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臨牀消化器内科 2020 Vol.35 No.4 膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症

  • ページ数 : 100頁
  • 書籍発行日 : 2020年3月
  • 電子版発売日 : 2021年3月3日
3,300
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商品情報

内容

特集「膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症」

膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症はともに先天性の形成異常である。 先天性胆道拡張症のほとんどの症例で合流異常を合併するが、合流異常からみると胆道拡張症を合併しない症例も多い。合流異常や胆道拡張症は胆道癌を合併しやすいため、適切に治療する必要がある。(編集後記より抜粋)

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序文

巻頭言

先天性胆道拡張症(以下,胆道拡張症)は,従来欧米では総胆管囊腫(choledochalcyst)と呼ばれ,Vater1)により1723 年に初めて記載された.膵・胆管合流異常(以下,合流異常)は,Arnolds2)により胆道拡張症の剖検例において膵管と胆道系との異常な形態と長い共通管として1906 年に報告された.そしてBabbit3)が胆道拡張症における膵管と胆道系との異常な合流形態による膵液の逆流が胆道の拡張の原因とする病因論を1969年に発表してから,胆道拡張症と合流異常の関係が注目されるようになり,ERCP の出現と普及により両疾患の認知度および研究は一気に加速した.

合流異常は,解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常であり,胆管に拡張がある胆道拡張症と拡張がない胆管非拡張型に二分される.合流異常では,胆管系と背側膵管は直接合流することはなく,背側膵管系は正常であることから,その発生は腹側膵原基と背側膵原基が癒合する以前の胎生早期における胆管下部と腹側膵の導管系の異常が大きな影響を及ぼすと考えられている.

合流異常では,十二指腸乳頭部括約筋(Oddi 筋)の作用が膵胆管の合流部に及ばないため,膵液と胆汁の相互逆流が起こり,胆道ないし膵にいろいろな病態を引き起こす.通常,膵管内圧は胆管内圧より高いので,合流異常では容易に膵液が胆道系に逆流する(膵液胆道逆流現象).膵液と混和した胆汁がうっ滞し,慢性炎症を基盤にするhyperplasia‒dysplasia‒carcinoma sequence により高率に胆道系に発癌する.本邦の全国集計によると,成人の合流異常における胆道癌発生率は,胆道拡張症で21.6%,胆管非拡張型合流異常で42.4%であり,その局在の割合は先天性胆道拡張症においては胆囊癌62.3%,胆管癌32.1%,胆管非拡張型合流異常においては胆囊癌88.1%,胆管癌7.3%であった.合流異常に合併する胆道癌は,好発年齢が通常の癌発症年齢よりも15~20 歳程度若年であり,胆道同時性・異時性重複癌例が多く,胆囊癌における結石合併率は低いなどの特徴がある.一方,ある状況下では,胆汁の膵管内への逆流も起こり(胆汁膵管逆流現象),膵炎を惹起することがある.

合流異常の診断基準は,2013 年に23 年ぶりに改訂された4).合流異常は,ERCPなどの直接胆道造影やMRCP や3D‒DIC‒CT 像などで,膵管と胆管が異常に長い共通管をもって合流するか,異常な形で合流することを確認することより診断される.また,EUS やmultidetector‒row CT(MD‒CT)のmulti‒planar reconstruction(MPR)像などで,膵管と胆管が十二指腸壁外で合流することを確認できた場合,合流異常と診断できる.しかし,共通管の短い例や複雑な合流形式を有する非典型例では,ERCP により膵管と胆管の合流部に乳頭部括約筋作用が及ばないことを確認する必要がある.胆汁中のアミラーゼの異常高値は,膵液胆道逆流現象を意味し,合流異常を強く示唆する所見である.

胆道拡張症の分類には5 型に分ける戸谷分類5)が広く使われているが,現在,狭義の胆道拡張症は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し,全例に合流異常を合併する戸谷Ⅰa 型,Ⅰc 型とⅣ‒A 型と定義されている6).胆管拡張の診断に関して,従来,成人では胆管径10 mm 以上としてきたが,腹部超音波検査による胆管径の検討にて胆管径は年齢とともに増加することが明らかになり,胆管拡張の診断には年齢に相当する総胆管径の基準値を参考にすることが推奨される.しかし,胆管非拡張型合流異常の診断に胆管形態を考慮するか否かは,決まっていない.

