小児輸液のトリセツ

  • ページ数 : 200頁
  • 書籍発行日 : 2022年4月
  • 電子版発売日 : 2022年4月5日
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商品情報

内容

小児トリセツ第3弾。フローチャートで小児輸液が絶対にわかる!

脱水でグッタリしている子どもが救急外来に来たとき、是正輸液療法を行えばたちどころに具合が良くなる..輸液療法は魔法のようなツールである。ところが多くの小児科医療の現場では、誤った輸液療法が漫然と行われている。それは「輸液療法をきちんと勉強していない」ためである。実は小児の輸液療法において求められることは次の4つしかない。「1.脱水の評価 2.輸液製剤の選択 3.輸液の投与量 4.輸液の投与速度」である。この4つのポイントさえ理解すれば、すべて脱水の子どもたちを適切に治療できる。
 本書は小児輸液のエキスパートの考え方をフローチャートに凝縮し、輸液療法を開始してから終了するまで、一連の流れをひとつひとつ解説していく。本書の示すとおりに沿っていけば、誰でも簡単に正しい輸液療法を行うことができるようになる。臨床で知りたいことがすぐわかる! 小児トリセツシリーズ第3弾。「トリセツ」で小児科医療はもっと面白くなる。

あわせて読む → 「小児トリセツ」シリーズ

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序文

はじめに

みなさん,輸液療法は好きですか?

私は小児の輸液療法が大好きです。私も世の中の小児科医と同じく毎日子どもたちにさまざまな輸液を処方しています。ただ世の小児科医と少し違うのは,軽症脱水に是正輸液を処方するときも,高ナトリウム血症に対して少し複雑な輸液を処方するときも,輸液を処方するときはどんなときでも気持ちが高揚し,少しワクワクした気持ちになります。

輸液療法の魅力は「Simple」です。子どもの状態に合わせて「輸液製剤」,「投与速度」,「投与量」の3 つを決定すれば,子どもを元気にすることができるのが輸液療法です。電解質異常を伴う重度脱水の子どもが来院したときに,さっと適切な「輸液製剤」,「投与速度」,「投与量」を決定して,適切に輸液療法を行う流れはカッコいいですよね。

ただ輸液療法は誰もが簡単にできる治療法ではなく,誤った処方を行えば子どもの状態が予期せぬ方向に悪くなる怖い側面も持ち合わせています。この側面が輸液に対する苦手意識を多くの医療者に植え付けているのかもしれません。

もちろん,私も今まで輸液でたくさんの失敗を積み重ねてきました。体重が3 kg くらいの小さい子がショックの状態で救急外来に現れたときは「えっ,何を輸液すればよいの?」とわからなくなり,新生児科研修で学んだ初期輸液である5%ブドウ糖を開始してしまいました。低ナトリウム血症が原因でけいれんしている子どもに病棟で遭遇したときは,3% NaClの存在も知らず低ナトリウム血症の補正もできませんでした。

そして,そのとき私の疑問にすぐ答えてくれる小児の輸液療法の本はありませんでした。これを読めば小児の輸液療法ができる!! そんな本があればよいなと…

2019 年6 月,そんな私のところに笠井先生から執筆の依頼が来ました。私と先生の出会いは2011 年日本小児感染症学会の第1 回教育セミナーBasic Course でした。講師の1 人が先生であり,セミナーの中で「小児抗菌薬マニュアル」というご自身の本を紹介して「この本は絶対に買わないでください,嘘が書いてあります!」と話していたことを覚えています。自分の本は買わないでくださいと宣伝していた笠井先生とセミナー受講生の1 人である私がまさか一緒に「小児感染症」でなく,「小児輸液療法」の本を書くことになるとは,人生とは何があるか本当にわかりません。

笠井先生,編集者の中立さんに支えながら約2 年半の月日を経て本書が完成しました。小児の輸液療法に特化した初の本です!!

この本は誰でもわかりやすく輸液療法を行えるように,たくさんのフローチャートを盛り込みました。本文を読み,フローチャートに従えば,誤った輸液の処方を行うことなく輸液療法を「Simple」に行うことができます。みなさん,この本を使用して安心して小児の輸液療法を行ってください。

小児の輸液療法はこの瞬間も日本のどこかで行われている最も基本的な治療のひとつです。本書を通じて学んだ人たちにより,1 人でも多くの子どもたちに適切な輸液療法が行われることを願っています。


2022年3月

国立成育医療研究センター 手術・集中治療部 集中治療科
著者 加藤宏樹

目次

Chapter 0 小児輸液療法をはじめる前に

あなたはできている? 正しい輸液療法

日本における小児輸液療法の現状

なぜできない,小児輸液療法

小児輸液療法は楽しい!

