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医学のあゆみ290巻6・7号 新規がん免疫療法としてのT-cell engagerの進歩と可能性

  • ページ数 : 70頁
  • 書籍発行日 : 2024年8月
  • 電子版発売日 : 2024年8月12日
1,650
(税込)
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商品情報

内容

・抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)によりがん患者の予後は飛躍的に改善したが,すべての患者に効果があるわけではなく,新たな治療法の開発が求められてきた.
・T-cell engagerは,ICIとは異なる機序でT細胞を活性化してがん細胞を攻撃する新たな免疫療法であり,注目と期待を集めている.一方で,サイトカイン放出症候群や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)など,従来の薬物療法やICIにはなかった特徴的な副作用が認められている.
・本特集では,T-cell engagerの治療開発の現状,副作用管理,今後の方向性について解説する.

序文

はじめに

近年,抗PD-1(programmed cell death 1)抗体,抗PD-L1(programmed cell deathligand1)抗体,抗CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)抗体などの免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の登場により,がん患者の予後は飛躍的に改善してきた.しかし,ICI はすべてのがん患者に効果を示すわけではなく,効果を示さないがん患者の予後は依然として厳しく,新たな治療法の開発が待ち望まれていた.

T-cell engager は,従来のICI とは異なるメカニズムによってT 細胞を活性化させ,がん細胞を標的として攻撃する,新たながん免疫療法のひとつとして急速に注目を集めてきている.造血器腫瘍であるB 細胞性急性リンパ性白血病において,CD19 とCD3 を標的とした二重特異性T 細胞誘導抗体であるブリナツモマブが良好な治療成績を示し,すでに承認され,実臨床では使用可能となっている.また,肺がん,特に小細胞肺がんでは,デルタ様リガンド3(delta-like protein 3:DLL3)とCD3 を標的とした二重特異性T 細胞誘導抗体のtarlatamab が,長期間の奏効など有望な抗腫瘍効果を示すことが報告され,ICI に次ぐ新規がん免疫療法として承認が待たれている.また,他の造血器腫瘍や固形腫瘍でも,新規のT-cell engager の臨床開発が盛んとなってきている.一方で,サイトカイン放出症候群や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(immune effector cell-associated neurotoxicitysyndrome:ICANS)といった神経毒性など,従来の薬物療法やICI ではこれまで経験してこなかったような特徴的な副作用を認めるため,T-cell engager の臨床応用では新たな副作用対策を行っていくことが重要となると考えられる.

本特集では,こうしたT-cell engager の治療開発の展開を踏まえて,新規がん治療薬の開発に携わっておられる各領域の専門家の方々に,各がん腫でのT-cell engager の治療開発の現状,副作用管理,今後の方向性について解説していただいた.本特集が,がん治療に携わる方々のがん薬物療法の最新の知見の理解の一助となれば幸いである.


吉田達哉
Tatsuya YOSHIDA
国立がん研究センター中央病院呼吸器内科,同先端医療科,
臨床開発推進部門トランスレーショナルリサーチ推進部トランスレーショナルリサーチ推進室

目次

特集 新規がん免疫療法としてのT-cell engagerの進歩と可能性

はじめに

 吉田達哉

T-cell engagerの作用機序および耐性機序

 野村幸太郎・熊谷尚悟

造血器腫瘍(白血病・悪性リンパ腫)に対する

T-cell engagerの位置づけ

 大地哲朗・棟方 理

多発性骨髄腫治療における二重特異性抗体

 飯田真介

肺がん(特に小細胞肺がん)における

T-cell engagerの可能性

 赤松弘朗

固形腫瘍におけるT-cell engagerの開発状況

 佐藤 潤

T-cell engagerに特徴的な副作用および毒性マネジメント

湯田淳一朗

次世代T-cell engagerの可能性および開発の方向性

 北野滋久

TOPICS

免疫学

RelA変異によるインターフェロノパチー

 森谷邦彦

生化学・分子生物学

月面重力下におけるマウス下肢骨格筋の質的変化と量的変化

 林 卓杜・他

連載

臨床医のための微生物学講座20

リステリア菌とリステリア症

 篠原 浩

緩和医療のアップデート15

がん患者における泌尿器症状の緩和ケア:

エビデンスアップデート

 河原貴史

自己指向性免疫学の新展開 ─ 生体防御における自己認識の功罪❼

腸内細菌を自己として認識するγδT17細胞による

宿主‒腸内細菌共生関係構築

髙橋大輔

FORUM

死を看取る ─ 死因究明の場にて21

死因究明の実践④

 大澤資樹

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書籍情報

  • ISBN:9784006029006
  • ページ数:70頁
  • 書籍発行日:2024年8月
  • 電子版発売日:2024年8月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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