扁平足の診断と治療―新たな名称「PCFD」の概念を含めて文

2020年9月，米国足の外科学会（AOFAS）のコンセンサスグループは「扁平足（flatfoot）」という用語は病態を適切に表していないとし，「PCFD（Progressive Colla p s i ngFoot Deformity）」という新たな名称と臨床病期分類を提唱しました。生下時には多くの場合扁平足で無症候性であることや，アーチの低下（すなわち扁平足）は変形の三次元要素の一つに過ぎないことから「acquired flatfoot」という用語は不適切で使用すべきでない，というのがその理由です。つまり，PCFDは，ばね靱帯と三角靱帯の異常から変形が進展し，3つの変形要素　①　hindfoot valgus（後足部外反），②　mid—／fore—foot abduction（前・中足部外転），③　forefoot varus（前足部内反），からなる三次元的変形であり1），それに適した名称と分類方法が必要であると強調しています。

今後，PCFDという用語は世界標準としてジャーナルに頻出すると思われますが，残念ながら，「扁平足って，手術するんですか？」という質問がいまだに出る日本において，今すぐにPCFDという用語を使用することは混乱を招くことになりかねません。PCFDという用語を日本でも一般的あるいは学術用語として用いるか，という問題は日本足の外科学会にとって喫緊の課題の一つであります。したがって，本特集では混乱を少しでも避けるために「成人期扁平足（PCFD）」と統一して執筆していただきました。幼少期，思春期については従来どおりの表現とさせていただいております。

幼児期扁平足では診断と装具療法処方のタイミングと内容，思春期扁平足では腓骨筋痙性扁平足を呈することが多いので，その病態と治療について述べていただきました。さらにPCFDの概要と病期分類，変形の主因であるばね靱帯と三角靱帯の解剖と異常所見，画像診断，変形進行のバイオメカニクス，保存療法，再建手術について述べていただきました。

執筆者はいずれも各分野のエキスパートであり，今の世界標準を知ることができると思います。扁平足に対する最新の知見に触れていただければ幸いです。

（仁木久照）

【文献】

1） Myerson MS et al：Classification and nomenclature；progressive collapsing foot deformity.Foot Ankle Int 41：1275, Table3, 2020