緑内障〈眼科診療ビジュアルラーニング3〉

  • ページ数 : 384頁
  • 書籍発行日 : 2018年4月
  • 電子版発売日 : 2021年1月22日
13,200
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商品情報

内容

わが国の中途失明原因の1位となっている緑内障.眼科医に求められる知識とテクニックは実に幅広い.病初期の診断と治療介入の判断,進行度合いの評価,点眼治療薬の変更・追加,患者さんの視覚の質の保持とアドヒアランスの向上,点眼薬の副作用対応などがある.本巻では,2018年1月に公表された『緑内障診療ガイドライン(第4版)』の内容を反映し,緑内障診療にかかわる情報を,症例写真を中心にまとめた.診療モデルでは,眼底所見と視野所見が不一致な症例や眼圧が正常でも視野障害が進行する症例など,診療家の悩みどころをとらえて,緑内障専門医がどう切り抜けるかを如実に紹介.

あわせて読む → 「眼科診療ビジュアルラーニング」シリーズ
ぜんぶ読む → 〈眼科診療ビジュアルラーニング〉1~6巻セット

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序文

序文

眼は本当におもしろい!興味のつきない臓器である.視るための臓器を自分で観ることができ,それを通して人を診る,また人として看るのである.高度に発達した解剖組織の一つ一つが統合されて機能し,視覚の認知を司る.その,どの一つを欠いても障害が起きるが,原因をとらえるとなると見る限界があり,見えない生理活動の一つに眼圧,房水動態がある.眼圧は脊椎動物に特有の生理機能で,房水を恒常的に循環させながら眼球形状を保ち,光をとり入れて受けとる構造と情報を伝える視神経軸索を維持するために最も重要である.緑内障は,視る機能の源である眼圧の制御異常である.

さて,本巻は緑内障の“1.基礎編”,“2.診断編”,“3.診療編”で構成されている.“1.基礎編”,“2.診断編”には,私の日頃の思いをあちこちに呟きとして書いた.少しでも共感していただければ幸甚である.

まず,眼圧の基礎は謎だらけだ.高ければ緑内障に,また低くても低眼圧網膜症とうっ血乳頭となり,いずれにしろ見えなくなる.しかし,眼圧を維持する機能を担う房水動態をはじめ,産生流出の分子機構も残念ながら解明されていない.OCT の導入で網膜および乳頭構造障害は十分研究されてきたが,根本である眼圧のことをもっと考えるべきである.そう思って“1.基礎編”をみてほしい.

また最近は,眼科の所見は何でも画像化あるいは数値化できる.そのうちにAI 診断システムも導入されれば答えまで出してくれるかも知れない.しかし,デジタル化は眼科医の目を退化させそうだ.アナログであるヒトの視る力が,われわれのつくった器械に負けてはならない.特に緑内障の網膜視神経構造障害は個体差が大きく,本質は自分の目で確かめる意識を失わないようにしたい.そう思って“2.診断編”を読んでほしい.

そして“3.診療編”は新進気鋭の緑内障専門家にさまざまな側面からの診療に役立つ情報を寄せていただいた.折しも,2018 年1 月に『緑内障診療ガイドライン(第4 版)』が公表された.本編は,その行間あるいは肉づけとなる情報が満載であり,日常診療に大いに役立つものと自負している.

本巻が,ぜひとも眼の生理機構として最も重要な眼圧と,それに伴う緑内障の病態,慢性疾患の治療の難しさとその奥深さについて考える機会になれば望外の喜びである.


2018 年2 月

東京大学大学院医学系研究科眼科学/教授 相原 一

目次

1 基礎編

網膜視神経の構造と機能

 視神経乳頭と網膜神経線維

 黄斑部と網膜神経節細胞

緑内障性視神経症

眼圧にかかわる解剖と生理・機能

 隅角と毛様体の構造

 房水の産生と流出

 角膜剛性と中心角膜厚

 日常生活でみられる眼圧変動

 眼圧上昇のメカニズム

治療薬

 作用と分類

 プロスタグランジン関連薬

 交感神経β遮断薬

 炭酸脱水酵素阻害薬

 配合薬

2 診断編

発症の危険因子と初期診断

検査とその所見

 主訴の聴取と検査手順

 眼底

 視野

 隅角

 目標眼圧の設定と再評価

病型の診断

 病型の判定と有病率

 高眼圧症

 前視野緑内障(preperimetric glaucoma)

 原発開放隅角緑内障(広義)

 原発閉塞隅角緑内障

 小児緑内障

 ステロイド緑内障

 落屑緑内障

 血管新生緑内障

 悪性緑内障(毛様体ブロック緑内障)

