改訂2版刊行にあたって

本書を出版してから、5年が経過しようとしています。皆さんに支持していただいたおかげで、初版を完売することができました。メディカ出版さんから、改訂版出版のお話をいただき、本書を出版することになりました。

5年の間には、当然ですが医療の進歩があり、産婦人科領域でも新しい治療薬が登場しています。漢方は古代中国由来の伝統医学なので、5年くらいでは何の進歩もないんじゃないかと思われる方も多いかとは思いますが、漢方薬の治療効果や治療メカニズム解析に関する新しい知見が国際的な英文ジャーナルにどんどん掲載されています。本書は、漢方だけでなく簡単な女性診療の入門書を目指していますので、今回の改訂では最新のガイドラインを参考にし、西洋医学的にup to dateな内容にするのは当然ですが、漢方治療の部分に関しても新しい知見を取り込むように努力しました。

また5年の間には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに代表される大きな社会変動からの、ストレスの増大が認められます。女性はストレスに対して脆弱な集団であることが知られており、女性診療におけるストレス対策は以前よりも増して重要になってきています。漢方製剤にはアンチストレス効果のある製剤も多く、依存や習慣性といった副作用のない漢方製剤の活用がますます期待できると思います。そこで、今回の改訂では抗不安作用としての漢方治療に関する部分を意識して強化しました。

初版を出版後に気が付いたのは、小児・思春期に関する項目が欠如していた点です。女性診療の開始時点とも考えられる時期であり、小児科・産婦人科・内科の境界にあって、実は非常に重要な時期と考えられるため、新しい節として追加しました。さらに、5年間に私自身が患者さんとのやりとりから学んだことや、本書を読んでいただいた皆さんからの質問なども新しくコラムとして盛り込んでみました。

女性活躍促進において女性診療の充実は重要ですが、産婦人科医だけでなく、他の家庭医の先生方やメディカルスタッフの皆さんが理解することも重要だと思います。初版に対しては、漢方以外の西洋医学的なところももう少し記載してほしいとの要望もいただきました。そこで、産婦人科を専門とされる先生方に役立つのはもちろんですが、一般内科医やメディカルスタッフの方にも十分役立つ書籍となることをさらに意識して改訂を行いました。本書が、女性診療に携わる多くの皆さんのお役に立てば幸いです。

2022年7月

武田 卓