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新版 看護のコミュニケーション・センス アクティブラーニングで仲間とみがく

  • ページ数 : 180頁
  • 書籍発行日 : 2024年1月
  • 電子版発売日 : 2024年1月20日
3,190
(税込)
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商品情報

内容

学習上の工夫が徹底的に凝らされた看護コミュニケーションのロングセラー,待望のリニューアル!

●看護職,そして社会人として欠かせないコミュニケーションのセンスをアクティブ・ラーニングで身につける好評書.
●学習上の位置づけや順序性を全面的に見直し,より効果的なワークを取り入れて再構成.
●年齢・障害別の対応やチーム医療など,新たな場面も多数加わった決定版.

序文

はじめに

2003年にこの書の旧版(「仲間とみがく 看護のコミュニケーション・センス」)を書き上げてから,今年で20年になる.一般的な「教科書」とはかけ離れた構成のこの書が,このように長きにわたって看護教育の場で使っていただけるとは考えてもいなかった.

今回,改訂のお話をいただいたとき,20年前のようなエネルギーはないので,とお断りしようと思ったのだが,「根本的な変更は不要.ただ,最新のキーワードを使った表現にしてほしい」というご要望だった.

最新のキーワードというのは,「アクティブラーニング」「探究」「自己分析」「アサーティブ・コミュニケーション」といった,学習の新しい形や内容を意味するものである.この書は,当初からその視点で作られたものであるのに,それを言葉(キーワード)で表現していないので,20年前に作られた古いものと思われてしまうのが残念である,とのことであった.

私たちが設計した学習の形をしっかり認めていただいていたのだと,たいへん嬉しくその言葉を聞いた.そして,そういうことならと心軽く乗り出したのであるが,作業が進むうちに,旧版では少し踏み出せなかったところ,もう少し丁寧にやりたかったところなどが気になって,次々と欲が出て思わぬ大きな改訂作業となってしまった.

●20年の変化に

改訂作業は,II章,III章の看護の場の事例の組み立てからスタートした.事例の内容が,現在の医療事情に適合しているかということが一番懸念されるからである.調べてみると,今では実施されていないという内容もあり,この20年の間の医療や看護の技術の進歩・変化の大きさを感じた.新版では,今後あまり変化しないであろうと思われる内容を選んで事例を作成した.

●学習は,より自由に

私たち学習設計者(教師も含んでいる)の役目は,学習する人に対して「行動の目標を示すことと」「いかに興味をもって行動できる場を用意するか」であると考えてきた.改訂版では,そこにもうひとつ,学習の自由度を高めるという試みを加えた.

旧版では,I章各項の終わりに「表現のセンスをみがく」というワークを1テーマずつ位置づけた.これら複数の「表現のセンス」の学習には,それほど順序性がない.そこで8つのテーマをまとめ,興味のあるテーマのどこからでも,自由に取り組めるように組み立てた.あるグループは「5W1H」から,他のグループは「目,表情,身体で表現」からというように…….I章の各項の後に,1つないし2つずつテーマを選んで学習していってほしい.

1,2項の内容が理解を深めることも多いので,学習が進んだ後で,もう一度やってみるのもよい.自分たちが主体となって,学習の順番を組み立ててほしい.

●より行動的に

III章は,旧版ではII章と異なる事例(失敗事例)を用意して,紙面上で問題点を洗い出し修正するという学習としたが,改訂版では,II章の事例を活用して台本を用意し,その内容を演じる新しい形のロールプレイとした.一度紙面上で分析した事例について,学習者がナース役・患者役を分担し実際に声や表情で表現して,具体的に行動して感じ取る学習活動である.事例の種類よりも,看護のコミュニケーション行動表現の全体像を,身体全体でつかむことを大事にしたいと考えたからである.行動表現していくことができるようにするための段階である.

IV章は,自分のコミュニケーション行動を自身で分析・修正し,もうひとりの自分をつくるという行動目標にせまる段階である.新版では,修正したい自分の行動の再編成のしかたを,I~III章における分析の方式である「2人の話し手(聞き手)の1回のやり取りを1単位として区切る方式」に変更した.積み上げてきた経験をより生かすためである.

