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- あてて見るだけ!劇的!救急エコー塾
商品情報
内容
救急の現場で絶対役立つエコーの手技をわかりやすく解説。よく使う腹部や心臓のエコーだけでなく、気道や胃、骨折まで手軽にみられるようになる!
序文
序
~患者と自分を守る究極の武器,エコーをマスターしよう!~
◆研修医時代の忘れられない思い出
20年前,まだ麻酔科研修医時代の出来事.同僚の内科医師から肝硬変の患者の中心静脈確保の依頼がきた.昨日内科で留置を試みたが失敗に終わり,本日,上手な医師の手を借りて“仕切り直し”する旨,患者にインフォームド・コンセントされているらしい.麻酔科の上司が出張不在であることを告げるが,週末を控え,今日入れておきたいという.「なんでよりによってオーベンのいない日に...」と戸惑いつつも病棟に出向く.心の中でイメトレをし,患者に理想的な体位をとらせ,教科書通りに穿刺するのだがいっこうに血液の逆流はない.額にあふれる汗がいつしか清潔覆布に滴下していたことにも気づけないほど緊張し,焦るほどに上手くいかなくなる.患者も同一体位で苦しそうだが,それをなだめる声も次第に威圧的な印象になっている自分に気づく.見守る同僚の口元も,いつドクターストップをかけようか思いあぐねているようだ.「!!...入ったか...?」一瞬ゆるんだ表情は,シリンジをはずした直後に凍りついた.噴出する血液.同僚がぼそりとつぶやく.「それ...A(artery)だね...」
◆エコーで広がる自分のスキル
エコーの出現は,明らかに自分の臨床を変えた.「これまでの苦労はいったい何だったのか?」と思うほどカテーテルの留置は容易となり,自分と患者が感じた「無駄で苦痛な時間」はもはや金輪際,存在しなくなると確信した.しかし,実際に周囲を見回すと,エコーを持ってくる手間を惜しみ,体表ランドマークを過信し,20年前の私と全く同じ過ちを繰り返す医師をいまだに見かける.研修医ですら,「エコーを使って穿刺に成功しても,それは“手技が本当に上手になったとはいえない”」という意味不明な洗脳を受けているものがいる.これは昔気質な先輩医師の背中しか見ることができないことが大きな要因である.残念なことに,エコーなしで刺すのが当たり前の時代を過ごした上級医の考えを変えることは予想以上に難しい.柔軟な脳細胞を有している研修医には,先人と同じ過ちを繰り返させず,もっと他の事に時間を費やせる環境を提供したい.エコーには,我々先輩医師が年単位で学んだことを,今の研修医にごく短期間で習得させるだけの力がある.
さて,現在筆者は卒業当初は想像すらしていなかったドクターヘリ活動に従事する機会をいただいている.その活動の中では,限られた医療資機材で現場におもむき,いかに短時間で患者の情報を集め,評価し,対処するかの必要に迫られる.出張救急外来を担うドクヘリ活動において,場所をとらない携帯エコー機はフライトナースと並び,なくてはならないパートナーとして力になってくれる.病院の外来で定期受診患者を相手にするのとは異なり,現場にはエコーを依頼する検査技師はいないし,ゆっくりと時間をかけてフルスタディするゆとりもない.全てを自分の手の中で完結させるためには,煩雑な計測は抜きにして,必要な画像を素早く描出し,得られた画像から「ヤバいかどうか」を反射的に判断するスタイルをとることになる.
◆エコーを究極の武器とするために
上に記した2つの経験をもとに,初期研修医向けの雑誌「レジデントノート」の2012年8月号特集と2012年10月号~2013年12月号の隔月連載を企画したところ,好評をいただいた.そこでこの度,特集と連載をベースに加筆を行い,1冊の書籍としてまとめることとなった.本書では大きくわけて3つのカテゴリーのエコーテクニックを収載している.まずは,①医療従事者が避けて通れない穿刺手技に関わるエコー.これには内頸・腋窩静脈からの中心静脈穿刺と大腿部からの動脈血採血,加えて腰椎穿刺を盛り込んだ.しかし,刺すだけで満足してはいけない.自分の行った手技の行く末を見守るために,内頸や腋窩静脈を穿刺した後,気胸という合併症を速やかに自分で確認するための肺エコーを盛り込んだ.
