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- ダイアローグ〈対話〉のはじめかた 医療・福祉にかかわる人のための対話哲学レッスン
商品情報
内容
“家庭医そんそん”による〈対話〉哲学講義.
●ソクラテス,ブーバー,レヴィナスらによる対話をめぐる哲学を手がかりに,〈対話〉をはじめるための基本と原則(大事にすること)をやさしく解説.
●医療・福祉・ケアの現場で活躍する対人支援職のための,臨床場面や地域において〈対話〉を実践したセッションを収載.
・さまざまな訴えのある患者とのダイアローグ
・慢性的な痛みと不安を抱える患者とのダイアローグ
・アドバンス・ケア・プランニングに関するダイアローグ
・多職種カンファレンスでのダイアローグ
・近しい人の死による悲嘆をめぐるダイアローグ
・障害をもつ男性の困りごとをめぐるダイアローグ
・介護をテーマにしたダイアローグ
●不確実性の耐性,エンパシー,リフレクティング,健康生成論……
対話実践を深めるため健康・医療と対話をめぐるキーワードをコラムで解説した.
序文
はじめに
「対話」について,皆さんはどのようなイメージをもっておられるでしょうか.会話と対話,コミュニケーションはどのような違いがあるのでしょうか.この本では,対話に関する基本的なことから,医療福祉や対人支援にかかわる専門職に役立ててもらえるような対話の作法や進め方,また具体的な実践例などを説明します.しかし,この本で説明している内容は,あくまで私の考えていることや,私のやり方なので,それが唯一の答えではないということを前置きしておきたいと思います.
会話と違い,対話にはある程度の哲学や理念が含まれています.実際に,哲学の世界では「対話」という言葉には特別な意味が込められており,「哲学対話」という実践もあります.会話と対話の違いについて考えてみると,「会話」は他者との日常的な言葉のやりとりであり,とくに目的をもたないこともあり,楽しみや遊びの文脈でなされることも多くあります.それに比べて「対話」というのは,古くは古代ギリシャのソクラテスにまでさかのぼる行為であり,他者との言語や論理のやりとりを通して深い洞察や知恵に至る方法なのです.しかしながら,後ほど説明するように,このソクラテス的な意味での対話以外にも,さまざまな考え方が存在します.たとえば,対話の目的は他者との合意形成や他者理解という考え方もありますし,ミハイル・バフチンの哲学で出てくるように,「対話の目的は対話そのもの」であるという考え方もあります.
対話とコミュニケーションについてはどうでしょうか.対話はコミュニケーションの一部と考えられるかもしれませんが,私は少し違うイメージをもっています.「コミュニケーション」という言葉もさまざまな意味で用いられている言葉ですが,共通するものは「意思の疎通」や「心や気持ちの通い合い」ということだと思います.つまりは,言語や言語以外のものを使って複数の人がお互いに意思疎通をすることをさしています.一方,「対話」の場合は,複数の人の間で何かが起こるというのは同じなのですが,むしろお互いの「差異」が重視されます(後ほど,「ポリフォニー」という考え方を紹介します).また,言語的なやりとり以上に,他者へのまなざしや,少しむずかしい言葉で言うと「他者存在の了解可能性」といったことが主題になる行為だと,私は考えています.コミュニケーションの場合,コミュニケーションスキルを上げるとか,能力主義的な考えが通用しますが,対話の場合,スキルを上げるという考え方はそぐわないと私は考えます.対話において重要なのは技能や能力ではなく,「あり方(way ofbeing)」であるからです.
対話には他者が必要です.それは他者という存在に飽くなき関心をもつときにはじまります.例えるならば,完全な謎に満ちた見たこともないような世界を覗き見るようなあり方です.人間存在はとても謎に満ちています.人間という存在の本質は,自己であれ他者であれ,決して理解し尽くすということはありえぬものでしょう.
哲学者のエマニュエル・レヴィナスは,「他者」という存在について非常に興味深いことを言っています.「他者とは常に自己の理解を超えたもの」であると言うのです.しかし,レヴィナスは他者を理解するのがまったく不可能だと主張したのではないのだろうと思います.おそらく彼の主張は,相手をわたし(自己)の認識枠組みに包括するような理解の仕方は,本当の他者理解とは異なるのだということです.自己の理解に簡単に包括しえない他者だからこそ,対話によって問いかけたり,応答したりし続けることが重要であるとレヴィナスは考えたのです.
この本は,対人支援職を主な対象と想定して書かれたものですが,対話という行為自体はすべての人が実践していることです.すなわち,職種にかかわらず,どんな方に読んでもらっても何らかの役に立つのではないかと考えています.
