基礎から学ぶ植物代謝生化学

  • ページ数 : 328頁
  • 書籍発行日 : 2018年12月
  • 電子版発売日 : 2019年4月12日
4,620
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商品情報

内容

大学院生の講義にも◎詳細かつ平易な内容で,植物生化学のエッセンスを網羅!

動かない植物が生存戦略の1つとしてつくり出す代謝産物について,その成り立ちを「分類と生合成経路」という縦糸と「生合成機構」という横糸で体系的に解説!蓄積や輸送,生物間相互作用までを網羅した教科書。

序文

代謝とは,「生命現象にかかわる一連の生化学反応」であり,植物が多様な生育環境へ適応するために進化・獲得した代謝を二次代謝あるいは特化代謝とよぶ.代謝は有機化合物が生合成される代謝経路とその反応を担う酵素から成り立っている.本書では代謝経路を縦糸(第Ⅰ部),酵素を横糸(第Ⅱ部)として織りなし,植物代謝生化学がカバーする広い領域を理解できる構成とした.本書の特徴の1 つは,代謝経路の各反応にかかわる酵素を明記し,各酵素の反応機構や補酵素の役割を「巻き矢印」を用いて有機化学的に解説している点であり,生命現象にかかわる生化学反応は有機化学の原理に基づいていることを理解できるように努めた.本書では植物を題材としているが,内容は動物や微生物と共通する部分が多くあるので生化学全般の理解に役立つ.さらに,学部講義の次のステップとして大学院へ進学し,農学,工学,理学,薬学等の修士・博士課程において植物科学や天然物化学を専門的に研究する学生のニーズにも耐えうるよう,第Ⅲ部には植物代謝産物の生理機能と応用,先端技術に関する解説を含めた.

本書の編集と執筆は第一線で植物代謝研究を行っている研究者が立ち上げた植物二次代謝フロンティア研究会のメンバーが中心となって行った.世の中には植物生理学や天然物化学の良書は多くあるものの,生物あるいは化学に偏った内容となっており,化学と生物の融合領域である植物代謝化学を体系的に講義するのに適した教科書がないと常々感じていた.広く植物代謝化学の面白さを伝え,また,次世代の研究者の育成にも資する教科書をつくりたいとの意見で一致し,教科書を執筆することとなった.

タイトなスケジュールのなか,何度も議論を重ね,よい教科書をつくりたいという執筆者全員の熱い思いで,予定を大幅に超過するページ数の原稿が集まった.羊土社の方々のアドバイスも踏まえ,構成の変更や図の改訂を幾度もくり返し,植物代謝生化学を理解するために必要な知識が1 冊に凝縮されたものとなった.本書をきっかけに,生命現象を化学と生物の両面から研究する面白さを理解し植物代謝生化学に興味をもつ学生が1 人でも多く誕生してくれれば,この上ない喜びである.

さいごに,本書の出版にあたりご執筆いただいた先生方,反応機構の校正にご協力いただいた轟泰司先生,教科書の企画段階から最後の校正まで,多くの協力やご配慮をいただいた羊土社の田頭みなみ,関家麻奈未両氏をはじめ関係者の方々に厚く感謝する.


2018年11月

水谷 正治,士反 伸和,杉山 暁史

目次

序章 植物代謝産物の世界

1.植物代謝産物は世界を支える

2.動かない植物では植物代謝産物が働く

3.植物代謝産物は生活に彩りを与える

4.本書の構成--植物代謝生化学における代謝経路と酵素と生理機能

第Ⅰ部 植物代謝産物の分類と生合成経路

1章 分類

1.一次代謝

2.二次代謝

章末問題

2章 芳香族化合物

1.芳香族化合物の基本的な生合成経路

2.ケイ皮酸/モノリグノール経路由来の芳香族化合物

3.ケイ皮酸/モノリグノール経路とシキミ酸経路との複合経路由来化合物

4.ケイ皮酸/モノリグノール経路と酢酸-マロン酸経路との複合経路由来化合物

5.酢酸-マロン酸経路由来の化合物

章末問題

3章 イソプレノイド

1.イソプレノイドの定義

2.基本骨格の生合成

3.テルペノイド

章末問題

4章 アルカロイド

1.塩基性アミノ酸に由来するアルカロイド生合成経路

2.芳香族アミノ酸に由来するアルカロイド生合成経路

3.その他のプソイドアルカロイド

章末問題

5章 糖,脂質,アミノ酸,含硫化合物

1.糖

2.脂質

3.アミノ酸

4.含硫化合物

章末問題

6章 植物ホルモン

1.オーキシン

2.ジベレリン

3.サイトカイニン

4.アブシシン酸

5.エチレン

6.ブラシノステロイド

7.ジャスモン酸とサリチル酸

8.ストリゴラクトン

章末問題

第Ⅱ部 植物代謝産物の生合成機構

7章 生合成概論

1.酵素反応の特徴

2.酵素はタンパク質

3.酵素の立体構造

4.補因子

5.酵素の分類

6.酵素反応を有機化学的に理解するために①

7.酵素反応を有機化学的に理解するために②

章末問題

8章 酸化還元酵素 (EC1)