そして②研修医が救急外来診療ですぐに実践できる強力なツールとしてのエコー.最も基本かつ重要なのは“素早く”出血性ショックをスクリーニングするための“FAST”,出血以外のショックを判断するための“ざっくり心エコー”など,「見るだけ」で手軽に実施できるテクニック.この2つは非常にシンプルかつパワフルな基本エコー技術で,筆者が研修医にまず身につけてもらいたいと考えているものだ.ひとたび慣れ親しめば,自身の診断能力が格段に向上するだけではなく,以後のエコーの応用は大樹が枝葉を伸ばすように爆発的に拡張できる.この2つをマスターした後に超音波のバリエーションを増やす突破口として,救急外来でよく見かける腹痛時の胆石胆嚢炎や,急性虫垂炎,腎盂腎炎や尿路結石,静脈血栓など,研修医の希望が多く,エコーでスクリーニングを試みることで運良く所見を得ることも可能な疾患をとりあげ,またFAST,心臓,肺エコーのアドバンス編を収載した.
さらには③上級医も知らないあたらしい超音波の使い方として,気道,胃,骨折などのお手軽エコーテクニックと,特集・連載からおつきあいいただいた読者のための“おまけ”として新たに軟部組織エコーを追加した.
本書籍を通じて,きわめて基本的ではあるが,皆さんは頸部,気道,前胸部,肺,心臓,腹部,胃,胆嚢,虫垂,腎臓,鼠径,腰椎,骨,軟部組織を手軽に描出することができるようになる.気軽にエコーをあてて,たとえ結果が陰性であっても,正常所見を経験し続けることの意義は非常に大きい.まずは自分の経験のためにエコーを行い続けることで,皆さん自身に大きな財産が残ることになるだろう.そしてそれは最終的に患者さんへと還元されることになる.また,エコーに慣れるにつれ,エコーの性能を最大限活用するためのノボロジーの知識が必須であることに気づくことだろう.今回はそのニーズに応えるべくノボロジーとアーチファクトの項目も追加してある.
本書が皆さんのエコー生活の入り口となり,今後の診療を飛躍させ,患者さんの役に立てていただくことになれば,執筆者一同,教育者冥利に尽きる最上の喜びである.
さあ,今日から積極的に「エコー,ちょこっと,あてておこう!」
2014年 1月
執筆者を代表して
鈴木昭広
目次
初級編
Lesson1 必ず守ろう! 画像描出時の基本ルール
Lesson2 すべての基本! 入門に最適! FASTを必ずマスターしよう
Lesson3 内頸静脈からの中心静脈穿刺 ガクガクブルブルの体表ランドマーク法
Lesson4 鎖骨下...じゃないよ! 腋窩静脈からの中心静脈穿刺 エコーを使うなら鎖骨尾側の腋窩静脈を選択!
Lesson5 気胸の有無は肺エコーで診断! 刺す前,刺した後には必ず見よう!
Lesson6 ざっくり心エコーのススメ
Lesson7 上腹部痛!? 胆嚢くらいは自分で見たい!
Lesson8 たかがアッペ,されどアッペ... これが見えたら虫垂炎!
Lesson9 血液ガスがなかなかとれない... 大腿をブスブス刺さずにエコーで見よう
Lesson10 尿路感染? 石と水腎症はとりあえずエコーでチェックしておこう!
Lesson11 肥満患者の髄膜炎!? 棘間が触れないときの腰椎穿刺
Lesson12 その患者,おなかいっぱい? プローブを あてたついでに 胃のエコー
Lesson13 気道即生道(気ノ道,即チ,生キル道) 知る人ぞ知る,使って便利な気道エコー
Lesson14 骨折って,エコーでわかるの? 好奇心が育てる骨折エコー
Lesson15 エコノミークラスだけ...じゃない! ビジネスクラスでも起こる下肢静脈血栓症
Lesson16 灯台もと暗し!? 軟部組織も超音波で見よう
アドバンス編
Lesson17 知ると知らないでは大違い! 超音波ノボロジーとアーチファクト
Lesson18 FASTアドバンス extended FAST+αを覚えよう!
Lesson19 ざっくり心エコーのススメ アドバンス ードプラを使ってみようー
Lesson20 肺エコーアドバンス
Lesson21 エコーテクニックのさらなる応用! ~でも過信は禁物
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書籍情報
- ISBN:9784758117470
- ページ数:189頁
- 書籍発行日:2014年2月
- 電子版発売日:2014年6月27日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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