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臨牀消化器内科 2020 Vol.35 No.6 消化管疾患のER-診断と治療のポイント

  • ページ数 : 112頁
  • 書籍発行日 : 2020年5月
  • 電子版発売日 : 2021年2月24日
3,300
(税込)
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商品情報

内容

特集「消化管疾患のER-診断と治療のポイント」

本特集は明日遭遇するかもしれない対応困難な症例を意識した内容になっています.出血点の同定が困難な下部消化管出血より、多くの治療法が開発された上部消化管出血の死亡率が高いことは、改めて消化管出血治療の難しさが伺えます.心窩部痛症例の造影CTで描出される心筋梗塞には度胆を抜かれます.

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序文

巻頭言

平成30 年版の消防庁の報告1)によると,救急自動車による急病の搬送人員3,686,438 人のうち,消化器系疾患343,910 名(9.3%),呼吸器系疾患340,035 名(9.2%),心疾患317,268 名(8.6%),脳疾患279,267 名(7.6%)と消化器系疾患がもっとも多く,この傾向は16~64 歳で11.2%まで上昇する.呼吸器系の多い小児科,循環器系の多い高齢者と異なり,生産年齢人口においてもっとも多いのが消化器系疾患の救急医療だった.迅速かつ的確に診断治療を行うだけではなく,速やかに社会復帰できることも求められる.

短いサイクルで大きく変化する現代の医療事情であるが,高齢化や新たな薬剤の登場により,腹部救急がどのように変化しているのか,最初に概説をお願いした.また,医療機器の進歩により,消化管疾患に用いるモダリティも変化しているが,現状では画像診断なくして腹痛を語ることはできない.消化管出血の疾病構成も大きく変貌している.Helicobacter pylori 感染率低下,プロトンポンプ阻害薬の普及により酸関連疾患はコントロールが容易になり,上部消化管出血は一見対応しやすくなったように思うが,いったん出血すると中止しなくてはならない薬剤もあり,血栓性疾患の再燃や誤嚥性肺炎など,予後は必ずしも良くなったとは言えない.下部消化管出血は未だに出血コントロールができず,外科的治療を行わざるをえない症例が少なくない.とくに憩室出血は自然止血も多いものの,約3%が死亡することも報告されており2),いったん生じた消化管出血が生命予後に与える影響はきわめて大きいといえる.また,結腸憩室炎は保存的治療で軽快することが多いものの,しばしば再発を繰り返し,外科医へのコンサルトをするタイミングを逃すと緊急手術が必要となる場合があり,注意が必要である.急性虫垂炎は急性腹症ではもっともコモンの疾患であるが,治療戦略が時代とともに変わってきている.自分の医療施設においてbest practice はなにか? という視点から,ご覧いただければ幸いである.腸閉塞も手術の判断が難しい疾患である.単純性・絞扼性(腸重積,捻転含む)の診断と治療だけではなく,内科医が診断に苦慮することが多い内外ヘルニアについて,わかりやすく解説していただいた.だれもが一度はヒヤリハットを経験している血管病変であるが,とくに診断に苦慮する非閉塞性腸管虚血(NOMI)を中心とした構成でまとめていただいた.炎症性疾患には感染性腸炎・非感染性腸炎(膠原病,血管炎,虚血性大腸炎など)・クローン病・潰瘍性大腸炎などがあるが,高度の腹痛,血便などで救急の場で対応することもしばしばである.

特集の後半では,対応に苦慮する腹部救急対策として,抗血栓薬の休薬と再開の指針を取り上げた.高齢化とともに抗血栓薬を服用している方が,なんらかの腹部救急診療で抗血栓薬の休薬が必要になることは少なくない.休薬は原疾患の再発リスクが高まるため,速やかな再投与が必要である.しかし,早すぎると再出血を生じることがあり,臨床現場では大きな問題となっている.その対応の現状と問題点を整理していただいた.また,七転八倒する強い腹痛で来院し,鎮痛薬の効果が悪く,診断に苦慮する疾患として,血管性浮腫がある.この病気を想起できると対応は比較的容易であるが,数日で自然に改善するため,医師が病態を理解しないまま見過ごされていることが多いのが現状である.最後は,排便障害・身体表現障害に伴う救急診療を取り上げた.排便障害は高齢化とともに多くなり,イレウス症状で受診するだけではなく,排便へのこだわりや便秘周辺症状などの対応に,多くのエネルギーを要する場合も少なくない.また,便秘治療薬は新たな薬剤が複数登場し,排便障害の病態によって使い分ける必要がある.バイオフィードバック治療まで行っている数少ない先生に,排便障害による救急医療への対応について,解説をお願いした.

