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- 腹膜播種診療ガイドライン 2021年版
商品情報
内容
腹膜播種は、腫瘍細胞が腹腔内に散布された形で多数の転移を形成する予後不良の病態で、がん種や地域ごとに様々なアプローチで診断・治療がされており、統一した治療指針が確立されていない。日本腹膜播種研究会では臓器横断的な観点から腹膜播種患者の予後向上を目指し、本邦初となるガイドラインを策定。腹膜播種特有の手技(審査腹腔鏡、腹腔内温熱化学療法、CART)に対するCQ等、臨床で有用な推奨を明示した。
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序文
序文
腹膜播種は、腫瘍細胞が腹腔内に散布された形で多数の転移を形成する予後不良の病態で、がん種や地域ごとに様々なアプローチで診断・治療がなされてきた歴史的経緯があり、国際的にも統一した治療指針が確立されていないのが現状である。そこで、2019年(令和元年)、複数の診療科から構成された「日本腹膜播種研究会」を設立し、臓器横断的な観点から議論を行うことによって、腹膜播種患者の予後向上に貢献することを目指して活動することにした。「腹膜播種診療ガイドライン」の作成はその最初のプロジェクトである。しかし、がん種や施設により治療法が大きく異なっている現状に加えて、審査腹腔鏡、腹腔内(温熱)化学療法、腹水濾過濃縮再静注法など腹膜播種に特有の手技があり、その一部は保険適用外であること、高レベルのエビデンスが少ないことなどから、明確な推奨度の判定は難しい事象が多いことが予想された。本ガイドラインでは、これらの事項もあえてCQとして取り上げ、現時点における推奨を検討することにした。策定委員には、同研究会理事から推薦を受け、播種治療の最前線で診療に携わっておられる先生方に、評価委員には、同研究会に加え関連学会より推薦をいただいた先生方にお願いした。折からのコロナ禍で、策定には困難を極めたが、ほぼ全編Web会議にて議論を重ね、ほぼ1年で作成に至った。ひとえに委員の先生方の強い「思い」に支えられた多大なるご尽力のおかげである。また、パブリックコメント等にて様々な立場の方々から多数の御意見をいただいた。特に、完全減量手術や腹腔内(温熱)化学療法の推奨に関しては複数の方々から異論をいただき、これらの点に関しては、再度、策定委員会で慎重に検討を重ね、現時点での構成委員の意見をまとめたものを記載した。委員の先生方、御意見を頂いたすべての方々に深甚なる感謝の意を表します。
さて、時は今、コロナ禍の遷延により国民は疲弊し、それに対する迅速な対策が見い出せない事態が続いている。IT技術の急速な進歩に伴い極度に肥大化した情報を的確に評価し、有意義に活用する見識を失いつつあるこの国の実態を反映しているように思われる。要は、「いちばん大切なこと」を見誤らないこと、そして「行動する勇気を持つこと」に尽きるのではないかと思う。生命は、幾星霜の時を経て、「個の命」を犠牲にし「世代」を進めることで、効率よく「いのち」をつないでいくシステムを作り出した。「死」に永遠の価値を見出したと考えてもよい。医療者にとって「いちばん大切なこと」は、「この限られた命の輝きをどうサポートしていけばよいのか?」を、当事者である「患者さん」目線で考えることであるに違いない。本ガイドラインは初版であり、まだ、未熟な点が多いかと思う。ただ、この視点に忠実に作成されていることは間違いない。本書を「たたき台」として、各関連学会、読者諸氏の御意見を参考にしつつ、より良い播種治療の実現にむけて改訂を進めていきたいと考えている。
令和3年5月
日本腹膜播種研究会理事長
腹膜播種診療ガイドライン作成委員長
北山 丈二
目次
1章 本ガイドラインの概要
1-1 本ガイドラインについて
1.本ガイドラインの目的
2.本ガイドラインの対象者
3.本ガイドラインを使用する際の注意事項
4.既存ガイドラインとの関係
5.本ガイドラインの策定手順
6.資金源と利益相反
7.今後の改訂
1-2 本ガイドラインにおける基本事項
1.肉眼的腹膜播種と顕微鏡的腹膜播種
2.Peritoneal Cancer Index(PCI)
3.大量腹水
4.手術術式
5.化学療法
6.腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free concentrated ascites reinfusion therapy:CART)
2章 胃癌
CQ 1 胃癌腹膜播種患者においてP 分類を予後予測因子として臨床応用することを推奨するか?