Chapter 1 小児輸液療法の原則

1 小児輸液療法の流れと考え方

 1 小児輸液療法の全体像

 2 小児輸液療法を行うときに常に思い浮かべてほしいこと

 3 子どもの輸液3 原則

  原則その1 フェーズを意識する

  原則その2 今,行っている輸液療法を意識する

  原則その3 輸液開始後は必ず再評価を行う

2 ナトリウムの考え方

 1 ナトリウムは難しい?

 2 ナトリウムとは何か

   なぜナトリウムが輸液療法で重要?~ナトリウムが重要な2 つの理由~

 3 ナトリウムの考え方4 原則

  原則その1 ナトリウム「量」とナトリウム「濃度」は独立して評価/治療する

  原則その2 ナトリウム「量」の評価は難しく,ナトリウム「濃度」の評価は容易い

  原則その3 ナトリウム「濃度」よりナトリウム「量」の治療を優先して行う

  原則その4 ナトリウム「量」の治療は迅速,ナトリウム「濃度」の治療は緩徐に行う

 4 ナトリウムの考え方2 つの例外

   例外その1 ナトリウム「量」の治療を緩徐に行うとき

   例外その2 ナトリウム「濃度」をナトリウム「量」の治療より優先して行う かつ ナトリウム「濃度」の治療を迅速に行うとき

 5  ナトリウムの視点から脱水を考える~脱水は2 種類存在する~

 症例でレビューしよう!

Chapter 2 ナトリウム量の異常に対する輸液療法

1 脱水を探せ!

 1 「子どもをみる」編

   小児評価トライアングル

   「色」を見る

   自分自身の直感を信じる

   緊急時の評価はできるだけ迅速に

 2 「脱水の評価:バイタルサイン」編

   「Vital signs are vital」

   バイタルサインの測り方と評価

   バイタルサインの変化を見抜く

 3 「脱水の評価:身体所見」編

   毛細血管再充満時間(capillary refill time:通称「CRT」)と四肢の末梢冷感

   口唇/口腔粘膜の乾燥

   涙が出ているか

   眼球の落ち窪み

   脱水を示唆するさまざまな所見

 4 「脱水の評価:病歴」編

   嘔吐/下痢症状

   経口摂取量の低下

   尿量の低下

 5 脱水を迅速に否定したいとき

 症例でレビューしよう!

2 是正輸液療法~脱水のある子どもに対する輸液~

 1 輸液製剤~輸液製剤は等張液を選択~

   等張液についてとことん考える

 2 輸液投与量~10 mL/kg が1 単位~

 3 輸液投与速度~急速投与をためらわない~

   急速投与(ボーラス投与)の実際

   急速投与を行ってはいけない病態

 4 低血糖に注意する

 症例でレビューしよう!

3 輸液療法開始後の再評価

 1 再評価はなぜ重要か

   漫然とした輸液療法はNG

 2 再評価の手順

 3 再評価すべきポイント

   輸液療法を反映する3 つのポイント

   バイタルサイン

   身体所見

   尿 量

   その他の再評価ポイント

 4 再評価後の判断~輸液療法は有効? 無効?~

   輸液療法が有効な場合

   輸液療法が無効な場合~過剰輸液のサインに注意~

 症例でレビューしよう!

4 維持輸液療法~脱水のない子どもに対する輸液~

 1  維持輸液療法の目的~維持輸液の水分は「尿量」と「不感蒸泄量」を維持している~

 2 維持輸液療法の適応~どんな人に維持輸液を開始するか~

   条件1:入院患者

   条件2:経口摂取ができない

 3 輸液製剤の選び方と投与量・投与速度の考え方

   輸液製剤~3 号液は原則用いない~

   投与量/投与速度~Holliday-Segar の輸液計算式の算出量をそのまま使用しない

 4 間違いが多い小児の維持輸液療法~2 つの要因~

   要因1:低張液である3 号液が慣習的に用いられている

   要因2:Holliday-Segar の輸液計算式の問題点を認識していない

 症例でレビューしよう!