本特集は,消化管疾患の救急医療において,診断と治療のポイントについて解説するだけではなく,患者の複雑な背景を意識した対応について,明日の医療におけるヒントとなることを目標としている.ご執筆いただいた先生方の熱意を感じていただければ幸いである.執筆を快諾していただいた先生方に,この場を借りて御礼申し上げる.


瓜田 純久

目次

特集一覧

0 巻頭言

Editorial

瓜田 純久

Yoshihisa Urita

1 救急医療における消化管疾患の疫学

Epidemiology of the Gastrointestinal Disease in Emergency Medicine

世良 俊樹

Toshiki Sera

2 腹部救急疾患における画像検査の選択

Ideal Choice of the Imaging Diagnoses in the Abdominal Emergencies

水沼 仁孝

Kimiyoshi Mizunuma

3 PPI時代の上部消化管出血・上部消化管穿孔

Upper GI Tract Bleeding and Perforation Under Increased Prescription of PPI

三上 達也

Tatsuya Mikami

4 下部消化管出血

Lower Gastrointestinal Bleeding

今村 倫敦

Noriatsu Imamura

5 難治性・再発性憩室炎 ― S状結腸膀胱瘻を中心として

Complicated Diverticulitis -- Colovesical Fistula

富沢 賢治

Kenji Tomizawa

6 急性虫垂炎の診断と治療

Diagnosis and Treatment of Acute Appendicitis

渡邉 学

Manabu Watanabe

7 腸閉塞のCT画像診断

CT Imaging Diagnosis of Bowel Obstruction

島田 長人

Nagato Shimada

8 消化器内科が遭遇する血管病変 ― 上腸間膜動脈閉塞症,急性大動脈解離,NOMI,虚血性腸炎

The Vascular Diseases Encountered by Gastroenterology : Superior Mesenteric Artery Occlusion, Acute Aortic Dissection, Non—occlusive Mesenteric Ischemia, Ischemic Colitis

鈴木 修司

Shuji Suzuki

9 救急医療で遭遇する腸炎

Acute Colitis in Emergency Medicine

中嶋 均

Hitoshi Nakajima

10-1 対応に苦慮する腹部救急対策 (1) 抗血栓薬の休薬と再開の指針―急性消化管出血に対する抗血栓薬の対応

Management of Antithrombotic Agents in Acute Gastrointestinal Bleeding

石井 孝政

Takamasa Ishii

10-2 対応に苦慮する腹部救急対策 (2) 診断が困難な補体病―C1インヒビター欠損症・血管性浮腫

Hypocomplementemia That is Difficult to Diagnose: C1 Inhibitor Deficiency, Angioedema

前田 正

Tadashi Maeda

10-3 対応に苦慮する腹部救急対策 (3) 排便障害,身体表現性障害に伴う救急医療

Emergent Medicine of Defecation Disorder and Physical Expression Disorder

水城 啓

Akira Mizuki

連載一覧

11 食道胃接合部に発生し扁平上皮下浸潤を伴った小SM腺癌の1例

A Case of Small Submucosal Adenocarcinoma with Subsquamous Tumor Extension in the Esophagogastric Junction

郷田 憲一

Kenichi Goda

内視鏡の読み方

Endoscopy

12 サラゾスルファピリジン服用後に発生した2峰性の肝障害の1例

A Case of Liver Dysfunction Associated with Salazosulfapyridine

魚嶋 晴紀

Haruki Uojima

検査値の読み方

Laboratory Data

13 Sit—stand endoscopic workstation ― 人間工学から考える内視鏡

Practical Approach for Improving Musculoskeletal Disorders Using Ergonomic Sit‒stand Endoscopic Workstation

松崎 一平

Ippei Matsuzaki

手技の解説

Technique

14-1 その4.前向き研究のほうがエライの? …①

加藤 順

英語で論文を書くことの効能・・・学会発表だけじゃダメなんですか?

14-2 その4.前向き研究のほうがエライの? …②

加藤 順

英語で論文を書くことの効能・・・学会発表だけじゃダメなんですか?

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書籍情報

  • ISBN:9784004003506
  • ページ数:112頁
  • 書籍発行日:2020年5月
  • 電子版発売日:2021年2月24日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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