心電図の読み"型"教えます! Season 3

  • ページ数 : 160頁
  • 書籍発行日 : 2021年3月
  • 電子版発売日 : 2021年3月19日
3,080
(税込)
m3.com 電子書籍ポイント: 168pt ( 6 %)
m3ポイント:1%相当 point-info
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

心電図がとれる、読める、コンサルできる!
心電図スキルが格段にUPする待望の第3弾


ケアネットの人気web連載「Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター」の書籍化第3巻.オリジナルの語呂合わせや新・検脈法,一度読めば忘れないユニークな解説は,心電図に挫折し,それを克服した経験を持つ著者だからこそ書けるもの.第3巻では,「術前心電図の考え方」にも言及し,循環器医へのコンサルが苦手の人は必読だ.型破りながらも系統的な“読み型”で,心電図判読スキルが格段にUPする,お勧めの1冊である.

あわせて読む → 心電図の読み"型"教えます! Season 1, 心電図の読み"型"教えます! Season 2

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
推奨ブラウザ: Firefox 最新版 / Google Chrome 最新版 / Safari 最新版
PCブラウザ閲覧では動画再生には対応しておりません。

序文

巻頭言

皆さま,ごきげんよう.

『心電図の読み“型”教えます!』シリーズも今回でSeason 3を迎えることができました.まずは率直に安堵の気持ち,そして読者の皆さまに感謝の意を表したいと思います.全ての原稿校正をほぼ終えた後,この文章を書いています.

前作Season 2は,未曾有とも言える新型コロナウイルスの蔓延により延期された第84回日本循環器学会総会(2020年)を狙っての発行でしたから,そこから約1年が経過したことになります.

2020年という年は,一体どういう年だったでしょうか?

日本はもちろん,世界のあらゆる地域から平穏な日常を奪ったCOVID-19ばかりが注目された1年だったように思います.医学界においては,あらゆる研究会や学会が中止・延期となる中,改めてインターネット技術の堅牢性が明らかになった気がします.閉塞感ばかりの毎日でも地道に続けたケアネット(https://www.carenet.com/)における連載『Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター』(通称“ドキ心”)の計14回分のレクチャーがここに結集しました.きっとこの1年のことは忘れない,そんな印象深い1年になった気もしています.

このシリーズでは,すっかり“定番”となりました(笑),著者自身による巻頭言を兼ねての各章ダイジェストを今回もしてみましょう.



はじめのCh.1からいきなり“大物”を持ってきました.多くの示唆に富む,救急症例だと思います.ボクのレクチャーではお馴染みですが,非典型的な臨床症状でやって来る,心筋梗塞などの重症疾患を見逃さないためにはどうすれば良いでしょうか? Dr.ヒロの言う“Chest Pentagon”を意識することの大切さを再認識してください.顎・両肩・両季肋部で囲まれたこのゾーンに自分なりの名前をつけ,怪しいと感じたら躊躇なく心電図をとることの大事さを伝えています.心電図を「とれる」のも大事な能力だし,その上で先入観を除いて平坦な心で波形と対面することが大事です.消化器疾患としばしば誤診されがちな,高齢女性のST上昇型心筋梗塞(STEMI)を例に考えてみましょう.これを理解したら,アナタの明日からの救急対応が変わるはずです.

続く2つの章(Ch.2,Ch.3).テーマは「術前心電図の考え方」.心電図の読みとは直接関係するわけではありませんが,前から取り上げたかった内容です.

循環器医をしている方には共感いただけると思いますが,“循環器コンサルト”の一定数をなす「術前評価」についてです.心臓・血管外科を除く外科系診療科における待機的な手術に際しての術前検査はどこまで必要なのでしょう?

日本では,とかく“術前リスク評価”の名の下に血液検査,胸部X線や呼吸機能検査,そして心電図,さらには心エコーや下肢静脈エコーまで…非常に多くなされます.

どこまでやるのかは当該診療科や主治医の意向にもよりますが,普段から“やりすぎ”ではないかと思う場面もあります.

