高次脳機能障害リハビリテーションの流れが見える

  • ページ数 : 335頁
  • 書籍発行日 : 2023年9月
  • 電子版発売日 : 2023年9月22日
5,940
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商品情報

内容

なぜその症状が起きるのか─高次脳機能障害を症候学的に捉える!
脳の構造・機能の基本から高次脳機能障害の病態,症状の多様性までよくわかる!症例をもとに日常的な困りごとと関連づけながら評価→介入→検証の流れも具体的に学べる.初学者から現場PT・OTまで長く使える一冊

序文


理学療法士(PT)・作業療法士(OT)養成校の学生にとって,高次脳機能障害は理解するのが難しい障害だと思います.それは臨床に出たばかりのPT・OTにとっても同様かもしれません.理由は,複雑な脳構造・脳機能と結び付けて理解する必要があること,運動障害に比べて目に見えにくいこと,同じ障害名であっても患者によって症状が大きく異なること,個々の高次脳機能障害が明確に区分できず相互に関連すること,障害の定義や名称において研究者間の議論が続いていること,検査が大量にあること,検査結果と生活上の困りごとが必ずしも一致しないこと,などがあげられるかと思います.

本書は,このように理解するのが難しい高次脳機能障害,およびそのリハビリテーションについて,できるだけ平易に,かつ最新のエビデンスを意識しながら,その領域の第一線で活躍しているPT・OT・言語聴覚士(ST)の先生方に執筆いただきました.「1章 総論」,「2章 高次脳機能障害各論」を理解したうえで,「3章 高次脳機能障害のリハビリテーション」をお読みいただければ,そのリハビリテーション臨床におけるセラピストの方々の知恵や工夫がリアリティをもって理解いただけると思います.「4章 高次脳機能検査の実際」には,代表的な検査の解説を記載しました.他書と異なり,統合失調症の検査も記載してあります.

通常,高次脳機能障害の教科書は,脳卒中を中心として記載されています.しかし,脳卒中,認知症,内科系疾患,精神疾患,発達障害などとできるだけ分けずに,「どの疾患による高次脳機能障害であっても,脳の機能障害による一症状である」との見方をすることが,PT・OTの高次脳機能障害への理解を深め,臨床の知見を豊かにするのではないかと,本書を編集するにあたり編者らは考えました.また,検査結果ばかりに目を向けるのではなく,日常の困りごとを中心に考えるのが,PT・OTの役割であるとも考えました.そこで50ページに記載した「日常の困りごとと高次脳機能障害・疾患の関連一覧」を作成してみました.この表はまだ,試験的作成段階です.読者の皆さまからご意見をいただき,さらに改良して,高次脳機能障害の臨床に携わるPT・OTがその全体像を理解することに寄与できたらと考えています.また,コース立方体組合せテストとHDS-Rの検査場面を動画にしました.このような動画は意外と少ないと思います.ぜひ,講義でご活用いただければ幸いです.

本書は,PT・OTがともに使用できる教科書として,また臨床に出たばかりのPT ・OTにも役立つことを目的として新たにシリーズ化された「リハの流れが見える」シリーズの第1冊目となります.本書が学生や初学者にとっての高次脳機能障害リハビリテーションの流れの見える化に寄与できることを期待したいと思います.

最後になりますが,臨床や教育・研究でお忙しいなか,多くの時間を割いてご執筆いただいたPT ・OT・STの皆さま,編者の気が付かないところまで詳細かつ丁寧にお世話くださった株式会社羊土社 増本奈津美様をはじめ編集部の皆さまに深謝いたします.


2023年9月

下田信明
高杉 潤

目次


・序[下田信明,高杉 潤]

・略語一覧

第1章 総論

1 高次脳機能障害とは[下田信明]

1 高次脳機能とは

2 高次脳機能と低次脳機能

3 高次脳機能と認知機能

4 高次脳機能障害とは

5 行政における高次脳機能障害診断基準

6 各高次脳機能とその障害:概略

2 疾患と高次脳機能障害[下田信明]

1 脳の構造・機能とその障害

2 側性化

3 機能的結合ネットワーク

4 疾患と高次脳機能障害

5 日常の困りごとと高次脳機能障害・疾患の関連一覧

COLUMN ①左手利き者と右手利き者の認知機能差[下田信明]

