特集にあたって

筑波大学医学医療系整形外科　山崎正志

腰椎分離症については，成長期のアスリートに多く発生し，日常診療でもしばしば遭遇する疾患である．しかしながら，その病態・診断・治療については，いまだに解明されていない点が少なくない．また，新たな診断技術や治療法の開発により，年々その診療体系が進化している．その意味で，腰椎分離症に関する最新の情報を整理することは，脊椎疾患の診療に携わる者にとって大きな意味をもつように思う．

病態については疲労骨折として解釈されることが多いが，どのような運動・スポーツで生じやすいのか，発生機序は力学的な視点も含めてどのように説明されているのか，素因との関連はどこまで明らかになっているのか，疫学的なデータはどのようにまとめられているのかなどの情報がほしいところである．

臨床的な観点からは，症状はいかなるもので，そしてどのように発現し経過するのか，分離部は形態的にどのように変化していくのか，偽関節に移行してしまう時期はいつ頃なのか，片側分離と両側分離で症状はどのように異なるのかなどについての情報を整理したい．

画像診断については，単純X線で分離の初期像を捉えることは困難だが，いつ頃からX線で診断できるようになるのか，CTでの診断はどの時期から可能か，MRI では骨髄浮腫をどの時期からどのような所見として捉えることができるのかなどの知見がほしい．また，診断に難渋した例，発症の初期に他疾患と診断されて治療が行われていた例については，鑑別診断のポイントが共有されることにより，今後の診療の現場で大いに役立つであろう．

保存治療については，どのような装具療法が実際に行われ，そしてどの程度の効果があるとされているのか，片側分離と両側分離での治療法はどのように異なるのか，スポーツ活動の制限はどの程度の期間行うべきか，そしてスポーツ復帰に際しては何に注意を払うべきかなどの情報がほしい．運動療法が有効であるとの報告があるが，具体的にどのような運動療法を行うのが望ましいか，そして実際の運動療法のノウハウを知りたいところである．

手術治療ではSmiley face rod法をはじめとする分離部修復術が話題に上がることが多いが，わが国ではどのような術式がいかなる適応で施行され，そしてそれらの成績はどのように報告されているのか，手術のコツはいかなるものなのかなど興味が尽きない．

上述のように腰椎分離症について知りたい事項は多々あるが，本誌ではこれまで腰椎分離症に特化した特集は組まれていない．今回，ぜひとも腰椎分離症の病態・診断・治療についての最新の知識を整理したいと思い，本特集を企画した．実際の現場で腰椎分離症の診療に携わっている先生方に執筆をお願いし，診断・治療のポイントについて具体的に記載していただいた．ぜひご熟読いただき，読者の先生方の知識の整理・向上にお役立ていただければ幸甚である．