なかでも心電図は必ずと言っていいほどなされ,何らかの所見があったら循環器コンサルトというケースが多いです.そんなときに,どんな所見を問題視し,場合によっては当初の手術より優先して心臓の精査・加療を行うべきかを判断するにはブレない姿勢が大切です.術前心電図の意義をあらためて考え(Ch.2),結果的に,循環器(または内科医)が術前介入すべき状況は少ないことを知ってください.非心臓手術における心電図のとらえ方に関して考えるキッカケになればいいと思います.

また,各種リスクに応じた対処法を学びましょう(Ch.3).術前に検査する「妥当性」とともに,「緊急性」を考慮しながら心電図を眺められれば,今まで“退屈”と思っていた術前評価に一定の興味が湧くのではないかと思います.なかでも登場したRCRI(Revised Cardiac Risk Index)や“active cardiac condition”の考え方も参考になるんではないでしょうか.

Ch.4は認知症治療薬の投与前に心精査が必要とされた症例を取り上げました.自動診断や他者の判読だけで満足せず,常に自身の目で波形を一つ一つ読んでいくことの重要性を説いています.昔の心電図と比較したり,右前胸部(V1〜V3)誘導のR波が増高してゆく様子に着目したりと,次のCh.5で扱うQ波の考え方の伏線となるような解説にもなっています.きっと心電図の奥深さを体験することになるでしょう.

Ch.5〜Ch.8は,「異常Q波」について扱っています.実は,このSeason 3では,QRS波のチェックをメイン・イベントとして扱っており,なかでも多くの章をこの「異常Q波」に割いていることに気づかれるでしょう.「胸痛ならST変化」,「動悸・めまいなら不整脈」のような症状重視の“決め打ち判読”では軽視されがちなQ波ですが,陳旧性心筋梗塞を代表として一定エリアが壊死して機能しなくなった状態を反映しており,その臨床的意義は大きいものです.

はじめに「どんな波をQ波って言うんだっけ?」と言う人々がいたら,どうぞSeason 2のCh.1を復習しましょう(定義ですね).

Ch.5では,“クルッと”の語呂合わせ部分ではじめにチェックすべき,V1〜V3誘導における「異常Q波」を扱います.“ある(存在)だけで即アウト”という,厳しくも,逆にわかりやすいかなぁと考えているルールは重要です.加えて,「右脚ブロック」合併の際,華々しい波形に隠れたQ波を見逃すな,とのメッセージは,系統的判読の重要性を再確認することでもあるわけです.本文では“魔法・魔力”とも表現していますが,われわれの目をごまかす“霧吹き仙人”に騙されない強い心で心電図を読みたいものです.

Ch.6では,「異常Q波」の診断基準を最新のものにアップデートしようという企画.「V1〜V3誘導」と「それ以外」とで分けて考える点がポイントです.後者のQ波の「幅」や「深さ」に着目する点や(“1mmルール”という新しい定石が登場します),隣接誘導グループを意識して考えることは,梗塞巣のゾーンを推定する際にも有用な考えですので,よく理解しておいて下さい.

続くCh.7では,“Q波探し”と病変(梗塞)部位を考える練習として2症例を用意しました.“探偵”という言葉,個人的には非常に気に入っており,「Q波は“探す”もの—それには一定の手法がある」ということを伝えたかったわけです.Ch.6で学んだ「V1〜V3誘導」,「それ以外」の順で「異常Q波」を拾い上げ,その組み合わせから傷害部位を推定するまでが一連の流れです.これまでも随所で,誘導を“目(視点)”ととらえるスタンスを強調してきました.左室の“どこ”と対峙するのかを意識すれば複雑な表などを暗記することなく,病変の場所をイメージすることができるようになるでしょう.また,“周囲確認法”は奇妙なネーミングかもしれませんが,Q波“以外”を見て,それが「異常Q波」であるかを確認するテクニックも是非とも習得して欲しい考え方になります.

続くCh.8では,「異常Q波」の集大成として,以前からずっと紹介したかった内容を思う存分レクチャーしています.ボクの知る限りでは,日本の教科書でこの内容を扱っているものはあまり見かけません.III誘導やaVL誘導に単独のQ波があっても多くは病的なものではないことを皆さんご存知でしょう.では,「III+aVF」誘導の2つにある場合はどうでしょうか?現実でもよく遭遇する下壁誘導のQ波が“本物”(心筋梗塞)か“ニセモノ”かを心電図で判断する方法を解説していますが,実は「深呼吸」でわかる…のか? 結果にご期待あれ(笑).驚きを持って読み進められること間違いなし!最終的にこの手技がスタンダードになったらいいなと思っています.何せ深呼吸はタダですから.それ以外の注目点に関しても,これまで章の復習も兼ねて,なかなか濃い内容となっています.

