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- 発表が楽しくなる!研究者の劇的プレゼン術
商品情報
内容
「余白を憎め!」「バランスなんぞ忘れてしまえっ」など、著者ならではの視点で見やすい&わかりやすいプレゼンを徹底解説。ビフォーアフター形式でよくわかるスライド改良例も収録。
序文
ある日,テレビ好きの筆者はいつものようにテレビを見ていた.その番組は時事問題を取り上げる一種の討論番組で,この日は「地球温暖化問題」がテーマに取り上げられていた.思えば,このテレビ番組が,筆者に本書を上梓させるきっかけを作ったのかもしれない.
そもそも地球温暖化は本当に進んでいるのだろうか? 番組はこの点について討論するところから始まった.最初に,地球温暖化に警鐘を鳴らす科学者と地球温暖化など関連業界が利益を得るために作り上げた虚構にすぎないとする科学者が登場して,持参した科学的データを元にそれぞれの主張を解説し,その後に両者が討論し,さらに出演者が質問やコメントをしてみんなで考えましょう,そんな番組の流れであった.
無論,地球温暖化の問題は,テレビの1番組で解決するほど底の浅い話ではない.しかし,この番組に限って言えば,提示されたデータの科学的客観性から鑑みて,どう考えても地球温暖化を虚構とする科学者の主張には無理があった.筆者も科学者の端くれである.それくらいのデータの解釈はできる.しかし筆者の思いをよそに,番組内では地球温暖化虚構論が多くの出演者たちに受け入れられ,それが番組の中心的な話題になった.
どうしてそんなことになったのか? 筆者の見たところ,プレゼンテーションの巧拙が明らかに議論に影響を与えたようだった.地球温暖化に警鐘を鳴らす科学者は,専門用語を連発し,データの読み取り方の説明を省き,仏頂面で司会のアナウンサー氏に挑みかかるような調子で自説を展開した.解説に用いたフリップの図表もわかりにくくて良くなかった.一方,虚構論の科学者はたとえ話を交えながら面白おかしくトークを繰り広げて,どうやら出演者を自分の主張に引き込むのに成功した.
エンターテイメント性の強いテレビ番組のこと,この出来事自体は大したことではないのかもしれないが,地球温暖化警鐘派の科学者のことを思って,筆者は少し暗澹たる気持ちになった.この科学者氏は,司会の紹介によると高名な先生のようだった.用意された研究データは検証性に富んでいて(虚構論の科学者氏のそれよりも)説得力があったのに,プレゼンが拙いばかりに悔しい思いをされたに違いない.この人は,テレビを通じて多くの視聴者に自説を訴える恰好のチャンスを,プレゼンが下手というだけで棒に振った.なぜしっかり準備しなかったのだろう? 番組終了後,このことばかりが筆者の頭に残った.
翻って,学会などの科学コミュニティーに目を向けると,しかし実は学者による拙いプレゼンテーションは日常茶飯で,今に始まったことではない.筆者の研究室内を見ても,教室員の自己流のわけのわからないプレゼンが横行していた.もしかすると,研究者というのはあまり真面目にプレゼンテーションというものを考えていないんじゃないか? プレゼンテーションの巧拙は,もっぱら個人の趣味とか資質に影響されるとか,そんな安易なことを思っているんじゃないか? そう感じて「プレゼンテーションを考える」ことをテーマにプレゼンテーション論を個人的なブログで書き始めたのが2009年の2月であった.それが羊土社の方の目にとまり,まず月刊誌『実験医学』に連載をさせていただき,さらにこのたび本書を上梓させていただくことにまでなったのである.
個人的なブログで気軽に始めた話を一冊の本にまとめあげるために,議論を自分で再検証し,さらに大部の書き増しをするために改めて学会の口頭発表やポスター発表の会場を見回して論点を探り直したりして,筆者自身はずいぶんと勉強になった.その結果を書きまとめたのが本書である.執筆当初は学生さんや初学者の方々を読者に想定していたのだが,書き上がってみると,プレゼンテーションに関わる読み物として,もしかするとどなたにも楽しんでいただけるのではないか,と密かに思ったりもしている.もしよろしければどなた様もご一読いただいて,この中からプレゼンテーションのヒントをいくらかでもつかみ取っていただければ嬉しい限りである.
2013年 2月
堀口 安彦
目次
第1章 プロローグ
彼を知りて・備えあれば・山よりでっかい猪は出ん
コラム:世界結核デー,二日酔いにプレゼンテーション!?
第2章 聴衆に捧げる口頭発表
1.口頭発表の準備
コラム:超初級者による非常に短い口演
2.わかりやすい口頭発表の原則
コラム:スライドは1分1枚の怪?
3.口頭発表を演じる
コラム:タモリさんのプライド
第3章 見てくれスライド論
1.スライドを考える
コラム:山中教授の究極の「つなぎスライド」,PowerPoint とKeynote
2.「見やすく」を考える
3.「わかりやすく」を考える
コラム:新しいプレゼンテーションソフトの可能性
4.Before-After スライド編
第4章 よってらっしゃいポスター論
1.ポスター発表を考える
コラム:PCR のポスター発表
2.観客に合わせた発表ストラテジー
コラム:単位や用語の正式な表記方法を考える
3.ポスターを作成する
コラム:ポスター発表の現実
4.こんなポスターはイヤだ
第5章 プレゼンテーションを支える思想と経験と根性
1.プレゼンの準備に際して思うこと
2.学会場で思うこと
コラム:レーザーポインター
3.プレゼンテーションへのスタンス
コラム:TED に講演者の情熱を見る
付録:①プレゼンQ&A,②参考書・ウェブサイト・アプリケーション
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書籍情報
- ISBN:9784758108140
- ページ数:174頁
- 書籍発行日:2013年3月
- 電子版発売日:2014年5月30日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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