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CLINICAL NEUROSCIENCE Vol.40 2022年5月号 片頭痛診療のパラダイムシフト

  • ページ数 : 144頁
  • 書籍発行日 : 2022年5月
  • 電子版発売日 : 2022年4月22日
2,970
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商品情報

内容

日本人の約8%が悩まされているという片頭痛.
患者は仕事や家事に支障をきたす場合も多く,生産性の低下による経済的損失は非常に大きい一方で,患者受診率の低迷,社会の頭痛に対する認識の低さ,予防治療の欠如など片頭痛診療の課題は多いとされます.
しかし2021年以降,抗CGRPモノクローナル抗体薬をはじめとする新薬の登場や,刷新された「頭痛の診療ガイドライン2021」など,片頭痛診療は新たなステップに立ったと言えます.その現在と未来を展望する特集です.

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序文

片頭痛診療のパラダイムシフト


日本人の約8%が片頭痛に悩まされているとされている.片頭痛は重症化すると動くのもつらくなり,仕事や家事に支障をきたす場合も多い.すなわち片頭痛は患者のみならず患者を取り巻く家庭や社会に目には見えないような負の影響を及ぼしている.そして患者数も膨大なため,生産性の低下などによる社会全体としての経済的損失はかなり大きい.米国では,片頭痛による経済的な損失が1年で130億ドル(約1兆5000億円)にのぼるという試算がある.ちなみに,わが国の頭痛による生産性の低下による経済的損失は毎年2,880億円にのぼると試算されている〔第12回国際頭痛学会(2005年)〕.

2000年にわが国でトリプタンの使用が開始され,片頭痛の急性期治療に画期的な進歩がもたらされた.しかし,現状はどうかというと,それから20年以上が経過したが,依然としてトリプタン治療を享受している片頭痛患者の率は極めて低く,現在に至っても片頭痛診療は満足できるレベルに達したとはいえない.患者受診率の低迷,社会の頭痛に対する認識の低さ,そして確固とした予防治療の欠如などがその原因としてあげられている.

しかし2021年に至り,片頭痛診療の流れに2つの大きな変化がみられるようになった.1つは,片頭痛病態におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の役割の重要性に対する認識が高まり,わが国でも2021年に抗CGRPモノクローナル抗体薬および抗CGRP受容体モノクローナル抗体薬が発作予防薬として使用可能となった.また2022年には,急性期治療薬としてセロトニン5—HT1F刺激薬が臨床の場に登場した.そしてさらに,経口抗CGRP受容体拮抗薬が開発されつつある.2つ目は,2013年の初版以後8年の経過を経て「慢性頭痛の診療ガイドライン」が改訂され,「頭痛の診療ガイドライン2021」として刷新され,より充実したものとなり2021年に公表されたことである.

作用機序と効果が確固とした予防治療が開発され,そして,それを含む診療ガイドラインも整備され,片頭痛診療は新たなステップに立ったといえる.本特集では,大きな変化と進展が期待される片頭痛にスポットライトを当てて,片頭痛診療の現在と未来を展望した.また,「頭痛の診療ガイドライン2021」の全容についても解説を設けた.本特集が先進治療に携わっている多くの脳神経領域の実地臨床家の方々に対し頭痛の知識のアップデートと実践に役立てば幸いである.


鈴木則宏

目次

メインテーマ:片頭痛診療のパラダイムシフト

A . 片頭痛診療の変遷と課題

片頭痛病態理論の変遷  竹島多賀夫

片頭痛治療の変遷―急性期治療および予防療法  北川泰久

社会的問題としての片頭痛の変遷  横山雅子 他

片頭痛のアンメットニーズ  椎名智彦 他

B . 新たな片頭痛治療―CGRP 関連片頭痛治療薬

1.カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)とは  鈴木則宏

三叉神経血管説におけるCGRP の位置づけ  清水利彦

2. 抗CGRP モノクローナル抗体・抗CGRP 受容体モノクローナル抗体の特性と臨床効果

ガルカネズマブ(Emgality®)  柴田 護

フレマネズマブ(Ajovy®)  海野佳子

エレヌマブ(Aimovig®)  飯ケ谷美峰

エプティネズマブ(Vyepti®)  永田栄一郎

3.抗CGRP 受容体拮抗薬の特性と臨床効果

ウブロジェパント(Ubrelvy®)  下畑敬子

リメジェパント(Nurtec®)  滝沢 翼 他

アトジェパント(QuliptaTM)  今井 昇

ザベジェパント(BHV‒3500)  松森保彦

C . セロトニン受容体刺激薬の現状と今後の展開

トリプタン治療の現状と展望  立岡良久

ラスミジタン(Reyvow®)  古和久典 他

D . 頭痛診療の新たな拠所―「頭痛の診療ガイドライン2021」の全容

頭痛の診療ガイドライン2021 の概要  荒木信夫

頭痛一般  團野大介

片頭痛―診断・疫学・病態・誘発因子・疾患予後  粟木悦子

片頭痛―急性期治療  菊井祥二 他

片頭痛―予防療法  西郷和真

緊張型頭痛  辰元宗人

三叉神経・自律神経性頭痛  島津智一

その他の一次性頭痛  工藤雅子

薬剤使用過多による頭痛  髙橋牧郎

小児・思春期の頭痛  山中 岳 他

二次性頭痛  橋本洋一郎 他

E . 地域医療・医療連携・遠隔医療における新たな頭痛診療と今後の展望

頭痛と地域医療と医療連携  岩下達雄

頭痛と遠隔医療  寺山靖夫

COVID‒19と頭痛診療  下畑享良

連載

臨床中枢神経生理A to Z

[運動誘発電位 ⑤]脳梁機能と小脳機能  松本英之

臨床医のための神経病理 再入門(編集協力:冨本秀和)

CADASIL  植田明彦

細胞のメカニズムと神経疾患

我が国での神経系繊毛症候群の現状(ジュベール症候群)  伊藤雅之

分子から迫る神経薬理学(編集:櫻井 隆)

GPCRシグナル検出系の開発  川上耕季 他

素顔のニューロサイエンティスト

Robert L. Martuza  河村陽一郎 他

検査からみる神経疾患

Diffusion‒weighted image 高信号からみた神経疾患とその鑑別  原田雅史

ニューロサイエンスの最新情報

感覚刺激により潜在的保護能力を誘導する感覚創薬技術  小早川 高

神経疾患の新しい治療

アルツハイマー病  井原涼子 他

Q & A―神経科学の素朴な疑問

耳の中を触ると咳が出るのはどうしてですか?  堀向健太

BOOK REVIEW

医(メディシン)って何だろう?(岩田 誠・著)  下畑享良

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書籍情報

  • ISBN:9784002104005
  • ページ数:144頁
  • 書籍発行日:2022年5月
  • 電子版発売日:2022年4月22日
  • 判:AB判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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