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- SICU pearls 外科ICUで困ったときに開く本
商品情報
内容
トレーニング中のレジデントをはじめとした若手医師が知っておくべき外科的知識・情報・テクニックをまとめて収載。
電子書籍版では全文検索、収録内容から南山堂医学大辞典へのリンク参照、文献もPubMedへのワンタッチリンクなど電子ならではの機能を搭載し、立体的な参照を実現いたしました。
序文
出版に寄せて
旧友である讃井医師と松浦医師が外科系ICUのマニュアルを出版するので推薦のことばを是非と依頼を受け,二つ返事で承諾した.2人とは1999年から2000年にかけて米国のマイアミ大学ジャクソン記念病院で働いた間柄である.
松浦医師は,外傷手術・集中治療のフェローとして奮闘されていた.お互い忙しく頻繁にお会いすることはなかったが,時に日本料理店で寿司をつまみながら同じ外科医として大好きな手術の話に花を咲かせた.年齢も近く,気が休まるひとときでもあった.
米国では,外傷外科医が急性期一般外科手術を担当する施設が多い.ジャクソン記念病院の外傷センターも同様で,外科レジデントは外傷センターのローテーション中に,多様な一般外科手術を昼夜を問わず経験する.松浦先生は,1例でも多く経験したいがいまだ技術が未熟なレジデントに,根気よく手術のイロハを教え,信頼を勝ち得ていた.帰国後は,地域医療受難の時代に沖縄県の第一線の外科医療を背負ってこられたと聞く.
讃井医師とは中学時代からのつきあいで,他人には言えないお互いの若気の至りを知り抜いている間柄である.紆余曲折の後,なぜか1999年からはマイアミで一緒に働くことになった.マイアミに移植麻酔の指導医として残るオファーを断り,初志貫徹して麻酔レジデントと集中治療医学フェローを修了した後,2005年に突如として日本へ帰国してしまった.その本心は聞いたことがないが,帰国後マイアミで学んだ集中治療の良さを日本に伝えようと奮闘していると聞く.
米国医療の良さは,しばしばアメリカンフットボールにたとえられるが,ひとことでいえば専門家集団によるチーム医療といえ,お互いがプライドをもってその任務を遂行し,お互いがお互いを尊重することに尽きる.手術室では外科医がクォーターバックとして,オフェンスチームを指揮し手術が安全に行われるが,それはディフェンスチームである優秀な術後ICUチームがあって始めて成り立つものであり,その指揮は間違いなく集中治療医がとるべきと思う.讃井医師には,今後も日本でそのような周術期におけるチーム医療の良さを伝えて欲しい.
そんな2人が編集したSICUマニュアルはどうなるか興味津々で中を覗くと,実にコンサイス,実践的であり,2章はまるで米国のICUをローテートするレジデントが携帯するTarascon Internal Medicine & Critical Care Pocketbookのようである.プラスアルファとして,その他の章では,米国医療に脈々と流れる先輩の教え,いわゆるclinical pearls に溢れ,間違いなくSICUで困った時に側にあって欲しい本ではないかと思う.
3人が一緒に働いたときからすでに10年が経過した.自分も2008年にマイアミからニューヨークに移った.今後も,主として腹部臓器の移植外科医として移植医療の一端を担っていくつもりであるが,このような足跡を残した2人はさらに10年後何をしているのだろう.自分は何をしているのだろう.興味津々である.
2011年 9月
ニューヨーク・プレスビテリアン病院腹部移植外科
加藤友朗
まえがき
―SICUは“前向きな妥協”の場である―
SICU(Surgical ICU:外科系集中治療室)は“前向きな妥協”の場である.
SICUは,外科系主治医ばかりでなく,集中治療医,コンサルタント,看護師,臨床工学技士,薬剤師,理学療法士,ソーシャルワーカー,病院管理者,(米国ではときに)聖職者など,実に多くの人たちが関わる場である.患者やその家族の意向を最大限尊重しながら,SICUチームのメンバー全員で頭をひねり,その時点におけるベストな回答を出す.それを毎日続ける.ベストな回答を出そうとすればするほど熱い議論になるが,それは,SICUチームのメンバーそれぞれの受けた教育,職業観,性格,哲学,倫理観,文化的背景などの“人となり”が直に衝突するからである.
