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- 子どもの心臓聴診 ― 聴診からわかる病態
商品情報
内容
子どもの心臓病の診断法には「心エコー図」が有用であることは,誰でも知っている。しかし,正しい手順で必ず行われているだろうか。見落としはないだろうか。また,心エコー機器が常に手元にあるとは限らない。
診療現場には聴診器が必ずある。正しい聴診を行えば,心機能の良し悪しを簡単に推量することが可能である。聴診での病態の判断は月齢,年齢を超えて共通なので,所見をしっかり把握し,疑問をもち診療に当たることが大切である。 本書を読んで,聞いて,是非,その一歩を踏み出してほしい。
※Webでの聴診音リスニング付き
序文
聴診の意義;序に代えて
今,子どもの心臓病の診断法は?
と問われれば,おそらく全員が即座に「心エコー検査」と答えるだろう。しかし,本当に心エコー検査でしっかりと診断できるだろうか?
見落としはないだろうか?
心エコー検査法の教科書にある手順に忠実に従って記録すれば,診断精度が高いことは疑う余地はない。しかし,実際の診療の場面ですべての患者においてその手順通り検査されているだろうか?
省略はないだろうか?
また,心エコー検査の限界の一つにエコーウィンドウの問題があり,その陰に隠れた所見は当然取れない。また,新生児や重症患者では,検査に長い時間をかけると患者の状態を悪化させるリスクもある。
もう一点,重要なことは,聴診所見は心臓機能の良し悪しを比較的簡単に推量することが可能である。確かに,綿密な心エコー検査の解析を行えば心機能はわかるといわれるが,拡張機能評価を含め果たしてそうであろうか?
成人に使われている諸指標の多くは,成長の早い新生児期乳児期さらには幼児期学童期の子どもたちにそのまま適用してよいのだろうか?
また,小児の診察,特にprimary careの現場で,手近に小児用の心エコー機器が常にあるとは限らない。しかし,聴診での"病態"の判断は,月齢,年齢を超えて共通なもので,その所見をしっかり把握し疑問を持つことが,適切な診療への第一歩である。
形態診断病態診断は,初見時に何かを疑い,その後,陽性所見あるいは陰性所見を探しにいく作業である。詩人金子みすゞは
青いお空のそこふかく,海の小石のそのように,
夜が来るまで沈んでる,昼のお星は眼に見えぬ。
見えぬけれどもあるんだよ。見えぬものでもあるんだよ。と詠っている。これは,われわれにあらゆる物の見方を教えてくれている。一見してそこに無いと思ったら,本当はあるものを無いと判断してしまうが,必ず何かあると思って探しにいくと見つかる。すなわち,何かそこにあるはずだというきっかけがあれば,診断精度を上げることができる。
正しい診断の「きっかけ」となるのが患者の症状や理学所見である。心臓疾患,特に先天性心疾患の診断では,視診,触診,聴診がポイントとなる。いずれも所見を正確に取れるようになるには,それなりの訓練が必要であり,特に聴診所見はバラエティが大きく経験がものをいう。
「右脳と左脳」(角田忠信著,1992年,小学館)という本がある。そのなかに虫の音について書かれている。日本人は普通に散歩をしていても,虫の音にすぐに気づくが,西欧人にはなかなか聞こえない。それは,われわれ日本人が虫の音の"文化"のなかで育ち生活していることによるもので,その文化のない西欧人には聞こえない,すなわち「学習しなかった音は聴き取れない」と述べられている。このことはまさに聴診にも言えることではないか。心音・心雑音の聴診に慣れ親しむ文化を自分のなかに醸成することによって,それまで聴こえなかった音や雑音を聞き分けられるようになる,ということである。
筆者は,東京女子医大勤務時代,入院していたすべての患者さんの聴診を毎日朝夕2回欠かさず30年以上続けてきた。そのお陰で,聴診による診断や病態の把握の精度が向上した。と同時に,これは臨床医にとって最も重要なことであるが,毎日の聴診によって患者・家族との距離が縮まり医師患者間の信頼につながったと確信している。
種々の心音・心雑音を聴けるこの書籍によって皆様の聴診への関心が高まり,心エコー検査の前に聴診する文化が身に付き診断精度が向上することを期待したいし,さらには,聴診という行為によって患者・家族への信頼が高められれば,作成者としては嬉しい限りである。
目次
Ⅰ 総論
A 聴診器
B 聴診の基本
C 心音
D 心雑音
Ⅱ 各論
A 雑音と診断
B 新生児期発症の心疾患
C 乳児期以降発症の主な疾患
D 術後例
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書籍情報
- ISBN:9784758319560
- ページ数:128頁
- 書籍発行日:2019年3月
- 電子版発売日:2019年8月30日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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