●トライ&エラー,そして修正

この書は,講義のための書(つまり,内容を説明するのもの)ではなく,その内容を覚えるものでもない.「教えられたことをきちんと覚えその通りにやることが大事」「失敗は恥ずかしいこと,だから失敗しないようにする」という従来の学習観,そこから脱し,いろいろ行動してみて,失敗の中からこれではダメだということをつかみ,それを修正する.自分の力で,また仲間と力を合わせて,どのやりかたがよいのか発見していく.

そうした学習観への転換の書になればうれしい.

●この書を企画し,支えてくださった方々へ

この新版を仕上げるにあたっては,お二人の方に大きな力をいただいた.忙しい仕事の時間を割いて,看護現場からのリアルな視点で数々の助言をくださり,そして励ましてくださった岸川恵子さん(元東京女子医科大学病院看護師長).そして,学習者に近い若者の立場からの意見と,編集者としての視点から,足りない要素や余計な部分を指摘してくださった医歯薬出版(株)第一出版部浦谷隆冬さん.予想以上の大きな改訂となった本書であるが,お二人のおかげで新しい学習のアイディアが生まれ,執筆のエネルギーが生まれた.

そしてもうひとり,忘れられない人が吉田めぐみさん(当時医歯薬出版(株)第一出版部).その「今までにないコミュニケーションの学習書を書いてください」という言葉から本書はスタートした.「これでは他の教科書と変わりません」と執筆内容に厳しい意見をいただき,その章を全面的に書き直したこともある.私たちにとって吉田さんは,この学習書の本質を共有してくださった,言わば同志のような存在である.

三人の方に心よりの感謝を捧げたい.


2023年12月

大森武子
矢口みどり

目次

行動してみがくコミュニケーション

 「知っている」と「できる」はちがう

 行動能力は,その行動をすることによって身につく

 新版 看護のコミュニケーション・センス(内容と構成)