合流異常と診断されれば,胆道の発癌を防ぐために予防的な外科的切除術の適応となる.胆道拡張症では,肝外胆管切除術と胆道再建がなされる.術後,肝側の肝管切除が不十分だと相対的な肝内胆管の狭窄が生じて肝内の胆汁うっ滞から肝内結石が形成され胆管炎を起こしたり,膵側の胆管切除が不十分だと遺残胆管からの発癌や膵石発生が生じることがある.一方,胆管非拡張型合流異常では合併する胆道癌のほとんどが胆囊癌であることより,胆囊摘出のみで経過を観察することが多い.しかし,胆管癌の発生を危惧して肝外胆管切除も行う施設もあり,統一の見解はない.

一方,膵胆管合流部に括約筋作用が及んでいても共通管が長めの例(膵胆管高位合流)では,合流異常と類似した病態が生じることが明らかになり,今後このような例の取り扱いや長期予後に関して検討する必要がある.

「膵・胆管合流異常の診療ガイドライン」が2012 年に世界で初めて発刊された7)が,未解決な項目がまだ多数残存しており,引き続きさらなる検討が必要である.


神澤 輝実

目次

特集一覧

0 巻頭言

Editorial

神澤 輝実

Terumi Kamisawa

1 診断基準

Diagnostic Criteria of Pancreaticobiliary Maljunction and Congenital Biliary Dilatation

古来 貴寛

Takahiro Korai

2 疫学

Clinical Feature of Pancreaticobiliary Maljunction with or without Biliary Dilatation: Nationwide Survey in Japan

石橋 広樹

Hiroki Ishibashi

3 形態的特徴からみた発生論

Embryological Study by Analysis of Morphological Feature of the Congenital Biliary Dilatation and the Pancreaticobiliary Maljunction

藤井 秀樹

Hideki Fujii

4 胆管非拡張型膵・胆管合流異常

Pancreaticobiliary Maljunction without Bile Duct Dilatation

志村 正博

Masahiro Shimura

5 臨床症状と膵胆道合併症

Clinical Features and Complications of Pancreaticobiliary Maljunction

田島 義証

Yoshitsugu Tajima

6 胆道発癌

Carcinogenesis of the Biliary Tract in Pancreaticobiliary Maljunction and Congenital Biliary Dilatation

土田 明彦

Akihiko Tsuchida

7 USとEUS

The role of Ultrasonography and Endoscopic Ultrasonography in the Clinical Practice of Pancreaticobiliary Maljunction and Congenital Biliary Dilatation

植村 修一郎

Shuichiro Uemura

8 CT

CT Diagnosis in Pancreaticobiliary Maljunction

岩崎 将

Susumu Iwasaki

9 MRCP

MRCP Diagnosis in Pancreaticobiliary Maljunction

山本 智支

Satoshi Yamamoto

10 手術

Laparoscopic Surgery for Congenital Biliary Dilatation

森 泰寿

Yasuhisa Mori

11 術後晩期合併症

Late Complication for Surgery of Congenital Biliary Dilatation and Pancreaticobiliary Maljunction

高屋敷 吏

Tsukasa Takayashiki

12 膵胆管高位合流

High Confluence of Pancreaticobiliary Ducts

小川 貴央

Takahisa Ogawa

連載一覧

13 コリンエステラーゼとグレリン

Cholinesterase and Ghrelin

水田 敏彦

Toshihiko Mizuta

検査値の読み方

Laboratory Data

14-1 その2.論文を書くと臨床力は上がるの? …①

加藤 順

英語で論文を書くことの効能・・・学会発表だけじゃダメなんですか?

14-2 その2.論文を書くと臨床力は上がるの? …②

加藤 順

英語で論文を書くことの効能・・・学会発表だけじゃダメなんですか?

15 0—Ⅰp+Ⅱc 型早期大腸癌

0-Ip + IIc Type Early Colorectal Cancer

岸田 圭弘

Yoshihiro Kishida

内視鏡の読み方

Endoscopy

16 トファシチニブ(ゼルヤンツ®)

Tofacitinib (XELJANZ®)

猿田 雅之

Masayuki Saruta

薬の知識

Information of New Drugs

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書籍情報

  • ISBN:9784004003504
  • ページ数:100頁
  • 書籍発行日:2020年3月
  • 電子版発売日:2021年3月3日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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