CQ 2 胃癌腹膜播種患者においてPeritoneal Cancer Index (PCI)を予後予測因子として臨床応用することを推奨するか?
CQ 3 胃癌腹膜播種の診断のためにFDG-PET/CT を行うことを推奨するか?
CQ 4 測定可能病変のない胃癌腹膜播種症例に対し、画像所見以外の理学所見や腫瘍マーカー等も参考に治療変更を行うことを推奨するか?
CQ 5 胃癌腹膜播種診断において腫瘍マーカー検査を推奨するか?
CQ 6 腹膜播種の疑われる進行胃癌症例において審査腹腔鏡を行うことを推奨するか?
CQ 7 腹膜播種陽性と診断された胃癌においてConversion Surgeryの適応を決定するうえで審査腹腔鏡を推奨するか?
CQ 8 腹膜播種を有する胃癌に対する全身化学療法を推奨するか?
CQ 9 高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌に対して化学療法を推奨するか?
CQ 10 肉眼的腹膜播種を有する胃癌に対して腹腔内化学療法を推奨するか?
CQ 11 腹膜播種を有する胃癌に対して三次治療で免疫チェックポイント阻害剤の全身投与を推奨するか?
CQ 12 腹膜播種を有する胃癌に対して腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を推奨するか?
CQ 13 切除可能進行胃癌の根治手術時に腹膜再発の予防として腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を併施することを推奨するか?
CQ 14 P1a(胃癌取扱い規約第15版)に相当し根治切除可能な腹膜播種に対してリンパ節郭清を伴うR0手術を推奨するか?
CQ 15 化学療法で消失もしくは縮小が得られた腹膜播種を有する胃癌に対して根治を目的とした胃切除術を推奨するか?
CQ 16 腹膜播種を有する胃癌に対して化学療法奏効後に根治を目的とした胃切除術を行った場合、術後治療を推奨するか?
CQ 17 肉眼的腹膜播種を有する胃癌に対して肉眼的R0手術を目指した腹膜全摘術(Total peritonectomy)を推奨するか?
CQ 18 化学療法によって肉眼的腹膜播種が消失した胃癌に対して腹膜全摘術(Total peritonectomy)を推奨するか?
CQ 19 胃癌に対する手術において顕微鏡的腹膜播種陽性(P0CY1)と診断した場合に胃切除、D2リンパ節郭清を推奨するか?
CQ 20 胃癌の治療前病期診断において顕微鏡的腹膜播種陽性(P0CY1)と診断した場合に導入化学療法を推奨するか?
CQ 21 胃切除された顕微鏡的腹膜播種陽性(P0CY1)患者に対して術後化学療法は推奨されるか?
CQ 22 腹膜播種再発高リスク胃癌症例に対して胃切除を施行する場合に腹腔内大量洗浄を推奨するか?
CQ 23 腹膜播種再発高危険胃癌症例に対する術前and/or術後の腹腔内化学療法を併用した補助化学療法を推奨するか?
CQ 24 腹膜播種による随伴症状(消化管狭窄・水腎症・胆管狭窄など)に対する観血的緩和治療を推奨するか?
CQ 25 胃癌腹膜播種再発リスクの高い患者のフォローアップにおいて、通常の胃癌患者と異なるフォローアップ法を推奨するか?
3章 膵癌
CQ 1 膵癌腹膜播種の診断法として血液検査(腫瘍マーカー)を推奨するか?
CQ 2 膵癌腹膜播種の診断法として画像検査を推奨するか?
CQ 3 膵癌腹膜播種の診断法として腹腔穿刺を推奨するか?
CQ 4 腹膜播種が疑われる膵癌に対して、審査腹腔鏡を推奨するか?