そのようにして毎日議論して回答を出し続けるうちに,妥協点が早く効率的に見つかるようになる.それは,メンバーがお互いをプロとして尊重し,"前向きに妥協する"ようになり,チームとして議論と意思決定がうまく,効率的になるからであろう.家族はお互いしゃべり方,考え方,姿かたちまで似てくるというが,それに近い感覚にとらわれることがある.
このような複数の目が入るSICUは,従来までの主治医が単独で診療するSICUに比べて,患者予後が良いとするデータは多い 1).集中治療医として毎日SICU患者を診る立場からすると,予後の改善そのものはなかなか実感しにくいが,外科医の負担が減り,費用が減り,滞在期間が短くなった実感はある 1, 2).外科周術期医療への貢献は大きいと信じる.
本書もそういうSICUチームとしての議論のうえの"前向きな妥協"が色濃く反映された内容になった.編者として推敲を重ね,何度も修正をお願いし,お互い譲れない部分の中に妥協点を見いだした.結果として,できるだけ質の高い根拠にもとづき,かつ日本の現状にうまく合致したものとなった.まさに“前向きな妥協”の産物といえる.
また,使えるマニュアルとしていつも携帯しておき,困ったときに必要なページに最短時間でアクセスでき,知りたいことがすぐに目に飛び込んでくる体裁を目指した.とくに,2章の図表作成に力を入れた.一見すると無味乾燥に見えるが,外科系,集中治療系,救急系,麻酔科系レジデント,コメディカルにとって,SICUで要求される必要十分な内容が凝縮され「どこに何が書いてあるか」アタマの中に残像が残りやすいはずである.
本書の特徴のもう一つは,参照文献をできるだけ同一ページ内に示したことである.本書はあくまでも困ったときに開く本であり,患者の状態が落ちついた後に,あらためてその記載内容の根拠とされるガイドライン,成書,論文の内容を自分の目で確かめて欲しい.マニュアルに沿った診療は比較的早く身につくが,それだけでは同僚や家族に,あるいはアカデミックな場所で「なぜその診療を行うか」説得力のある説明ができない.出典に当たる癖を是非つけて欲しい.
2章は,自分が熱く教えてきた愛弟子ともいえるレジデントたちに執筆してもらった.教えることは学ぶことであり,学びを完成させるためには教えなければならない.“熱さ”に共鳴した弟子からたくさんのことを教わった.現在離ればなれになった者も多いが,師弟関係は一生続くと考える.是非,師弟の“師”として今後も教え,"弟"から教えてもらえる関係でいたい.
3章,4章は多くの第一線の外科系の先生がたに執筆いただいた.前述のようにSICUチームとしてできるだけ良いものを作りたいという願いから,失礼な点が数多くあったと想像する.この場を借りてお詫びと感謝の意をお伝えしたい.現役外科医の深い経験と見識にもとづく生きた“教え”は,困ったときの強力な武器になるだろう.
最後になったが,妥協しない私の姿勢に辛抱強くおつきあい下さった編集部の方々にあらためてお礼を申し上げたい.また,松浦先生は,私の米国生活を手取り足取り指南してくださった命の恩人ともいえる先生で,“先輩”とはこうあるべき,という姿を地で行く良きロールモデルである.この場を借りてお礼申し上げ,師弟の"弟"として今後もご指導いただきたいと思う.
2011年 9月
讃井將満
■引用
1) Pronovost PJ, et al. Physician staffing patterns and clinical outcomes in critically ill patients: a systematic review. JAMA. 2002; 288: 2151-62.
2) Pronovost PJ, et al. Organizational characteristics of intensive care units related to outcomes of abdominal aortic surgery. JAMA. 1999; 281: 1310-7.
