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- 診断と治療 2023年 Vol.111 No.4【特集】虚血性心疾患:日常診療から専門医による治療まで
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序文
ねらい
虚血性心疾患:日常診療から専門医による治療まで
虚血性心疾患は心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)の内腔が狭窄,または閉塞をきたすことによって起こる疾患であり,狭心症や心筋梗塞を指す.
狭心症は心筋虚血に起因する胸痛および放散痛を主訴とする疾患(症候学的病名)であり,その臨床症候から,安定狭心症と不安定狭心症に大別される.冠動脈内腔の有意狭窄がある場合に,冠動脈プラークが安定であれば,心筋に一定以上の負荷がかかった(例:上り坂を急ぎ足で歩く)ときにだけ心筋の酸素需給バランスが崩れて一過性心筋虚血発作をきたす(安定狭心症).運動負荷心電図や運動負荷心筋シンチグラフィによる一過性心筋虚血の証明がその診断に有用である.一方,破綻しやすい不安定なプラークを有する冠動脈病変は,冠動脈内腔狭窄度とは必ずしも関係なく,不安定狭心症をきたし,プラーク破綻から最終的に冠動脈血栓性閉塞をきたすと,血流途絶領域の心筋が心内膜下壊死,あるいは,貫壁性壊死に陥る.心筋梗塞(病理学的病名)の発症である.心筋梗塞は超急性期に診断して適切な血行再建療法を行わないと,心筋のリモデリング(心室壁菲薄化,心室拡張)や心不全,不整脈などをきたし,慢性期に心機能が低下して生命予後不良となる.
ここ30 年間の急性心筋梗塞,不安定狭心症に対する治療の進歩(特にPCI 治療の進歩)は目覚ましく,golden time を逃さずに適切なカテーテル治療を受けることさえできれば,救命率,予後は決して悪くない.また,虚血性心疾患発症・再発リスク(冠危険因子)に関する疫学的検討が進み,十分なリスク管理を行うことで発症・再発を予防できることも明らかになってきた.
胸部症状を訴えて来院する初診患者,また,心筋梗塞の既往がある「慢性期」フォローアップ中の患者など,内科の日常診療において虚血性心疾患の患者を避けて通ることはできない.急性期治療・PCI 治療以外のほとんどすべての診療プロセス,すなわち,胸痛の鑑別診断,専門医への紹介,慢性期のフォローアップ・投薬,再発予防,再発の見極めなどの診療プロセスは一般内科医の手に委ねられている.一般内科医は虚血性心疾患に関して十分に理解し,診療技術を高め,さらに適切なタイミングで専門医にコンサルトできる技術を日頃から身につけておく必要がある.
本特集「虚血性心疾患:日常診療から専門医による治療まで」では,エキスパートの先生方に,虚血性心疾患の疫学,病態,診断,急性期治療,再発予防,慢性期治療についてわかりやすく解説いただいた.本特集が,一般内科医の先生方にとって虚血性心疾患診療の全体像に関して理解を深め,専門医の先生方と連携して虚血性心疾患患者を診療する際の一助になれば幸いである.
東京大学大学院医学系研究科循環器内科学講座
森田啓行
目次
特集:虚血性心疾患:日常診療から専門医による治療まで
ねらい 森田啓行
虚血性心疾患の疫学,病態,検査
虚血性心疾患の疫学と予後 香坂 俊
安定狭心症,不安定狭心症,心筋梗塞の病態 伊苅裕二
冠動脈病変の画像診断:CT,MRI 上原雅恵
冠動脈病変の画像診断:冠動脈造影・血管内超音波 小倉邦弘,他
心筋虚血を評価する:負荷心電図,負荷心エコー 中尾倫子
心筋虚血を評価する:シンチグラフィ,PET,MRI 橋本 順
虚血性心疾患を診る,治す
心筋梗塞の超急性期診断と専門医への迅速な紹介 藤田英雄
胸痛をきたす他疾患との鑑別と専門医への紹介 澤山裕一,他
心筋梗塞慢性期の薬物治療 清末有宏
心筋梗塞慢性期患者のフォローアップ:専門医コンサルトのタイミング 日置紘文,他
循環器専門医による慢性期PCI 小宮山浩大,他
心筋梗塞後の心臓リハビリテーション 中山敦子
注目の病態・話題
冠攣縮性狭心症 辻田賢一
たこつぼ症候群(たこつぼ型心筋症) 石原正治
心内膜下梗塞 朝倉清史,他
冠動脈血行再建:PCI vs. CABG 田口裕哉
連載
心電図は1枚の窓
動悸を主訴に受診した75歳女性 前田真吾
注目の新薬
ボカブリア®(カボテグラビル),リカムビス®(リルピビリン)併用療法 阿部静太郎,他
臨床例
膀胱癌に伴ってActinomyces neuii菌血症をきたした1例 瀬戸まなび,他
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書籍情報
- ISBN:9784015011104
- ページ数:130頁
- 書籍発行日:2023年4月
- 電子版発売日:2023年4月4日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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