骨髄異形成症候群(MDS)診療up-to-date

  • ページ数 : 128頁
  • 書籍発行日 : 2011年10月
  • 電子版発売日 : 2012年8月25日
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商品情報

内容

複雑で不均一な病態の骨髄系造血器腫瘍である骨髄異形成症候群(MDS)について、その概念や分類などの基礎的知識、血液専門医でも難しい場合が少なくない診断、新薬の登場によって変貌した治療アルゴリズムなどについて最新のトピックスをまとめた。電子書籍版では、全文・串刺検索や南山堂医学大辞典へのリンクなど便利な機能を搭載。立体的な参照を可能にしました。

序文

骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes: MDS)は,複雑で不均一な病態の骨髄系造血器腫瘍であり,無効造血と前白血病という特徴をもつ.French-American-British(FAB)分類の提唱によりMDSの概念は浸透し,MDSは血液内科における主要疾患として位置付けられるようになった.原因が明らかにできない慢性の血球減少症に遭遇した際には,MDSは最も疑うべき疾患の1つであるが,MDSの診断は血液専門医でも難しい場合が少なくない.分子病態の研究が加速し,遺伝子レベルでの知見も報告されるようになってきたものの,上述したようにMDSの病態は複雑で不均一であり,MDSに共通して検出できるマーカーは明らかではない.現状ではMDSの診断は細胞形態学が基本となっているが,フローサイトメトリーによる診断や,遺伝子診断の導入などが期待されている.

MDSの病型分類に関しては,2001年にWorld Health Organization(WHO)分類第3版が公表され,2008年に第4版として改訂されている.病型分類はその度に改訂されたが,MDSは複雑な疾患群であるがゆえ,病型分類はいまだ多くの問題点を抱えた未熟なものといえる.しかし,「染色体異常isolated del(5q)を伴う骨髄異形成症候群〔MDS with isolated del(5q)〕」については,多くの知見が集まっている.網羅的手法により原因遺伝子の候補としてRPS14(ribosomal protein S14)が浮かび上がるなど病因は明らかになりつつあり,治療面では免疫調節薬(immunomodulatory drugs: IMiDs)であるレナリドミドによる高い貧血改善効果と細胞遺伝学的効果が認められている.複雑で不均一なMDSという疾患群のなかで,唯一この病型は例外的な存在となった.

MDSを治癒しうる治療法は造血幹細胞移植のみである.移植適応症例を拡大する努力もなされている.しかし,造血幹細胞移植の適応とならない高齢者や臓器障害を有するMDS患者に対しては,輸血などの支持療法が治療の中心となることが多かった.2011年1月に高リスクMDSの予後を改善する脱メチル化薬であるアザシチジンが,日本でもMDSの治療薬として承認された.また,上述したようにレナリドミドは,"del(5q)を伴うInternational Prognostic Scoring System(IPSS)リスクの低い症例"において,ヘモグロビン値の上昇,輸血非依存化など貧血改善に非常に有効であることが示された.そのレナリドミドも日本での投与が可能となった.これら薬剤の登場はMDSの治療アルゴリズムを変貌させた.また,免疫抑制療法により造血が回復する症例があることが明らかになり,米国のNCCNガイドラインでも,条件を満たす症例については,免疫抑制療法が治療の第1選択肢として推奨されている.支持療法では鉄キレート療法によって,肝臓,心臓,内分泌腺に沈着した過剰鉄が減少し,臓器障害が軽減すること,輸血依存低リスクMDSの場合は,十分な鉄キレート療法によって予後が有意に改善することが報告された.

MDSは新たな展開をみせている.それぞれの領域の専門家が最新の情報を解説する本書が,今後の診療と研究に活用されれば幸いである.


2011年 9月

松田 晃

目次

目 次

§1 疾患概念・病因・病態

1.MDSの疾患概念・病因・病態

A.FAB分類までの歴史

B.MDSのもつ3つの境界

C.MDSは「AMLになる」のか?

D.MDS/AMLの発症メカニズム:de novo AMLとの違いに注視して

1.染色体異常

2.点突然変異

E.広島・長崎原爆被爆者の疫学データが示すde novo AMLとMDS(/AML)の違い

F.MDS発症に長い潜伏期が必要な理由:年齢要素を加味することの重要性

G.発がんの年齢依存性を決めるもの

H.発がんに必要なエピゲノム変化とは?

2.5q-症候群の病因

A.5q-症候群

B.5q-症候群の病因遺伝子探索

C.網羅的な探索による5q-症候群の原因遺伝子RPS14の同定

D.5q-染色体欠失マウス:広範なゲノム欠失のモデルマウス

E.5q-症候群での新たな標的:miRNA

F.5q-症候群の現状・展望と残された課題

§2 診断・分類

1.MDSの診断と分類における細胞形態学の評価法

A.適切な塗抹標本の作製

B.International Working Group on Morphology of myelodysplastic syndrome(IWGM-MDS)による骨髄芽球,環状鉄芽球の形態学的定義

