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- 実験医学別冊 もっとよくわかる!医療ビッグデータ
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序文
はじめに
近年,医学・医療さらには創薬の分野において,これまでの医学・医療の情報・データにはなかった新しいタイプの生命医療情報が,急速に産生され蓄積・波及しつつある.
1 つは,ヒトゲノムなどの配列を解析する,高機能の次世代シークエンサーの登場による,ゲノムや遺伝子発現プロファイルなどの網羅的分子情報の大容量・超高速な生成であり,他は欧州をはじめとする大規模前向きポピュレーション準拠型ゲノム・コホートの世界波及である.これとは違った流れであるが,さらに,「スマート革命」と「生体センサリング技術」の融合によって生まれた,24 時間生理変量を連続測定/生成するモバイルヘルス情報である.これらの新しい生命医療情報は,その桁違いな大容量性・際立った多様性,およびデータ生成・処理の高速性のゆえに,真に医学・医療のビッグデータと言えるものであり,医療・医学もいよいよ「ビッグデータ時代」に突入したといえる.
これら新しい「医療ビッグデータ」はその大容量性だけでなく,これまでの医学や創薬のあり方を根底から変革する力をもっており,「ビッグデータ医療」や「ビッグデータ創薬」の到来という状況を生み出しつつある.つまり,従来の平均的患者病態像に基づいた「ワンサイズ・フィッツ・フォア・オール(one size fits for all)」のポピュレーション医療に代わる「個別化医療」,またこれまでの対応的医療に代わる「予測的医療」あるいは「先制医療」,さらに病気になるたびごとの医療に代わる「生涯にわたる」医療のように,新しいパラダイムの医療へと変革しつつあるのである.
また,新しいタイプの医療ビッグデータのみならず,従来型の診療情報も,電子カルテの波及による電子化の波を受けて大量に蓄積され,「 リアルワールドデータ」としてこれまでのランダム化比較試験至上主義に挑戦しつつある.
このように,膨大に生成される生命医療データは,研究面・診療面でもすでに人間の解析能力を超えてきている.近年,この点から,大量にデータを解析し,新しい医学知識発見を導き,医療における正しい診断結果を生み出す人工知能(AI)が注目されている.
本書では,これら新しい「生命医療情報のビッグデータ」によるデータ駆動型医療が現在の医療の枠組みをどう変革するのか,また人工知能がどのような新しい医学・医療のパラダイムをもたらすのか,論じていきたい.
2020年2月
田中 博
目次
はじめに
1章 医学・生命科学におけるビッグデータ時代
1.医学・医療におけるビッグデータとは
2.新しいタイプの医療ビッグデータと従来型との違い
3.医療ビックデータがもたらす医療パラダイムの変革
2章 米国におけるゲノム医療の展開
1.ゲノム医療の始まり
2.ゲノム医療の臨床実装の開始―次世代シークエンサーのインパクト
3.ゲノム医療の国家的推進―医療ビッグデータ時代の到来
4.電子カルテから取り出す臨床表現型情報
5.精密医療が描く医療
3章 欧州におけるバイオバンクと疾患データベース
1.欧州型のゲノム医療の実現
2.大規模前向きポピュレーション準拠型バイオバンクの確立
3.バイオバンクの概念と疾患バイオバンク
4.ビッグデータ時代の医学研究・臨床試験
5.欧州におけるゲノム臨床医療への対策
4章 人工知能・ディープラーニングと医療
1.医療ビッグデータからの革新的知識の発見
2.人工知能の概念と発展
3.ディープラーニングの革命性
4.ディープラーニングのその他の方式
5章 AI医療とAI創薬,デジタル医療
1.ディープラーニングの医療への応用
2.生命情報ビッグデータと人工知能による創薬・DR
3.デジタル医療へ向けて
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書籍情報
- ISBN:9784758122047
- ページ数:254頁
- 書籍発行日:2020年3月
- 電子版発売日:2020年4月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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