I コミュニケーションの基本センスをみがく

1 展開・組み立ての基本センス

 (1) 聴く

   「話す」と「聞く」とで構成される会話

   「聞く」があるから,「話す」が成立する

   コラム コミュニケーション(communication)とは

   会話事例から考えてみよう 「聴く」ということについて

    ×失敗例

     事例1/事例2/事例3

    ○成功例

     事例1/事例2/事例3

   「聴く」は表現する行動である

   聴く姿勢を表現する

   自分で演じて考えてみよう 聴く姿勢の表現

   コラム 学習の中でたくさん失敗し,修正する

   生活の中でのステップアップ コミュニケーション・ノートを作ろう

 (2) 話す

   相手が受け取ってくれなければ,話したことにならない

   話すための3つのポイント

   会話事例から考えてみよう 「話す」ということについて

    ×話が伝わらなかった例

     事例1/事例2/事例3/事例4/事例5

   話すための3つのポイントを実現するのは 観察力 と 表現力

   行動を通して考えてみよう 話しかける

   生活の中でのステップアップ 言葉チェック

 (3) 相手のメッセージを受けとめる

   言葉の背後にあるもの

   会話事例から考えてみよう 気持ちを受けとめるとは,どういうことか

    A群

     事例1/事例2/事例3/事例4

    B群

     事例1/事例2/事例3/事例4

   気持ちを受けとめることが,相手の心を開く

   相手の心を受けとめるためのポイント

   気持ちを受けとめる表現のしかたを考えてみよう

 (4) 1回1回の対応の積み重ねが会話の方向をつくる―読み取ることと表現すること―

   お互いが,メッセージの送り手であると同時に受け手である

   会話事例から考えてみよう

   読み取りかた,表現のしかたが会話の展開を決める―前ページの会話事例の分析から―

    読み取る力・表現する力をみがく方法は

   読み取ってみよう,表現してみよう

2 相手を生かし,自分を生かす―アサーティブ・コミュニケーション―

 (1) 自分から出る

   自分から出る姿勢

    自分から出る度チェック

   「自分から出る脳」をつくる

   「自分から出る行動」を毎日行うための5つのアドバイス

 (2) 自分を出す―相手を受けとめつつ,いかに自分を主張するか―

   互いに認め合う

   会話事例から考えてみよう 自分の気持ちや考えをどう主張するか

     事例1/事例2/事例3

   相手の気持ちを受けとめる

   自分の論理をもつ

   「相手を受けとめつつ,自分を主張する姿勢」を支える人間観

   プラスメモ 本音を言うが傷つけない―反論・指摘・注意

   相手の気持ちを受けとめる主張に変えてみよう

   会話の展開を考えてみよう

   言いにくいことをどう伝えるか―反論や問題点の指摘

   コラム 心の4つの窓(ジョハリの窓;Johari Window)

 (3) 相手を知り,相手を生かす

   簡単には「相手の身になる」ことはできない

   どうしたら相手の身になれるか

     事例 人間ドック受診のすすめ

   相手を知り,相手を生かすコミュニケーション

   コミュニケーションをレベルアップするための3つの要素

   いろいろな質問のしかた

   何をたずねますか,どうたずねますか?

   生活の中でのステップアップ

   コラム「たずねる」ということについて

   コラム コミュニケーションの構成要素

3 表現のセンスをみがく

 表現のセンス8つのポイント

  言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

  (1)声,話しかた─大きさ,発音,話す速度,間の取りかた

  (2)目,表情,身体で表現─表情,視線,うなずき,位置,距離,姿勢

   鏡の前で研究しよう

   仲間と一緒に研究しよう

  (3)オープン・クエスチョン と クローズド・クエスチョン

  (4)呼びかけ と あいづち

   プラスメモ すみません/ありがとう/ごめんなさい

   プラスメモ 合わせ技……あいづち + 笑顔/うなずき/アイコンタクト

   コラム 「笑い」の効果

  (5)5W1H─要素,順序,区切りかた

   生活の中でのステップアップ

  (6)メール・チャット─文字だけのコミュニケーション

  (7)敬語・丁寧語

   敬語の種類と表現のしかた

   敬語を使う対象と,使いかたの原則

   練習

   プラスメモ あげる/してあげる

  (8)仲間・仕事・世代と言葉

   コラム コミュニケーションを阻害する因子

II 現実の場面から探る看護のコミュニケーション・センス

1 安全,そして安楽に看護ケアを行う

 事例1 開腹手術後2日目.歩行の許可が出ているが,傷の痛みを気にして起きようとしない患者に,トイレまで歩行介助を行う場面(60代女性)

 解説

  1.患者の身体の状態,気持ちを読み取り受けとめる姿勢の表現と,受けとめたことの表現

  2.患者の不安・疑問に対する,論理的で納得のいく説明

  3.看護ケアのイメージの伝達―全体像,段階ごとの行動のしかた

 看護のコミュニケーションを生み出す構造

2 療養生活を組み立てるための情報の入手と伝達

 事例1 胃腸炎後,回復期に食欲不振が続く患者に,食事量をたずねる(70代男性)

 解説

  1.患者の表出するものから,患者の病態・心の状態をとらえる

  2.療養生活のしかたを組み立て直し,提案する

 事例2 点滴注射をしている患者への体温・血圧・脈拍測定の場面(50代女性)

 事例3 急な入院の案内(70代男性と妻)

 事例4 ひとり暮らしの高齢者の退院指導(80代女性,膝骨折,1週間後退院予定)

 解説

  3.状況・状態の変化に対応しつつ,探究的に情報を取る

  4.行動のしかたがイメージできるように伝える

  5.相手の自尊心,意思を大切にする

  コラム 看護のコミュニケーションはここから始まる

3 患者の苦痛や不安を読み取り,受けとめる

 事例1 不眠を訴える患者,入院2日目(70代女性)

 事例2 抗がん剤治療後,手術のために再入院.1週間後に手術予定の患者(60代男性)

 事例3 バイク事故による受傷(頭部および全身打撲),入院当日(19歳男性)