目次
1章 SICU診療総論
SICUにおける患者診療のポイント
◎Coffee Break ICUでのルーチン血液検査,胸部X線検査
2章 図表でみるSICU診療のチェックポイント
1.一般
2.脳神経外科
3.呼吸
4.循環
5.腹部
◎Coffee Break ICUにおけるClostridium difficile
6.輸液,腎臓
7.血液
◎Coffee Break ICUにおける赤血球輸血の適応
◎Coffee Break 大量輸血後反応
8.感染
9.栄養,代謝,内分泌
◎Coffee Break ICUにおける血糖コントロール
10.外傷
11.熱傷
12.薬剤
13.その他
3章 SICU管理各論
1.脳神経外科ICU
A.脳神経外科ICU管理の特殊性:脳圧管理,血圧管理,ドレーン
B.外傷と低体温管理,ICPセンサー
C.頭蓋内疾患による電解質異常
D.くも膜下出血と脳血管攣縮
E.術後管理(くも膜下出血,脳腫瘍,脳出血,血管内手術後)
2.心臓血管外科ICU
A.心臓血管外科ICU管理の特殊性
B.補助循環
C.各手術後管理
3.外科ICU
A.外科ICUの特殊性と管理
1.腹部術後疼痛対策
2.胃瘻・腸瘻の管理
B.外科的重症感染症とICU
1.大腸穿孔による重症敗血症
2.手術を要する重症軟部組織感染症
3.重症膵炎
C.術後管理
1.食道手術後:術後管理の基本と合併症
2.肺切除後:術後管理の基本と合併症
3.定型的肝右葉切除後の術後管理
4.腹部消化管術後の術後管理
D.多い合併症とその他の病態
1.縫合不全
2.術後出血
3.術後腹腔内膿瘍
4.術後腸閉塞
5.急性腸間膜血行不全
4.その他の外科系ICU
A.脊椎手術
B.喉頭全摘出術,咽喉頭頸部食道摘出術
C.重症糖尿病と下肢切断
D.膀胱全摘術,尿路変行
E.分娩時大量出血(産科危機的出血)
F.子癇とHELLP症候群
1.子癇(eclampsia)
2.HELLP症候群
5.外傷ICU
A.外傷ICUの特殊性と管理
B.外傷の非手術的治療
C.外傷急性期凝固線溶反応とその異常
D.多発外傷における術後管理:循環管理の目標と合併症
E.ダメージコントロールと腹腔内圧
F.オープンアブドーメンとその管理
G.その他
6.熱傷ICU
A.熱傷ICUの特殊性と管理
B.重症熱傷における感染管理
C.重症熱傷治療の実際
4章 Trouble Shooting
A.術後管理
1.術後血圧が低いと呼ばれたら?
2.術後頻脈で呼ばれたら?
3.術後SpO2の低下で呼ばれたら?
4.術後の麻痺で呼ばれたら?
5.術後の不穏状態で呼ばれたら?
6.術後に尿量低下で呼ばれたら?
7.術後モニターでST変化のあるときは?
B.呼吸器
1.NPPV? それとも再挿管?
2.気管切開 早期?or晩期?
◎Coffee Break 胸骨正中切開後の気管切開の至適時期
3.高圧アラームが鳴ったら?
4.気管切開チューブが気管切開術後当日に抜けたら?
5.Transfusion-related acute lung injury(TRALI)
C.感染
1.ICUにおける不明熱
2.創感染の実際
D.その他・知っておくべき病態
1.経口・経腸栄養開始の時期
2.HIT(heparin-induced thrombocytopenia:ヘパリン誘発性血小板減少症)
3.Feeding access;適切なルートの選択は?
4.Tracheoinnominate fistula(TIF)
5.Propofol infusion syndrome(PRIS)
6.Critical illness polyneuropathy(CIP)
7.ハロペリドールによるQT延長,悪性症候群
E.脳神経系
1.脳神経外科術後に麻痺の増悪があると呼ばれたら?
2.術後けいれん
3.脳外科術後意識障害
F.心臓血管外科
1.開心術後の縦隔炎
2.術後の乳び胸水
3.開心術後の心嚢液貯留
4.知っておくべきPCPSトラブル
G.一般外科
1.ドレーンは必要か
2.腹部手術後の腹痛
3.ドレーンの事故抜去
4.縫合不全の判断
5.皮弁の術後管理
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書籍情報
- ISBN:9784498050426
- ページ数:358頁
- 書籍発行日:2011年11月
- 電子版発売日:2012年8月11日
- 判:B6判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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