 外傷性緑内障

症状進行の評価と長期管理

 眼圧下降治療の開始と効果判定

 視野障害の進行評価と視神経乳頭変化

 薬剤毒性と眼表面の管理

 周術期の管理

3 診療編

所見,症状/狭隅角 (三嶋弘一)

 瞳孔ブロックの関与する原発閉塞隅角症疑いの症例とプラトー虹彩を疑う原発閉塞隅角緑内障の症例

所見,症状/急性原発閉塞隅角症 (古藤雅子,酒井 寛)

 急性原発閉塞隅角症の症例

所見,症状/乳頭陥凹拡大 (大久保真司)

 乳頭陥凹は,乳頭径に注意!

所見,症状/網膜神経線維層欠損 (溝上志朗)

 検診で網膜神経線維層欠損を指摘され受診した症例

所見,症状/乳頭出血 (新田耕治)

 頻発する乳頭出血がみられ,視野障害がゆっくり進行した症例

所見,症状/乳頭所見と視野所見の不一致 (栗本拓治)

 視神経乳頭陥凹拡大はあるが視野障害のみられない前視野緑内障の症例

所見,症状/OCT 所見の評価 (齋藤 瞳)

 OCT所見を鵜呑みにすると誤診してしまう可能性のある症例

所見,症状/高眼圧 (臼井審一)

 学校健診を契機に高眼圧症を指摘された症例

初期の診断治療/前視野緑内障の管理 (相澤奈帆子,中澤 徹)

 経過観察する症例と治療を始める症例

初期の診断治療/ベースライン眼圧と危険因子の把握 (森 和彦)

 アトピー性皮膚炎へのステロイド軟膏使用中に視神経乳頭陥凹拡大がみられた症例

初期の診断治療/1 本目の開放隅角緑内障点眼治療 (大鳥安正)

 極早期緑内障の所見がみられる患者への点眼治療を開始した症例

長期点眼治療での注意点/開放隅角緑内障での点眼治療の評価・変更 (雲井美帆,三木篤也)

 右眼に視野障害の進行を認め,配合薬点眼に変更した症例

長期点眼治療での注意点/眼圧正常でもみられる症状進行 (坂田 礼)

 点眼での眼圧が15mmHg 以下でも進行する正常眼圧緑内障の症例

長期点眼治療での注意点/強度近視の緑内障 (山下高明)

 強度近視(病的近視)の緑内障症例

長期点眼治療での注意点/充血 (庄司拓平)

 両眼の充血悪化と眼圧上昇傾向がみられた長期点眼治療中の症例

長期点眼治療での注意点/瞼の赤い腫れ (須田謙史,赤木忠道)

 緑内障点眼治療中に眼瞼腫脹を訴えた症例

長期点眼治療での注意点/目のゴロゴロ感 (丸山悠子,池田陽子)

 緑内障点眼により角膜上皮障害が出現した症例

長期点眼治療での注意点/点眼指導 (内藤知子)

 処方した点眼薬が妙に減る症例

長期点眼治療での注意点/アドヒアランスの向上策 (末武亜紀,福地健郎)

 検査入院でアドヒアランスを修正した正常眼圧緑内障の症例

長期点眼治療での注意点/ステロイド緑内障 (生杉謙吾)

 手術治療を必要としたステロイド緑内障の症例

長期点眼治療での注意点/落屑物質の出現 (井上俊洋)

 線維柱帯切除術中に水晶体亜脱臼をきたした症例

長期点眼治療での注意点/血管新生の出現 (石田恭子)

 糖尿病に併発した開放隅角期の血管新生緑内障例

手術と周術期管理/レーザー虹彩切開術のコツと注意点 (新垣淑邦)

 原発閉塞隅角症疑いと診断し,レーザー虹彩切開術を施行した症例

手術と周術期管理/流出路再建術の術式と適応 (谷戸正樹)

 白内障による視力低下を伴う高齢者の開放隅角緑内障

手術と周術期管理/濾過胞漏出 (小竹 修,丸山勝彦)

 線維柱帯切除術後5 年で房水漏出をきたし,低眼圧黄斑症により視力が低下したため濾過胞再建術を行った症例

手術と周術期管理/濾過胞感染症 (有村尚悟,稲谷 大)

 偽水晶体眼の線維柱帯切除術後にみられた濾過胞感染症の症例

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書籍情報

  • ISBN:9784521745121
  • ページ数:384頁
  • 書籍発行日:2018年4月
  • 電子版発売日:2021年1月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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