1.骨髄芽球の定義

2.環状鉄芽球の定義

C.細胞形態学的検査の定量的評価法

1.WHO分類第4版による芽球と異形成の評価法

2.特発性造血障害に関する調査研究班・不応性貧血(骨髄異形成症候群)の形態学的診断基準作成のためのワーキンググループによる形態学的異形成の定量的評価法

2.MDSの骨髄病理組織

A.血液細胞学的見方と病理組織学的見方

B.骨髄の正常,反応性パターンの組織所見

C.MDS診断における免疫組織学的検索の意義

D.MDSの各病型の病理組織像

1.多血球系異形成を伴う不応性血球減少症

2.環状鉄芽球を伴う不応性貧血

3.芽球増加を伴う不応性貧血

4.5q-症候群

5.小児不応性血球減少症

E.再生不良性貧血と低形成MDSの鑑別

1.低形成骨髄病変とは

2.低形成骨髄病変の病理組織学的鑑別診断

3.MDSのフローサイトメトリー

A.MDSの診断プロセスとその問題点

B.MDSの予後推定法とその問題点

C.MDSのフローサイトメトリー

1.背 景

2.診断に関する役割

3.予後予測に関する役割

4.European Leukemia Net(ELNet)の関与

4.MDSの診断基準と診断確度区分

A.診断基準

1.Working Conference on MDS 2006による診断基準

2.「MDS診療の参照ガイド」の診断基準

B.不応性貧血(骨髄異形成症候群)の形態学的異形成に基づく診断確度区分

1.形態学的異形成の分類

2."カテゴリーA"の異形成の定量的判定

3."カテゴリーA"と"カテゴリーB"を合計した各系統の異形成の定量的判定

4.定量的判定に基づく形態学的異形成の程度の区分

5.染色体所見の区分

6.診断確度区分

5.MDSの病型分類

A.FAB分類

B.FAB分類からWHO分類第3版へ

C.WHO分類第3版から第4版へ

1.単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症

2.環状鉄芽球を伴う不応性貧血

3.多血球系異形成を伴う不応性血球減少症

4.芽球増加を伴う不応性貧血

5.分類不能型骨髄異形成症候群

6.染色体異常isolated del(5q)を伴う骨髄異形成症候群

7.小児骨髄異形成症候群

6.MDSの予後スコアリングシステム

A.International Prognostic Scoring System(IPSS)

B.IPSSその後

C.WHO classification-based prognostic scoring system(WPSS)

D.CMMLの予後因子

E.Global MD Anderson model(MDアンダーソンモデル)

F.co-morbidityを勘案したスコアリングシステム

G.アザシチジン治療後の予後スコアリングシステム

H.遺伝子変異

§3 治 療

1.治療指針

A.NCCNの治療ガイドライン

1.NCCNガイドラインについて

2.NCCNガイドラインで採用されている予後予測

3.NCCNにおける治療の分類

4.リスクに応じた推奨治療

B.特発性造血障害に関する調査研究班による「不応性貧血(骨髄異形成症候群)診療の参照ガイド」

1.不応性貧血(骨髄異形成症候群)診療の参照ガイドについて

2.診療の参照ガイドにおける治療の方針

3.診療の参照ガイドにおけるリスク分類

4.低リスクMDSに対する治療

5.高リスクMDSに対する治療

2.免疫抑制療法

A.総 説

1.MDS患者に観察される免疫異常

2.MDSに対する免疫抑制療法の治療成績

3.低リスクMDSにおけるT細胞異常

4.PNH型血球陽性RAの実態

5.免疫抑制療法を施行すべき対象患者の選択

B.主要論文の紹介

C.エビデンスの総括

D.処方例と注意点

1.CsA(ネオーラル)

2.ATG(サイモグロブリン)

3.化学療法

A.総 説

1.化学療法の現状

2.化学療法の今後の位置づけ

B.主要論文の紹介

C.エビデンスの総括

D.処方例と注意点

1.強力化学療法(寛解導入療法)

2.低用量化学療法

4.造血幹細胞移植

A.総 説

1.移植適応

2.移植を行うタイミング

3.移植ドナー・細胞ソース

4.移植成績

B.主要論文の紹介

C.エビデンスの総括

D.処方例と注意点

1.移植前処置(医科研におけるMAC例)

2.GVHD予防(CsA+短期MTX法の投与例)

3.感染予防

E.関連する項目の解説

1.移植前に化学療法・脱メチル化薬などによる前治療は必要か

2.RIST

3.移植施設間の考え方の違い

5.レナリドミド

A.総 説

1.レナリドミドの作用機序

2.レナリドミド適応となるMDS

3.低用量レナリドミド治療の効果

4.レナリドミド治療の長期的な効果と安全性

5.今後のレナリドミド治療の展望

B.主要論文の紹介

C.エビデンスの総括

D.処方例と注意点

1.重 要

2.処方例

3.MDSに対する低用量レナリドミド治療の実施指針

6.脱メチル化薬

A.総 説

1.メチル化と腫瘍化

2.脱メチル化薬の開発の歴史

3.デシタビン

4.MDSの発症機序と想定されるメチル化阻害薬の作用点

5.課 題

B.主要論文

C.エビデンスの総括

D.処方例と注意点

7.鉄キレート療法

A.総 説

1.背 景

2.輸血依存性鉄過剰症と鉄キレート療法

3.輸血後鉄過剰症の診療ガイドライン

4.輸血後鉄過剰症の診断基準と重症度基準

5.鉄キレート療法の開始基準

6.モニタリングと治療について

7.鉄キレート療法の臨床的効果

8.EPIC study

9.鉄キレート療法の腫瘍化への影響

10.鉄キレート療法と造血幹細胞移植について

11.鉄キレート療法の副作用

B.主要論文の紹介

C.エビデンスの総括

D.処方例と注意点

8.小児MDSとMDS/MPD

A.芽球の増加を伴わないMDS(RCCなど)

1.臨床像と診断基準,頻度,疫学

2.治 療

B.芽球の増加を伴うMDS

1.臨床像と診断基準,頻度,疫学

2.治 療

C.JMML(juvenile myelomonocytic leukemia)

1.臨床像と診断基準,頻度,疫学

2.治 療

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書籍情報

  • ISBN:9784498125704
  • ページ数:128頁
  • 書籍発行日:2011年10月
  • 電子版発売日:2012年8月25日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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