Chapter 3 ナトリウム濃度の異常に対する輸液療法

1 ナトリウム濃度異常の病態

 1 低ナトリウム血症の病態

   ①体に自由水/低張液が入る

   ②体に自由水が再吸収される

 2 高ナトリウム血症の病態

   ①体に自由水/低張液が入らない

   ②体から自由水が出る

 3 低ナトリウム血症と高ナトリウム血症の症状

2 是正輸液中に遭遇する低ナトリウム血症

STEP 0  血液検査で血清ナトリウム値を測定/ナトリウム濃度を評価

STEP 1 症候性か,無症候性かを判断

   症候性の場合

   無症候性の場合

STEP 2  ナトリウム量の評価。ナトリウム量が適切かどうかを確認

STEP 3 急性の経過か,慢性の経過かを判断

   急性・慢性の判断基準

   慢性低ナトリウム血症と浸透圧性脱髄症候群

STEP 4 SIADH の治療

STEP 5 水制限

   水制限を行う際の注意点

 6  軽度低ナトリウム血症(130-135 mEq/L)の場合

 7 低ナトリウム血症をみたら尿検査を提出する

 8 治療開始後の血清ナトリウム値変動時の対処法

   ①予想より血清ナトリウム値が上昇しない

   ②予想より血清ナトリウム値が上昇した

 症例でレビューしよう!

3 是正輸液中に遭遇する高ナトリウム血症

STEP 0  血液検査で血清ナトリウム値を測定/ナトリウム濃度を評価

STEP 1  ナトリウム量の評価。ナトリウム量が適切かどうかを確認

STEP 2 どこから自由水が出ているかを確認

STEP 3 急性の経過か,慢性の経過かを判断

STEP 4 自由水(5%ブドウ糖)の投与

   具体的な5%ブドウ糖の投与方法

 5 STEP+α:自由水喪失を止める

   下痢(便)の場合

   尿の場合

 6 治療開始後の血清ナトリウム値の変動時の対処法

   ①予想より血清ナトリウム値が低下しない

   ②予想より血清ナトリウム値が低下した

 症例でレビューしよう!

4 維持輸液中に遭遇する低ナトリウム血症

 1 維持輸液中に遭遇する低ナトリウム血症の診療の流れ

   定期の血液検査で判明した低ナトリウム血症

   状態評価のための血液検査で判明した低ナトリウム血症

 2 維持輸液中の医原性低ナトリウム血症に遭遇したとき

 症例でレビューしよう!

5 維持輸液中に遭遇する高ナトリウム血症

 1 維持輸液中に遭遇する高ナトリウム血症の治療の流れ

   定期の血液検査で判明した高ナトリウム血症

   状態評価のための血液検査で判明した高ナトリウム血症

 2 維持輸液中の高ナトリウム血症に遭遇したとき

  STEP1:医原性の否定

  STEP2:どこから自由水が出ているかを確認

 症例でレビューしよう!

Chapter 4 小児輸液療法の応用

1 輸液のための生理学~体液コンパートメントのルール~

 1  体液コンパートメントとは

 2 縦の動きと横の動きのルール

   1.縦の動きのルール

   2.横の動きのルール

 3 体液コンパートメントの考え方を輸液療法に活かす

   どのコンパートメントの体液が不足しているか

   いま輸液しているコンパートメントはどこか

2 輸液療法における尿検査

 1 なぜ「尿」を確認するのか?

 2 尿検査で考えるべき3 つのSTEP

  STEP 1:いつ尿検査を行うか

  STEP 2:どの項目を検査するか

  STEP 3:結果をどのように評価するか

 3 尿検査の評価を活かした臨床での対応法

   低ナトリウム血症:血清Na>尿(Na+K)の場合

   高ナトリウム血症:血清Na>尿(Na+K)の場合

   低ナトリウム血症:血清Na<尿(Na+K)の場合

   高ナトリウム血症:血清Na<尿(Na+K)の場合

 4  尿検査の結果を解釈するときのピットフォール~尿以外の体液喪失~

3 輸液療法のQ & A ~困ったなと思ったら~

 Q 血液検査で脱水を評価できるか?

 Q はじめてみる輸液製剤ではまずは何を確認すべきか?

 Q  低ナトリウム血症を合併した重症脱水で注意すべき点は?

 Q  等張液を投与していたにもかかわらず,低ナトリウム血症が発症してしまった。なぜか?

 Q 3% NaCl はどのようにつくるか?

 Q 水制限の効果が乏しいときはどうするか?

 Q  川崎病や高脂血症の小児で低ナトリウム血症が改善しないときに検討すべきことは?

 Q  血液ガス装置と中央検査室で測定したナトリウム値が異なる場合はどちらが正しいと判断するべきか?

 Q ongoing loss への対処法は?

 Q 尿検査を評価する上での注意点は?

 Q  ナトリウムの量と濃度は体の中で具体的にどのように調整されているか?

 Q 輸液製剤の使い分けについてまとめて知りたい

   巻末資料 小児の輸液製剤・投与量・投与速度の早見表

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書籍情報

  • ISBN:9784307170765
  • ページ数:200頁
  • 書籍発行日:2022年4月
  • 電子版発売日:2022年4月5日
  • 判:B6変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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