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- 臨床画像 2022年8月号 特集1:絶対苦手分野にしない 冠動脈の画像診断/特集2:直腸癌のMRIにレポートを付ける前に知っておくべきこと
商品情報
内容
冠動脈の三次元臨床解剖アトラス
失敗しない心臓CT撮影法
直腸癌の画像診断に外科医が求めていること
大腸癌の壁外非連続性癌進展病巣の病理診断 ほか
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序文
序説:特集 1 絶対苦手分野にしない 冠動脈の画像診断
『絶対苦手分野にしない 冠動脈の画像診断』というテーマで,「冠動脈」に対象を絞った特集を企画させていただいた。
放射線科医にとって,心臓の画像診断は“取っ付きにくい”領域かもしれない。専攻医教育の最初の段階では,胸腹部の腫瘍性病変や炎症性病変の画像診断の修得を優先して行う傾向もあると思われる。また,頭頸部,体幹部や四肢の血管造影・IVRは放射線科で施行しているが,心臓カテーテルのほとんどが循環器内科と循環器を専門とする小児科医により行われていることも原因であろう。腹部,表在の超音波は放射線科での標準的な教育項目に含まれるが,心エコーはやはり上記の内科,小児科に任されているのが現状である。
心臓の画像診断は技術的進歩の著しい領域であり,撮影技術が診断能の多くを決定付けてしまう特徴がある。また,漫然と検査を行うと不適切な被ばく量の増加に直結してしまう可能性がある。放射線診断の検査機器の特徴や使用法を熟知し,放射線技師と常に密接に連携して業務を行っている放射線科医が心臓領域の画像診断にかかわることは,診療の質的向上と放射線安全管理の面からも必須である。腫瘍の診断で造影法をよく研究している放射線科にとっては,冠動脈の造影プロトコルの工夫も容易であろう。心臓の画像診断のなかでも,冠動脈疾患はまさに“コモンディジーズ”であり,心臓CTが広く普及して使用され,その有用性に対するエビデンスが次々に構築された現在においては,放射線診断専門医は必ず冠動脈の基本的診断ができるようになっていなければならない。
しかし,冠動脈の画像診断には苦手意識のある放射線科医が多いのではないかと推測される。読影リストで部位が「冠動脈」の検査を飛ばして次の検査を読んだり,開いた検査に冠動脈評価が含まれていると“そっと閉じて”しまったりした経験のある放射線科医もいるのではないだろうか。極端な場合では,冠動脈CTの冠動脈評価は循環器内科医任せで,そのほかの付随所見だけ放射線科医が読影している状況もあるかもしれない。冠動脈CTを放射線科の領域外のようにみてしまうのは,検査機器の適正使用,プロトコルと放射線被ばくの最適化にとって大きなマイナスであり,現に日本の心臓CTの被ばく量は諸外国に比べて高い傾向にある。心臓CTが“普通の検査”になって,全国の多くのCTが64列以上になり,どの病院でも心臓CTが撮影できるようになった今こそ,放射線科医の関与が望まれるのである。特に冠動脈CTの基本は修得していただきたい。
本特集では,大変綺麗な「冠動脈解剖解説」のアトラスに始まり,放射線科医の検査指示に必要な「撮影法」,基本的読影を可能とする「評価法」のエッセンスが書かれている。読影の際の率直で実践的な事項を,冠動脈CTの限界を正直に述べながら親切に解説されている「レポートの書き方」をみれば,明日からの読影に自信がつくだろう。基本的事項に続いて,冠動脈の画像診断で臨床的知識としてもっているべき「狭窄と虚血」「 冠動脈造影」「 FFR–CTの基本」といった初学者にとってはやや応用と感じる内容も含めて,さらに進んだ最新の知識も得られる構成となっている。
冠動脈の基本的な解剖から撮影法,基本的評価法はわかりやすいので,まずはこれらを一読して,検査指示と狭窄の評価に役立てていただきたい。実際のレポートの書き方を2施設からいただいたのでとても参考になるが,完璧を目指さなくてよいので,まずは狭窄度の評価法と部位の記載方法がわかればよいと思う。冠動脈狭窄と心筋虚血の評価との関連と臨床的意義については,大規模臨床試験によるエビデンスを挙げながら解説されている。放射線科医としては経験の少ない冠動脈造影の知識についても解説をお願いした。保険収載されたFFR–CTの基本的事項と臨床的使用法についても実践的に記載いただいている。
本特集を読めば,冠動脈CTを理解して施行するための効率のよい学修ができる。ぜひ手に取ってお読みいただき,「絶対苦手分野にしない」で,本領域に徐々になじんでいただきたい。
高瀬 圭
