他
Ⅸ.現在開発中の生物学的製剤・低分子化合物 松浦 稔他
Ⅹ.生物学的製剤・低分子化合物と悪性腫瘍 大森 鉄平他
Ⅺ.生物学的製剤・低分子化合物使用患者に対するワクチン接種 遠藤 克哉他
Ⅻ.生物学的製剤・低分子化合物使用患者と妊娠・出産 渡辺知佳子
XIII.特異的分子標的薬使用患者におけるCOVID-19 リスクについて 仲瀬 裕志
TOPICS
─文献紹介〈腫瘍関連*〉
内視鏡的切除後大腸T1 癌のリンパ節転移の有無を術前予測し,追加外科手術の必要性を判断する人工知能システムの開発 工藤 進英他
小腸カプセル内視鏡画像診断支援─深層学習システムとQuickView mode の比較 青木 智則他
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書籍情報
- ISBN:9784004202503
- ページ数:98頁
- 書籍発行日:2021年9月
- 電子版発売日:2021年10月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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