Ch.9はもともとCh.10の内容と合わせた“前半戦”として執筆しました.ですから,「左室高電位」,そして最終的にはCh.11の「左室肥大」の心電図を理解するための“準備”のつもりだったんです.ですが,あえて新しくタイトルを変え,今まであまり具体的な心疾患との対応を述べてこなかった「(QRS)軸偏位」の病的意義を論じてみました.

QRS波の「向き」(電気軸)に着目し,そこから発展して「左脚前枝ブロック」の考え方についての解説となっています.いや,実は2014年に出版した『心電図のはじめかた』(中外医学社)という心電図の初学者向けの教科書では,“(絶対に)覚えなくていい”診断基準の例として「左脚前枝ブロック」を挙げているのですが(笑),ボクのレクチャーを受けてある程度勉強が進んだ人ならスムーズに理解できるかと思って取り上げました.“トントン法Neo”で電気軸を「数値」として求める意味も実感して下さい.また,「左軸偏位」以外の条件は,Season 2(Ch.1)で述べた正常なQRS波形を構成する「右室パターン」と「左室パターン」のコンビネーションであり,うまく「左軸偏位」となるように考えると,本当に暗記する部分なんてないということが伝わるといいなぁ.

続くCh.10は心電図で「左室肥大」と診断するための中核となる「(左室)高電位」の診断基準を考えます.かつてのボクが愕然とした上級医とのやりとりが好例ですが,実にたくさんのクライテリアが提唱されています.全てを扱うことは不可能ですから,最も代表的と思われる基準にしぼって扱っています.“そこのライオン”,“こなれた男女は3L”,そして“浪費エステ”…またまた何を言うんだコイツとは思わないで下さい(笑).少しでも親しみを持ってもらうためのボクなりの工夫です.でも,実際どうです? ボクも含めて,こうした細かな数値を正確に暗記するのってストレスフルですよね.また,こうした基準をできるだけ多く暗記することが心電図を読み解くカギだなんて誤解されたくもないので,オススメは“(ブイ)シゴロ密集法”です.側壁誘導(V4〜V6)の“見た目”だけで判定するDr.ヒロ・オリジナルの手法ですが,これがまぁまぁ使えるんです.

どうせ最近の心電計には主な「(左室)高電位」基準が網羅されているでしょうから,そちらはコンピュータに任せて,定性的議論(密集法)に“自動診断込み”という判読スタンスも初学者時代には悪くないでしょう.あまり気張らずに学んで下さい.

そしてCh.11では「左室肥大」について述べてSeason 3のレクチャーは終わります.心エコーとは違い,心電図は心臓そのものを画像化するわけではありませんから,診断精度でかなうはずもありません(最初から比べようとすること自体ナンセンスです).でも,「(左室)高電位」と「ST-T変化」の“2大診断基準”を軸に,Romhilt-Estesに学ぶ“浪費エステ〜”のスコアリング・システムを意識したやり方が皆さんを開眼させるはず.最後に示したDr.ヒロ’s診断フローチャートは“エビデンス”というか,科学的根拠や論文レベルで検証を行うと言った種別のものとは違いますが(笑),ボクも普段は大体このように考え,「左室肥大」とはアッサリつき合うようにしています.これもそれなりに使い勝手がいいですから,皆さんにもお勧めしたい“自信作”です.

そして,最後のCh.12では,これまでのレクチャーの理解度が試されるクイズ集としました.ボクが執筆するコンテンツが好評をいただく理由に,「クイズの解説が丁寧」というご意見を多数いただきます.ここでも,その本領を発揮していますよ(笑).よい復習になればと思います.



最後にいつもながら感謝の言葉を述べて終わりたいと思います.

自分自身のライフ・ワークの一つに位置づけている,心電図・不整脈に関する執筆活動を始めてそろそろ丸10年が経とうとしています.その間,本当にいろいろなことがありました.言い知れぬ不安や焦燥感,その他様々な感情で「もうダメだ.続けられない(たくない)」と思ったことも正直一度ならずあります.それでも,何とか続けてこれたのは,様々な人の助けがあったからです.