 事例4 娘の容体を心配する母親(娘20代,急性腎炎による入院後2週間)

 解説

  1.患者のもつ苦痛・不安をとらえ受けとめる

  2.患者の苦痛や不安に具体的に対応する

  プラスメモ コミュニケーションのバックグラウンドを豊かに

  3.苦痛や病態についての情報を提供する

 情報の取りかた・伝えかた

  1.患者の気持ちを推測し,苦痛や不安などを表出できるようにする

  2.苦痛や不安の内容,その程度・変化を具体的にとらえる

4 さまざまな環境,変化する状況に対応する

 事例1 大部屋にいる患者(左片麻痺)の部分清拭と寝巻の交換(80代女性)

 事例2 洗髪予定の患者がうとうとしている場面(70代男性)

 事例3 多人数の見舞い客が来たときの対応(20代女性/大腿骨骨折)

 解説

  1.患者の療養環境をとらえて対応する

  2.患者の身体の状態や気持ちの変化をとらえて対応する

  3.患者の置かれた環境・場の状況をとらえて対応する

5 さまざまな患者に対応する

 事例1 長期入院患者への与薬場面(1)(6歳男児/小学生)

 事例2 長期入院患者への与薬場面(2)(40代男性/自営業)

 事例3 長期入院患者への与薬場面(3)(80代女性/耳が遠い)

 事例4 障害のある患者への食事援助場面(1)(60代女性/左片麻痺)

 事例5 障害のある患者への食事援助場面(2)(70代男性/視覚障害(失明))

 解説

  1.ライフステージという視点から,患者の特性をとらえる

  2.身体の障害(身体能力)という視点から,患者の特性をとらえる

  3.患者の特性をとらえるためのさまざまな視点

6 ナースコールに対応する

 事例1 ナースコール1(点眼の介助の求め)

 事例2 ナースコール2(大部屋からのコール)

 事例3 ナースコール3(患者への連絡)

 事例4 ナースコール4(患者からの連絡)

 事例5 ナースコール5(家族からの連絡)

 解説

  1.患者のニードに応え,安心感を与える―ナースコールへの対応―

  2.患者との連絡手段としてのナースコール

  3.患者以外からのナースコール

  ナースコールを使ってのコミュニケーション対応のポイント

   練習

7 チームをつなぐ

 チーム医療:自宅における緩和ケアの例

  ナース,主治医の連携はどのように行われたか(Y氏の事例)

 コラム 言語,視覚,聴覚,認知に障害のある患者とのコミュニケーション

〈図解〉看護のコミュニケーション・センスはこうしてみがく

III 演技して探究する看護のコミュニケーション・センス

1 患者の疑似体験

 A 動けない患者の一日を体験しよう

 B 患者の疑似体験をしよう

 C 生活援助を受ける患者の経験をしよう

 D 患者経験者にインタビューしてみよう

2 患者に寄り添い,患者の心を開く

 患者に寄り添う姿勢とは

 患者に必要なケアを行うためのコミュニケーション,その3つの要素

  プラスメモ 傾聴

3 演技して探究する─台本型ロールプレイ─

 実施のしかた

  台本 抗がん剤治療後,手術のために再入院.1週間後に手術予定の患者(60代男性)

  台本型ロールプレイ:チェックシート(記入例)

 台本型ロールプレイをやってみよう

  台本1 トイレまで歩行介助をする事例(II章-1 事例1-B)

  台本2 子宮筋腫の手術を翌日に控え,不安を訴える患者に対応する事例

  台本型ロールプレイ:チェックシート

  ロールプレイの経験を生かすために

IV 自分を振り返ってコミュニケーション・センスを高める

 もうひとりの自分による,自分の行動の分析と修正

  行動の自己分析の例A

  行動の自己分析の例B

  解説 行動記録の自己分析

  参考 脱主観,脱感情の“リフレクション”

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書籍情報

  • ISBN:9784263710661
  • ページ数:180頁
  • 書籍発行日:2024年1月
  • 電子版発売日:2024年1月20日
  • 判:A4判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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