別冊「医学のあゆみ」アトピー性皮膚炎UPDATE

  • ページ数 : 128頁
  • 書籍発行日 : 2016年12月
  • 電子版発売日 : 2019年3月29日
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商品情報

内容

治療については,ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬によるプロアクティブ療法が最近の話題となっている.プロアクティブ療法とは,まず十分に寛解を誘導し,その後,週に2~3回外用を継続することによって再燃を低下させるというものである.プロアクティブ療法の理論的背景となっている考え方が,(1)一見正常にみえる皮膚でも,subclinicalな炎症が残っている(まずは十分な寛解誘導が重要である),(2)炎症を再燃させることによってフィラグリンなどの発現が低下し,バリア機能に異常をきたす,というものである.このようにフィラグリン発現異常に代表されるADの新しい病態は,プロアクティブ療法という新しい治療がなぜ有効かという理論的背景になり,この病態と治療の両輪がかみ合ってADの最近の進歩を加速させている.
本特集ではこれらの知見を軸に,ADの新知見についてまとめた.本疾患の理解の向上のためにお役に立てれば幸いである.

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序文

はじめに

最近,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)に対する病態の理解が飛躍的に進んだ.その中心をなすものは,AD におけるフィラグリン遺伝子変異の発見である.日本人のAD の約30%がフィラグリン遺伝子変異を有している.また,フィラグリン遺伝子変異がなくても,AD の免疫異常のひとつであるTh2 サイトカインによって蛋白レベルでフィラグリン発現が低下するなど,免疫異常がバリア機能異常に影響を及ぼしている可能性も指摘されている.さらに,フィラグリンだけではなく,角化関連蛋白であるロリクリンやインボルクリンの発現低下やtight junction の異常も報告されている.これらを合わせると,相当数のAD患者が何らかの角化関連蛋白の発現異常を有していることが想像できる.

治療については,ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬によるプロアクティブ療法が最近の話題となっている.プロアクティブ療法とは,まず十分に寛解を誘導し,その後,週に2~3 回外用を継続することによって再燃を低下させるというものである.プロアクティブ療法の理論的背景となっている考え方が,①一見正常にみえる皮膚でも,subclinicalな炎症が残っている(まずは十分な寛解誘導が重要である),②炎症を再燃させることによってフィラグリンなどの発現が低下し,バリア機能に異常をきたす(週2~3 回の外用によって再燃を防ぎ,バリア機能を正常に保つ),というものである.

このようにフィラグリン発現異常に代表されるAD の新しい病態は,プロアクティブ療法という新しい治療がなぜ有効かという理論的背景になり,この病態と治療の両輪がかみ合ってAD の最近の進歩を加速させている.

本特集ではこれらの知見を軸に,ADの新知見についてまとめた.本疾患の理解の向上のためにお役に立てれば幸いである.


東京大学大学院医学系研究科皮膚科学

佐藤 伸一

目次

疫学・病態生理

1.アトピー性皮膚炎の疫学

2.アトピー性皮膚炎と衛生仮説

3.アトピー性皮膚炎のT細胞の異常

4.アトピー性皮膚炎の病態形成におけるB細胞の役割

5.外因性と内因性アトピー性皮膚炎―臨床的二大分別法

6.アトピー性皮膚炎のバリア異常

診断・治療

7.アトピー性皮膚炎のガイドライン概説

8.アトピー性皮膚炎の病勢を示す検査値

9.経皮感作とアレルギーマーチ

10.アトピー性皮膚炎と食物アレルギー

11.小児アトピー性皮膚炎の治療のポイント―母親をよき治療者に

12.アトピー性皮膚炎の治療アドヒアランス

13.アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法

14.食物アレルギー予防介入としての外用療法の意義と方法

15.インバースアゴニストとしての抗ヒスタミン薬

16.アトピー性皮膚炎の全身療法

17.アトピー性皮膚炎とスキンケア

18.アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤治療―あらたな治療ターゲット

19.アトピー性皮膚炎の生活指導―外用治療のこつと悪化因子対策

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書籍情報

  • ISBN:9784006528463
  • ページ数:128頁
  • 書籍発行日:2016年12月
  • 電子版発売日:2019年3月29日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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