A.NADP+依存性デヒドロゲナーゼ

A-1.補酵素NADPHおよび反応の概説

A-2.反応機構

A-3.酵素,遺伝子の特徴と代表的な反応

B.FAD結合型オキシダーゼ

B-1.補酵素FADおよび反応の概説

B-2.反応機構

B-3.植物のBBEの遺伝子数と反応例

C.アミンオキシダーゼ

C-1.アミンオキシダーゼの概要

C-2.PAOの反応機構と酵素の特徴

C-3.CuAOの反応機構と酵素の特徴

D.ポリフェノールオキシダーゼ

D-1.反応の概説

D-2.反応機構

D-3.PPO酵素の特徴

E.ペルオキシダーゼ

E-1.反応の概説

E-2.反応機構

E-3.酵素の分類および遺伝子の特徴

F.フラビン含有モノオキシゲナーゼ

F-1.補酵素と反応の概説

F-2.反応機構

F-3.酵素および遺伝子の特徴

G.シトクロムP450

G-1.反応の概説

G-2.反応機構

G-3.CYPの特徴と分類/命名

H.2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ

H-1.反応の概説

H-2.反応機構

H-3.植物のDOXの遺伝子数と分類/命名

I.リポキシゲナーゼ

I-1.反応の概説

I-2.反応機構

I-3.酵素の特徴

章末問題

9章 転移酵素(EC2)

A.糖転移酵素

A-1.GTファミリー

A-2.GH1型糖転移酵素

B.メチル基転移酵素

B-1.補酵素SAMおよび反応の概説

B-2.反応機構

B-3.酵素の特徴と分類

C.アシル基転移酵素

C-1.BAHD型AT

C-2.SCPL型AT

D.アミノ基転移酵素

D-1.補酵素PLPと反応の概略

D-2.反応機構

D-3.酵素,遺伝子の特徴

D-4.代表的な反応

E.プレニル基転移酵素

E-1.反応の概説

E-2.反応機構

E-3.酵素の特徴

F.ポリケチド合成酵素

F-1.反応の概説

F-2.反応機構

F-3.酵素の特徴および遺伝子数

F-4.代表的な反応

章末問題

10章 加水分解酵素(EC3)

A.糖加水分解酵素

A-1.反応機構

A-2.酵素,遺伝子の特徴

A-3.代表的な反応

B.アミド加水分解酵素

B-1.反応機構

B-2.酵素,遺伝子の特徴

C.エステル加水分解酵素

C-1.反応機構

C-2.酵素,遺伝子の特徴

章末問題

11章 脱離酵素(EC4)・異性化酵素(EC5)・合成酵素(EC6)

A.脱離酵素(EC4)

A-1.脱アミノ酵素

A-2.脱水酵素

A-3.脱炭酸酵素

A-4.リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ(RuBisCO)

A-5.テルペンシンターゼ

B.異性化酵素(EC5)

B-1.イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ

B-2.オキシドスクアレンシクラーゼ(トリテルペン環化酵素)

B-3.コリスミン酸ムターゼ

C.合成酵素(EC6)

C-1.アシル活性化酵素

章末問題

12章 転写因子

1.転写因子

2.フラボノイド生合成系の転写因子

3.JA応答性転写因子による防御代謝系の制御

4.転写因子の遺伝子発現とタンパク質活性の制御

5.転写因子の機能変化

章末問題

13章 輸送体

A.ABC輸送体

A-1.反応機構

A-2.輸送体,遺伝子の特徴

A-3.代表的な反応例

B.MATE輸送体

B-1.反応機構

B-2.輸送体,遺伝子の特徴

B-3.代表的な反応例

C.NPF輸送体

C-1.反応機構

C-2.輸送体,遺伝子の特徴

C-3.代表的な反応例

D.その他の輸送体

章末問題

第Ⅲ部 植物代謝産物の機能と応用

14章 蓄積

1.輸送と蓄積

2.蓄積に特化した器官

3.組織レベルでの蓄積

4.細胞小器官レベルでの蓄積

5.蓄積部位と酵素の局在から考えられること

章末問題

15章 生物間相互作用

1.花と送粉者の相互作用

2.植物と病害虫の相互作用

3.植物--害虫--天敵間の三者間相互作用

4.土壌での共生,寄生

5.線虫の孵化促進

6.植物間コミュニケーションとアレロパシー

7.生態系ネットワークの中での植物二次代謝産物

章末問題

16章 進化

1.二次代謝の遺伝子の特徴

2.代謝の分岐進化とその調節

3.平行進化

4.代謝の可塑性

5.生合成遺伝子クラスター

6.植物の生合成遺伝子クラスターの例

7.メタボロミクス解析からみた代謝の多様性と進化

8.環境適応と二次代謝

9.栽培化と二次代謝

章末問題

17章 食品成分・薬用成分・毒

1.食品の風味特性と植物二次代謝産物

2.食品による健康維持と二次代謝産物

3.生薬と二次代謝産物

4.毒性を示す二次代謝産物

章末問題

18章 オーム科学と植物バイオテクノロジー

1.植物代謝生化学とオーム科学

2.遺伝子組換え技術とその応用

3.ゲノム編集

章末問題

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書籍情報

  • ISBN:9784758120906
  • ページ数:328頁
  • 書籍発行日:2018年12月
  • 電子版発売日:2019年4月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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