序説:特集 2 直腸癌のMRIにレポートを付ける前に知っておくべきこと一段階上の内容を目指すなら
大学病院やがん専門病院であれば,直腸癌術前検査としてMRIを依頼されることは経験されると思う。しかし大部分の施設では放射線診断医は適切な画像とレポートを外科医に提供することができていない。これは診断医に同情すべき点が多い。
昨今,欧州を中心に急速に進歩したMRIを用いた直腸癌診断は,日本の取扱い規約を完全に置いてきぼりにしている。規約にまったく記載されていない事柄こそが治療方針や予後を決定することが明らかになりつつあり,それらの診断にはMRIが必須なのだが,その知識はわが国では一般化していない。
一方,診断医にも責任があり,われわれは直腸癌のMRIに対して真面目に取り組んでこなかった。脳神経領域,肝胆膵領域,婦人科領域などに対するMRI診断の進歩に関して日本の放射線科医の貢献が明らかなのに対して,直腸癌のMRIについては学会でセッションが設けられていることさえない。欧州ではMERCURY(The Magnetic Resonance Imaging and Rectal Cancer EuropeanEquivalence)study groupの活躍があり,直腸癌に対するMRI診断の精度が飛躍的に進歩した。現在欧米ではMERCURY studyの成果を背景にして直腸癌の診療が大きく変貌しており,わが国においてもそれらを取り入れ始める大腸外科医が増えつつある。
本特集では欧米における直腸癌診療で重視されているいくつかの概念(circumferentialresection margin;CRM,distance of mesorectal extension;DME,extramural vascularinvasion;EMVI,tumor deposit;TD)などについて紹介し,それを考慮した外科治療の進歩とは何か,病理学的にそれらがどのように診断されるのか,MRIを用いてそれらに対してどのような診断を行うべきなのか,それぞれ,国立がん研究センター東病院 大腸外科の池田公治先生,千葉大学大学院医学研究院 病態病理学の髙地祐輔先生,千葉大学医学部 放射線科画像診断センターの那須克宏(筆者)が解説する。
悪性腫瘍のリンパ節転移診断は画像診断にとって鬼門であり,ほとんどすべての癌腫においてうまくいっていない領域である。しかし直腸癌については多数のMRIが撮影されていることもあり,そのほかの領域とは異なるエビデンスが得られてきたという経緯がある。直腸癌リンパ節転移診断に関する最新の知見の解説を東京都立駒込病院 大腸外科の川合一茂先生にお願いした。
本特集が欧米に比べて大きく立ち遅れている日本の直腸癌に対するMRI診断がジャンプアップする契機になることを祈念しつつ,読者の明日からの診療に直接寄与する内容となれば,企画者としては望外の幸せである。
那須克宏
目次
特集1:絶対苦手分野にしない 冠動脈の画像診断 企画編集:高瀬 圭
序説 高瀬 圭
冠動脈の三次元臨床解剖アトラス 森 俊平
失敗しない心臓CT撮影法 富澤信夫
冠動脈CTを読もう−冠動脈CTの標準的読影法− 益田淳朗
冠動脈CTを読もう−冠動脈レポートの書き方:私はこう書く①− 益田淳朗
冠動脈CTを読もう−冠動脈レポートの書き方:私はこう書く②− 髙藤雅史ほか
冠動脈CT読影に必要な冠動脈造影の知識 市川啓之
狭窄と虚血の違いを知ろう 岡田知久ほか
保険収載されたFFR–CTの基礎知識 加藤重彦ほか
特集2:直腸癌のMRIにレポートを付ける前に知っておくべきこと:一段階上の内容を目指すなら 企画編集:那須克宏
序説 那須克宏
直腸癌の画像診断に外科医が求めていること 池田公治ほか
大腸癌の壁外非連続性癌進展病巣の病理診断 髙地祐輔ほか
MRIで診断するEMVIとTD 那須克宏
直腸癌のリンパ節転移診断−size criteria再考− 川合一茂
特別掲載
・原発性アルドステロン症のラジオ波焼灼治療 疾患の基本,医師主導治験から保険収載まで
[第2回]開発から医師主導治験までの経緯 高瀬 圭
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書籍情報
- ISBN:9784008004208
- ページ数:136頁
- 書籍発行日:2022年7月
- 電子版発売日:2022年7月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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