骨折の保存的治療[動画付き]

  • ページ数 : 184頁
  • 書籍発行日 : 2016年5月
  • 電子版発売日 : 2016年7月15日
8,800
(税込)
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商品情報

内容

整形外科医が日常的に診察・治療する「骨折」について、その保存的治療の実践を解説。

骨折治療について日常診療の疑問や、患者への説明などもわかりやすく示されています。手術を極めるために、保存的治療の知識と経験を補うための若手整形外科医必携の一冊!
動画は、本文中のリンクより再生可能です。

序文

序文

骨折の治療は本当に奥が深い.医学生のころ,骨折は単純X線写真をみれば容易にわかるであろうし,キャストなどで固定するか,手術でパズルを合わせるように骨片を合わせれば簡単に骨癒合は得られるであろうと考えていた.しかし,それは大きな誤りであった.筆者は整形外科医として二十数年間,骨折などの外傷治療を中心に取り組んできたが,どの部位の骨折も,そしてどのような骨折型であっても,正確な診断,治療法,そしてその予後を知ることがどれほど難しいかを今なお感じ続けている.また実際の骨折患者を目の前にしたとき,たとえ同じ部位の同じような骨折型であっても,患者の年齢,社会的背景,合併症,患者および家族の希望などを考慮した場合,選択される治療法が異なることもある.手術適応について,治療結果がおおむね同じであろうと予測される骨折症例では,いかなる治療法を選択するにせよ,手術をしたほうがよいのか,あるいは保存的治療を選択したほうがよいのかと悩むことが多い.多くの外科医の先輩方から,手術治療を選択する場合,患者が自分の親,妻,子ども,兄妹であっても同等の治療法を選択するか否かを熟考するようにと言われたことを思い出しながら,日々の治療にあたっているのが現状である.

骨折の治療法としては,手術治療が花形である.これは今に限ったことではない.このことは骨折治療についての学会発表,論文,講演会などをみれば,手術治療に関する内容が大半であり,保存的治療について述べられることが少ないことからも明らかである.特にさまざまな新しいインプラントが開発されている昨今では,より一層,手術技法にスポットライトが当てられ,若手整形外科医はそのテクニックを盗むことに大変熱心である.もちろん,そのこと自体が悪いわけではない.骨折治療におけるインプラント開発や手術技術の進歩による恩恵は計り知れない.ただ,よく考えていただきたい.手術治療も保存的治療のどちらも選択され得る骨折の場合,もし数ヵ月後あるいは1 年後の治療結果が同等であるならば,果たしてどのくらいの患者が手術を望むであろうかということを.

近年では,いくつかの部位の骨折に対する手術治療と保存的治療を比較した研究で,治療結果に有意差がみられなかったという報告も散見される.こういった事実を知り,それぞれの治療法の長所と短所を理解したうえで,一人一人の患者に適したオーダーメードの治療が理想となる.しかしながら,保存的治療法自体の知識や経験がなければ,患者にそれを提供することはできず,転位した骨折の単純X 線写真をみるやいなや手術を勧めることになってしまう.小生のような若輩者が,近年の若手整形外科医の保存的治療の知識と経験の欠如を憂うのは恐れ多いが,昨今の手術一辺倒の傾向が強い骨折治療をみると,どうしても保存的治療の可能性,素晴らしさ,奥深さを伝えなければならないと強く感じる.保存的治療は何もしないことではない.保存的治療には正確な診断,最適な肢位と患部の固定,後療法とそのタイミング,患者への説明などが経時的に必要で,繊細で根気強い姿勢が求められる.少し大袈裟ではあるが,外固定が除去されるまでは,すべての診察の機会が手術と同等の集中力と観察力が要求されるのである.このように地味でかつ手間がかかる治療法であるため,保存的治療が上手くいった場合は手術とは異なった充実感と満足感を実感できることも真実である.

われわれは整形外科医であり,手術は大きな治療の一手段となる.外科医だからこそ,さらに保存的治療の実際を知れば,骨折の病態,解剖,生体力学などの理解が深まることで,手術技術が高まることにつながると考える.手術を極めたいのであれば,保存的治療にも卓越すべきである.

2016年3月

目次

・序文

・執筆者一覧

・WEB動画の視聴方法

【第1章 総論 骨折の保存的治療の基本】

01 初期対応と診断のポイント

02 治療戦略の立て方・考え方

03 整復の基本 麻酔,超音波テクニック(1) 神経ブロック(腕神経叢に対する超音波ガイド下神経ブロック)

04 整復の基本 麻酔,超音波テクニック(2) 鎖骨上腕神経叢ブロックの実際

05 固定(キャスト・シーネ)の基本

【第2章 上肢の骨折】

01 鎖骨骨幹部骨折,鎖骨遠位端骨折

02 肩甲骨骨折

03 上腕骨近位端骨折

04 上腕骨骨幹部骨折

05 肘関節周囲骨折(橈骨頚部骨折)

06 橈骨遠位端骨折

【第3章 骨盤・下肢の骨折】

01 寛骨臼骨折

02 脛骨骨折

03 足関節骨折

04 踵骨骨折

05 中足骨骨折

【第4章 小児の骨折】

01 小児大腿骨骨幹部骨折

02 小児下腿骨の骨折

03 小児肘周辺の骨折


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書籍情報

  • ISBN:9784840457934
  • ページ数:184頁
  • 書籍発行日:2016年5月
  • 電子版発売日:2016年7月15日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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