学生からは日頃，「実地問題が苦手です．得点が安定しません」「答えを2つまでは絞れても，いつも正答と違うほうを選んでしまうんです」という声が多く寄せられます．読者のみなさんもそう思われたことがあるのではないでしょうか．

そこで本書は，「読解力を必要とする実地問題が苦手な学生さんでも，まずこの1冊をやりきることで，解けるようになる」ことを目標に作り始めました．筆者はたくさんの学生の悩みや質問を受ける中で，どのような勉強法を教えたらよいか悩んでいました．解剖学や生理学のように「知識の修得」が主体となる科目に比べ，実地問題では読解力が求められるからです．ここ数年の実地問題は長文化し，イラストや図表を多用する傾向にあり，臨床思考過程を問うような問題が増えています．しかし，出題者は，設問中にある情報（病名や特徴的な症状，評価データなど）から正答を導けるように問題を作成しています．言い換えると，正答を導くための情報（＝ヒント）を設問内に散りばめているということです．つまり，情報を整理し読み解くことができれば，正答を導くことができ得点力が向上します．

本書では国試頻出分野を中心に，厳選した問題を11講（脳血管障害，高次脳機能障害／神経難病，脊髄損傷，認知症，統合失調症，うつ病，摂食障害，パーソナリティ障害，神経症性障害，ストレス関連障害および身体表現性障害／アルコール依存症，注意欠如・多動性障害／自閉スペクトラム症，作業場面の分析）に分けて収載しています．各講の最初に「テーマ別ポイント」として，基本的な知識や作業療法アプローチをまとめ，基本的な病態や作業療法士の対応などについてイメージしやすいようにイラストを使いながら解説しています．また，実地問題を解くページでは，読解のポイントをまとめた「設問構造の確認」というコーナーを作り，マーキングしながら情報の整理や内容の解釈の仕方をまとめています．そして，各選択肢の解説（正解や不正解），語句の説明はイラストを用いてできる限りくわしく解説しています．

本書には，国試の過去問題だけでなく，医歯薬出版模擬試験の過去問題からも国試頻出問題を選び，演習問題として収載しています．「テーマ別ポイント」で知識を整理し，「設問構造の確認」を踏まえて国試の過去問題に取り組み，その後，演習問題を解く，知識が曖昧な場合は「テーマ別ポイント」に戻り，あらためて知識を整理する．このサイクルでパワーアップすれば，実地問題の得点が必ず安定するでしょう．

読者の皆さんが国家試験の合格を見事に勝ち取り，素敵な作業療法士として活躍されることを心から願っております．

2021年10月

吉田　健