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- 医学のあゆみ274巻9号 AIが切り拓く未来の医療
商品情報
内容
企画:浜本隆二(国立研究開発法人国立がん研究センター研究所分野長,一般社団法人日本メディカルAI学会代表理事)
・近年,深層学習を中核とした機械学習技術の進歩,安価で高性能のGPUの登場を含む情報基盤技術の進歩,またパブリックデータベースの拡充などにより,大規模なデータを利活用することが容易になってきた.
・医療AIに対する期待および可能性は大きいものの,改正個人情報保護法の下で要配慮個人情報と定められた医療情報の取り扱い,また機械学習・深層学習技術に特有の問題点など,解決すべき課題も多いのが現状である.
・本特集は医学分野・情報科学分野のみならず,法律,生命倫理,プライバシー,医療機器の薬事規制など,さまざまな分野において国内第一線で活躍しておられる専門家に,医療AIの現状・期待・課題を論じていただく.
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序文
はじめに
浜本 隆二
国立研究開発法人国立がん研究センター研究所分野長,
一般社団法人日本メディカルAI 学会代表理事
近年,深層学習を中核とした機械学習技術の進歩,安価で高性能のGPU(graphics processing unit)の登場を含む情報基盤技術の進歩,またパブリックデータベースの拡充などにより,大規模なデータを利活用することが容易になってきた.その結果,人工知能(artificial intelligence:AI)技術に対する期待が高まっている.世界的にも,18世紀後半に英国で起こった産業革命に準え,現在のAI,IoT(internet of things)およびビッグデータなどによる技術革新を第四次産業革命(Industry 4.0ともよばれる)と命名し,各国で革新的な情報技術を基盤とした新しい社会構造・産業構造の創出が試みられている.その動向は生産,販売,消費といった経済活動のみならず,健康,医療,公共サービスなどの幅広い分野や人々の働き方,ライフスタイルにも影響を与えると考えられている.
このような状況下,わが国においても政府が策定した第5期科学技術基本計画が2016(平成28)年1月22日に閣議決定され,そのなかで“Society 5.0”という新たな概念の実現が打ち出された.“Society 5.0”においてはAI,IoT,ビッグデータ,ロボットなどの新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し,一人一人のニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会の構築をめざしており,AIはその中核的基盤技術として捉えられている.健康・医療分野も“Society 5.0”における重点領域になっており,わが国においてもヘルスケア分野へのAI導入が積極的に進められている.一方,医療分野は薬機法や個人情報保護法などデリケートな問題が多く,法整備・ガイドライン整備なども同時に進めながら慎重に進めていく必要性を感じている.また,医療AIに対する期待および可能性は大きいものの,改正個人情報保護法の下で要配慮個人情報と定められた医療情報の取り扱い,また機械学習・深層学習技術に特有の問題点など,解決すべき課題も多いのが現状である.わが国において当該分野を健全に発展させていくためにも,医学分野や情報科学の専門家のみならず法律の専門家,生命倫理の専門家など,さまざまな分野の叡智を集結させ,推進していく必要性を強く感じている.
そこで本特集は医学分野・情報科学分野のみならず,法律,生命倫理,プライバシー,医療機器の薬事規制など,さまざまな分野において国内第一線で活躍しておられる専門家の先生に,医療AIの現状・期待・課題を論じていただき,わが国における当該分野の動向を的確に理解していただくことを意識して編集した.本特集により現状をご理解いただき,一人でも多くの方々にわが国における医療AI発展に向けた取り組みにご協力いただき,その成果が一日でも早く患者に届くことを心より願っている.
目次
特別提言――AI時代の“臨床医学のまなざし” 永井良三
AI技術の動向
人工知能研究のこれまでとこれから 杉山将
統計的学習機械の医療応用――PLRM,dPLRMの場合 田邉國士
深層学習の興隆と医療における今後の展望 大田信行・岡野原大輔
医用画像解析におけるパターン認識 備瀬竜馬・内田誠一
スモールデータ深層学習とその医用画像処理・診断支援への応用 鈴木賢治
AI技術を用いた医用画像解析
AIを用いた内視鏡画像診断 山田真善
深層学習技術を活用した放射線画像解析 小林和馬
病理画像に秘められた可能性の探求――AIによる知識の拡張 山本陽一朗
AIを用いた超音波画像診断 小松正明
多施設データを用いたradiomics解析 高橋慧・高橋雅道
AI技術を用いたオミックス解析
機械学習を用いたゲノム研究 瀬々潤
機械学習技術を駆使したエピゲノムデータの本質的意義の解明――多様化する機械学習法の利活用 金子修三
人工知能技術による大規模ゲノムコホート・バイオバンク解析 田宮元
AI技術を利用したマルチオミックス解析 浅田健
ビッグデータ時代における医療情報学分野
次世代健康医療記録システムの共通ICTプラットフォーム構想 大江和彦
ビッグデータ・AIがもたらす医療のイノベーション 田中博
AI解析を志向した医療情報統合プラットフォームの構築 田中勝弥・他
自然言語処理と医療への応用
言語処理とテキストマイニング 辻井潤一
電子カルテデータを用いた診断支援システムの構築 荒牧英治・他
統合データベースのための専門用語を考慮した再帰的パラフレーズ検索 竹内俊貴・他
AI技術の創薬への応用
人工知能(AI)を用いた創薬プロセスの加速におけるデータの重要性 渡邉怜子・水口賢司
AIが拓くデータ駆動型創薬とリポジショニング 山西芳裕
AI技術の実臨床への応用
内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ 小澤毅士・多田智裕
AI技術を用いたゲノム医療へ 井元清哉
精神医学へのAI技術の応用 木下翔太郎・岸本泰士郎
慶應義塾大学病院における内閣府AIホスピタルプロジェクト 洪繁・他
眼科領域におけるAIの活用 升本浩紀
AI技術の実臨床への応用 宮木康成
人工知能を用いた皮膚腫瘍予測システムの開発 陣内駿一・山﨑直也
医療AIの生命倫理,安全および法的整備
医療AIと医療倫理――患者・市民とともに考える企画の試みから 武藤香織・井上悠輔
医療AIとサイバーセキュリティ 村田敬
AI倫理とプライバシー 中川裕志
AIを利用した医療機器の薬事規制のあり方 中岡竜介・古川浩
医療AIと法律 板倉陽一郎
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書籍情報
- ISBN:9784006027409
- ページ数:224頁
- 書籍発行日:2020年8月
- 電子版発売日:2021年2月5日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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