本書の第1章では「対話における基本的なこと」を説明しています.
対話とは何か,対話に関する哲学について,ソクラテス,マルティン・ブーバー,エマニュエル・レヴィナス,ミハイル・バフチンといった重要な哲学者の考え方を中心に,できるだけわかりやすく解説しています.対話をするための準備,対話における原則(大事にすること)などもここで詳しく説明しています.実際に対話を行う際に,ここに書いてあることを心にとどめて実践してもらうとよいでしょう.
第2章は,医療・ケア・福祉の現場における対話実践(ダイアローグ)についての内容です.病いを抱えた患者や家族と専門職の間のダイアローグの具体的な実践例を紹介しています.また,アドバンス・ケア・プランニングに関するダイアローグや,多職種間でのダイアローグの事例もあります.医療福祉の現場にいる専門職にはとくに役立ててもらえる内容となっています.
第3章は,地域・コミュニティにおける対話実践について説明しています.中心となるのは必ずしも病気を抱えた人ではなく,地域における生活者であり,オープンダイアローグの手法を用いたダイアローグ(ダイアロジカル・ミーティング)や,哲学対話/対話カフェの手法を用いたダイアローグの実践例も紹介しています.地域で活動する福祉職や対人支援職の方,地域において対話活動をしたい方などにとくに有用かと思います.
さあ,それでは頁をめくって,ともに対話=ダイアローグの旅へと出発しましょう!
目次
はじめに
1 対話における基本的なこと
1.1 対話の哲学
#無知の知 #「我―汝」関係 #他者の哲学 #ポリフォニー
1.2 対話とは何か
#ダイアローグとコミュニケーション #技法と原則
1.3 対話をするための準備
#他者へのまなざし #対等であること #安全で安心できる場づくり
1.4 対話で大事にすること:対話の原則
#聴くと話すを分ける #マインドフルネス #モノローグとダイアローグ #不確実性にとどまる #内的なポリフォニー #外的なポリフォニー
column 1 対話の4つの形
#熟議 #哲学カフェ #ダイアロジカル・ミーティング #開放的対話
column 2 不確実性の耐性とネガティブ・ケイパビリティ
#無感覚の感覚 #非存在の存在
2 対話をやってみよう1:医療/ケア/福祉における対話
2.1 医療/ケア/福祉現場でダイアローグを実践する
#「治療したい」を手放す #オープンクエスチョンからはじめる
2.2 診察室での患者とのダイアローグ
さまざまな訴えのある患者とのダイアローグ
#不定愁訴 #病いの物語
慢性的な痛みと不安を抱える患者とのダイアローグ
#三者間のダイアローグ #社会的因子
2.3 患者・家族をめぐるダイアローグ
アドバンス・ケア・プランニングに関するダイアローグ
#がん緩和期 #最期の場所をめぐるポリフォニー
2.4 専門職同士のダイアローグ
多職種カンファレンスでのダイアローグ
#胃ろう造設 #倫理的ジレンマ
2.5 まとめ
#beingとしての対話 #他者を信頼する
column 3 対話と共感(エンパシー)
#エンパシーとシンパシー #マックス・シェーラーの「普遍的文法」
column 4 ウェルビーイングと対話
#幸福とは? #人生の「意味」
column 5 リフレクティングの理論と哲学
#トム・アンデルセン #システム論 #家族療法
column 6 リフレクティングの実際
#会話の作法 #リフレクティングチーム
3 対話をやってみよう2:地域/コミュニティにおける対話
3.1 地域/コミュニティでダイアローグを実践する
#ダイアロジカル・ミーティング #対話カフェ #リフレクティング
3.2 心配ごとを緩和する対話(ダイアロジカル・ミーティング)
近しい人の死による悲嘆をめぐるダイアローグ
#まちけんダイアローグ #喪失体験
障害をもつ男性の困りごとをめぐるダイアローグ
#さんいんダイアローグ #オンラインでのダイアローグ
3.3 対話カフェ:地域での健康をめぐるダイアローグ
介護をテーマにしたダイアローグ
#みんくるカフェ #哲学カフェ
3.4 まとめ
#問題解決をめざさない #日常を対話的なものに
column 7 健康生成論と対話
#何が健康をつくるのか? #首尾一貫感覚=生きる力 #汎抵抗資源
column 8 バザーリアの〈対話〉がもたらしたもの
#精神医療改革 #アッセンブレア
おわりに
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書籍情報
- ISBN:9784263732229
- ページ数:152頁
- 書籍発行日:2024年3月
- 電子版発売日:2024年3月18日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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