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- 医学のあゆみ287巻10号 補体revisited―抗補体療法はどこまで進んだか?
商品情報
内容
・補体の過剰な活性化は,自己免疫疾患,腎炎,心筋梗塞や脳梗塞などでの虚血再灌流障害,神経変性疾患,移植片対宿主病(GVHD)からCOVID-19重症化に至るまで,さまざまな炎症性疾患の病態形成に関わっていることが推測されている.
・2000年代には遺伝子工学的に作製された抗体による分子標的療法が可能になり,2007年にエクリズマブがfirst-in-classの抗補体薬として登場した.今特集では,“補体の魅力と抗補体薬のすべて”読者に届けられるよう,第一人者の先生方に執筆をお願いした.
序文
はじめに
補体(complement)は1880~1890年代にかけて抗体とともに微生物を死滅させる易熱性の血漿成分として発見された.その後の研究の進展に伴い,補体は感染防御に働く液性因子としての役割だけではなく,凝固系の活性化,免疫細胞の増殖や活性化,上皮細胞,神経細胞や骨などの臓器形成,組織の再生など“多面的”な機能を有することが明らかになってきた.実際の臨床においても,補体の過剰な活性化は自己免疫疾患,腎炎,心筋梗塞や脳梗塞などでの虚血再灌流障害,神経変性疾患,移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化に至るまで,さまざまな炎症性疾患の病態形成に関わっていることが推測されている.補体が関与する疾患は実に“多様性”に富んでいる.
補体を特異的に抑制する抗補体薬の創薬は長らく停滞していた.その理由として,補体はたくさんの分子や受容体が多面的な作用を発揮するため標的が定めにくいことがあげられる.そして,さらにいえば補体の重要性が免疫学のなかで長らく認識されていなかったことも創薬が遅れた理由であろう.
2000 年代になって抗体医薬が実用化されると抗補体薬をめぐる環境も一変した.遺伝子工学的に作製された抗体による分子標的療法が可能になったのである.そして,ついに2007年にエクリズマブ(商品名:ソリリス)がfirst-in-classの抗補体薬として登場した.エクリズマブは補体C5に結合するモノクローナル抗体であり,C5の活性化を阻害する.エクリズマブがもたらした成功は,補体の炎症性疾患における重要性を再認識させ,新たな抗補体薬の積極的な開発につながっている.わが国でも最近アバコパン(C5a受容体拮抗薬,商品名:タブネオス),スチムリマブ(抗C1sモノクローナル抗体,商品名:エジャイモ)が承認された.
今回の特集では“補体の魅力と抗補体薬のすべて”を読者の皆様方に届けられるように,それぞれの第一人者の先生方に執筆をお願いした.皆様のお役に立てることを確信している.
堀内孝彦
Takahiko HORIUCHI
地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市民病院
目次
特集
補体revisited ─ 抗補体療法はどこまで進んだか?
はじめに ─ 補体の多面性と関連疾患の多様性 堀内孝彦
臨床に応用する補体の基礎知識 大澤 勲
溶血性貧血 植田康敬・井上徳光
非典型溶血性尿毒症症候群─ 腎疾患に対する抗補体薬の過去と現在,そして未来 水野正司
自己免疫性神経疾患 宮本勝一
ANCA関連血管炎 木本泰孝
自閉スペクトラム症と補体C1q 奥 健志
新規抗補体薬の展開 ─ 研究の最前線 西村純一
連載
医療システムの質・効率・公正 ─ 医療経済学の新たな展開18
保健医療の経済学と行動経済学 後藤 励
遺伝カウンセリング ─ その価値と今後⑧
成人領域における遺伝カウンセリング 柴田有花・山田崇弘
TOPICS
神経精神医学
交代勤務・夜勤と認知症リスク 小路純央・内村直尚
医療
チーム医療における医療ソーシャルワーカーの役割 野口百香
FORUM
世界の食生活⑦
トルコ人の社交のハレとケ ─ ケシュケキとトルココーヒー 田村うらら
戦後の国際保健を彩った人々④
菅波茂 ─ 多国籍医師団AMDAの人道支援活動 山本太郎
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書籍情報
- ISBN:9784006028710
- ページ数:70頁
- 書籍発行日:2023年12月
- 電子版発売日:2023年12月4日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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