序　説

現在進行している『臨床画像』の大幅な内容変更の試みに先駆けて昨年4月に発刊されたスーパーセレクション号は，幸いにして好評を得ましたが，今年もそれに続く第2弾として，2021年スーパーセレクション号をここにお届けいたします。

選ばれた論文は内容的には前回に劣らないものと自負していますが，著者の先生方の今まで以上のご努力も加わった結果として，さらに充実した内容になっているのではと考えています。

“スーパーセレクション”のもともとの考えは，学会などで好評を得た講演や発表を，その場だけに埋もれさせない方法の1つとして考えられた点にあります。さらに今回は異なる状況として2020〜2021年にかけてのコロナウイルスの蔓延により，今までどおりの学会がほとんど開催できず，web開催という従来にはなかった形態に変わりました。その結果，このような環境になじんでいない多くの放射線科医にとって，新知見や新技術にかかわる情報収集が従来どおりにはいかなかった可能性があります。それまでは，異なる学会場をめぐりながら，少ない努力で異なる分野の異なる知見や技術に接することが可能で，まさしく足で稼ぐ情報収集の時代でしたが，今回は異なるアプローチを余儀なくされたと思います。われわれも新たなネット環境のなかで，各方面の先生方にご推薦をいただき，さらに編集に協力してくださる先生方にも専門的なご助言をいただいて，インパクトの高い教育講演や研究発表をお選びいただきました。これらは主に日本医学放射線学会の2020年春の総会と同秋季大会の教育講演と研究発表から，掲載論文を選ばせていただいています。このような学会の教育・研究活動の成果の利用をご許可いただいた日本医学放射線学会のご厚意に深く感謝しております。

今回のスーパーセレクションは放射線診断領域の全般から，トピックスを選んでいます。内容的には，頭部（頭頸部を含む）・胸部（心・大血管を含む）・腹部・救急分野において，古典的ながらも細部にわたる内容を含めた教育的知見，人工知能にかかわる新技術の応用，さらには新たな知見への展開や新技術による新たな診断の幕開けを予感させる内容まで多岐にわたっています。また短期間にパンデミックを引き起こし，大きな社会現象となっているコロナウイルス感染へのCTの寄与について，示唆に富む画像診断の話題も含まれています。

昨年のスーパーセレクションに続く今回の刊行もその名にふさわしい内容であり，『臨床画像』が目指す読者層である医療の最前線に立つ若手の放射線科医の先生方に，十分に役立てていただける内容であると信じています。力の至らない点もあるかと存じますが，ご意見をいただければ，次回に向けての検討材料として2022年号に役立てていくことになります。今回はコロナ禍の大変な状況のなかでこのような特集にご執筆をいただいた先生方に感謝を申しあげます。

『臨床画像』編集委員会　江原　茂（編集主幹）