まず,本書の元になった“Dr.ヒロのドキドキ心電図”の編集・校正は連載開始時からケアネットの土井舞子氏の手によるものであり,それは今回も変わりません.2018年8月に突如思い立って始めた連載も2年,50回近くなり,「読み“型”」を伝えるレクチャーもそろそろ最終コーナーに入っています.最近は,ボクの能力不足から連載ペースを1回/月に落としましたが,変わらぬ質で支えてくれたように思います.

また,出版元の中外医学社のご厚意で今回も執筆にこぎつけられたことは幸せでした.企画部鈴木真美子氏は今回も温かく見守りサポートしてくれましたし,過去作品でのノウハウを基盤に今回も制作部中畑謙氏の編集作業で,見た目にも美しく,かつ非常に魅力的なレクチャーが紙面で展開できていることも本当に嬉しく思います.ボクの都合で途中スケジュールが大幅に狂ってしまい,ご迷惑をおかけしたことをここにお詫びいたします.

そして,家族の支えも大きかったです.日常,一臨床医としての日々に追われる中,2020年は3つの連載を掛け持ち,書籍や依頼原稿の執筆にも余念なく取り組み,自分の医師人生の中で最も忙しかった1年間でした.我が子とも普段あまり遊んだり一緒に勉強したりもできずに反省の気持ちもあります.でも,おかげで,また一冊,渾身の一作ができました.また,浅草にいる両親もいろいろ病気をしたりと大変です.でも“不肖の息子”の著作が多くの医療関係者に愛読されていることも知っており,きっとまた喜んでくれていると信じています.「多様性」という言葉が市民権を得つつある中,医師である傍ら,こうした執筆活動を続ける自分なりの自己表現の意義を理解してくれるのは,やはり家族しかいないと思っています.

どの世界にも“ファン”と“アンチ”がいます.賛否両論ありますが,Dr.ヒロのレクチャーで心電図を学んだ方が,多くの患者さんたちを幸福にする過程にほんの少しでもお力添えできているとしたら,これはもう望外の喜びです.これからもたくさんの苦難の道は待ち受けているかとは思いますが,また一歩,少しずつでも前身してゆきたいです.うん.とりあえず,できた!


2021年2月 まだ寒さの残る京都より

杉山裕章

目次

巻頭言

Dr. ヒロ流!心電図判読メソッド

本書の資料のダウンロード方法


CHAPTER1 非典型的な急性心筋梗塞への挑戦〜先入観に負けずに心電図を読め!〜

CHAPTER2 アナタはどうしてる? 術前心電図の考え方(前編)

CHAPTER3 アナタはどうしてる? 術前心電図の考え方(後編)

CHAPTER4 異常Q波の厳しいオキテ〜存在=異常なんてある?〜

 Column1 心電業界へのコロナ禍の影響

CHAPTER5 右脚ブロックの“魔法”に注意!〜華々しさに潜む傷跡〜

CHAPTER6 「異常Q波」アップデート〜最近の考え方を知る〜

CHAPTER7 “Q波探し”の実践訓練〜めざせ“名探偵”〜

 Column2 人工知能(AI)による心電図診断

CHAPTER8 本物?ニセモノ? 下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法

CHAPTER9 QRS波の“向き”でわかる脚ブロック〜わかるとカンタン! 束枝ブロック診断〜

 Column3 ついに承認!Apple Watch心電図アプリ

CHAPTER10 高電位の基準,いくつ知ってる?〜ライオン・男女・エステがキーワード〜

CHAPTER11 “ポイント”で考える左室肥大〜“合わせ技”的な総合判断をせよ〜

CHAPTER12 “期末テスト”的おさらい心電図ドリル

 解答と解説


索引

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 最新バージョンのOSをご利用ください

    外部メモリ:16.3MB以上(インストール時:35.2MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:65.4MB以上

  • android icon

    AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください

    外部メモリ:16.3MB以上(インストール時:35.2MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:65.4MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784498137066
  • ページ数:160頁
  • 書籍発行日:2021年3月
  • 電子版発売日:2021年3月19日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍が必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。