CQ 5 腹膜播種を有する膵癌に対して全身化学療法を推奨するか?
CQ 6 腹膜転移を有する膵癌に対する腹腔内化学療法を推奨するか?
CQ 7 腹膜播種を有する膵癌に対して減量手術+腹腔内温熱化学療法を推奨するか?
CQ 8 集学的治療で治療効果が得られた腹膜播種を有する膵癌に対して原発巣切除(Conversion Surgery)を推奨するか?
CQ 9 顕微鏡的腹膜播種を有する膵癌(P0CY1)に対して膵切除を推奨するか?
コラム 加圧腹腔内エアロゾル化学療法(Pressurized intraperitoneal aerosol chemotherapy:PIPAC)について
4章 大腸癌
CQ 1 大腸癌腹膜播種の診断においてMRI、PET/CT を推奨するか?
CQ 2 大腸癌腹膜播種の診断において審査腹腔鏡を推奨するか?
CQ 3 大腸癌根治切除後の腹膜再発予測に如何なる因子を用いることを推奨するか?
CQ 4 腹膜播種陰性の大腸癌手術症例において洗浄細胞診を推奨するか?
CQ 5 大腸癌腹膜播種の予後予測にP分類、Peritoneal cancer index(PCI)を用いることを推奨するか?
CQ 6 大腸癌の腹膜播種に対する外科的切除を推奨するか?
CQ 7 大腸癌腹膜播種(同時性ならび異時性)に対して完全減量切除+腹腔内温熱化学療法(CRS+HIPEC)を推奨するか?
CQ 8 大腸癌腹膜播種に対する緩和手術を推奨するか?
CQ 9 大腸癌腹膜播種(同時性ならび異時性)治癒切除例に対する術後補助化学療法を推奨するか?
CQ 10 切除不能大腸癌腹膜播種(同時性ならびに異時性)に対する全身化学療法を推奨するか?
CQ 11 大腸癌腹膜播種(同時性ならびに異時性)に対する腹膜内化学療法(非温熱)を推奨するか?
5章 腹膜偽粘液腫
CQ 1 腹膜偽粘液腫の診断および治療法選択のために如何なる検査を推奨するか?
CQ 2 腹膜偽粘液腫に対して減量手術(debulking surgery)を推奨するか?
CQ 3 腹膜偽粘液腫に対して完全減量手術+腹腔内温熱化学療法(CRS+HIPEC)を推奨するか?
CQ 4 腹膜偽粘液腫に対して腹腔内化学療法(非温熱)を推奨するか?
CQ 5 切除不能進行再発腹膜偽粘液腫に対して全身化学療法を推奨するか?
CQ 6 腹膜偽粘液腫治癒切除例に対して補助全身化学療法を推奨するか?
CQ 7 腹膜偽粘液腫では如何なる緩和医療を推奨するか?
CQ 8 腹膜偽粘液腫術後に大腸癌術後と同じフォローアップ法を推奨するか?
CQ 9 腹膜偽粘液腫患者の予後予測に如何なる因子を用いることを推奨するか?
6章 卵巣癌
CQ 1 腹膜播種を有する初回進行卵巣癌に対して腹腔内化学療法を推奨するか?
CQ 2 腹膜播種を有する進行卵巣癌に対して腫瘍減量手術時に腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を併用することを推奨するか。
CQ 3 腹膜播種を有する再発卵巣癌に腹腔内化学療法を推奨するか?
7章 癌性腹水
CQ 1 大量腹水を伴う腹膜播種に対して化学療法を推奨するか?
CQ 2 大量腹水を伴う腹膜播種患者に対してCARTを推奨するか?
CQ 3 腹膜播種を伴う大量腹水に対して、腹腔 ─ 静脈シャント術を推奨するか?
CQ 4 癌性腹水コントロールにトリアムシノロンアセトニドの腹腔内投与は推奨されるか?
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書籍情報
- ISBN:9784307204279
- ページ数:212頁
- 書籍発行日:2021年8月
- 電子版発売日:2021年8月18日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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