3 高次脳機能障害リハビリテーションの基本的考え方[下田信明]

1 リハビリテーションとは

2 高次脳機能障害の回復の基盤

3 リハビリテーションアプローチ

4 ガイドラインにおける高次脳機能障害リハビリテーションの推奨度とエビデンスレベル

COLUMN ②移動に影響を及ぼす高次脳機能障害[高杉 潤]

第2章 高次脳機能障害各論

1 意識・覚醒および注意の障害[高杉 潤]

1 定義

2 症状

3 関連する疾患

4 関連する脳機能・病巣

5 評価

6 対応

2 情動・意欲・社会的行動の障害[竹田里江]

1 定義・分類

2 症状

3 関連する疾患

4 関連する脳機能・解剖

5 病巣・機序

6 評価

7 対応

COLUMN ③行為の抑制障害と前頭葉損傷との関係[高杉 潤]

3 記憶の障害[田平隆行]

1 定義・分類

2 症状

3 関連する疾患,脳機能,病巣

4 評価

5 対応

4 言語の障害[小森規代]

1 定義・分類

2 症状

3 関連する疾患

4 関連する脳機能・解剖

5 評価

6 対応

5 遂行機能・ワーキングメモリの障害[竹田里江]

1 定義・分類

2 症状

3 関連する疾患

4 関連する脳機能・解剖

5 病巣・機序

6 評価

7 対応

COLUMN ④心的回転課題[下田信明]

6 無視症候群[大松聡子]

◆半側空間無視

1 定義・分類

2 症状

3 関連する疾患

4 関連する脳機能・解剖

5 病巣・機序

6 評価

7 対応

◆片麻痺に対する病態失認

8 定義・分類

9 症状

10 関連する疾患

11 病巣・機序

12 評価

13 対応

◆片麻痺に対する身体所有感の障害

14 定義・分類

15 症状

16 関連する疾患

17 病巣・機序

18 評価

19 対応

7 失認[磯 直樹]

1 定義・分類・症状

2 関連する脳機能および病変部位

3 評価

4 対応

8 失行[鈴木 誠]

1 定義・分類

2 症状

3 関連する疾患

4 関連する脳機能・解剖

5 病巣・機序

6 評価

7 対応

COLUMN ⑤運動イメージ[磯 直樹]

9 認知症[鈴木優喜子]

1 定義・原因疾患

2 症状

3 認知症を取り巻く環境

4 評価

5 対応

COLUMN ⑥認知機能の男女差は本当にあるのか?[下田信明]

第3章 高次脳機能障害のリハビリテーション

1 注意の障害[揚戸 薫]

1 症例提示

2 臨床所見(支援開始時)

3 支援〜生活版ジョブコーチ支援を実施〜

4 支援後の変化

5 考察

6 まとめ

2 行為の抑制障害(してしまう行為障害)[高杉 潤]

1 症例提示

2 評価

3 病的把握現象,道具の強迫的使用の神経学的メカニズム

4 評価上のアドバイス

5 リハビリテーション

COLUMN ⑦魚は痛みを感じるか?自分をわかるか?[下田信明]

3 記憶の障害[坂本一世]

◆記憶障害の症例①

1 症例提示

2 評価

3 リハビリテーション

◆記憶障害の症例②

4 症例提示

5 評価

6 リハビリテーション

4 言語の障害[小森規代]

1 症例提示

2 評価

3 リハビリテーション

5 遂行機能・ワーキングメモリの障害[竹田里江]

1 症例提示

2 評価

3 リハビリテーション

4 結果(作業療法終了時点)

5 作業療法の効果

6 無視症候群

◆症例①[大松聡子]

1 症例提示

2 評価(発症1~2ヶ月)

3 リハビリテーション

4 経過

◆症例②[内田武正]

5 症例提示

6 評価(Y+37ヶ月時点)

7 リハビリテーション

COLUMN ⑧運動麻痺と間違われやすい高次脳機能障害[高杉 潤]

7 失認[内田武正]

1 症例提示

2 評価(X+13〜20日)

3 リハビリテーション

8 失行[村山尊司]

1 症例提示

2 転院時の評価

3 リハビリテーション

9 認知症[鈴木優喜子]

1 症例提示

2 評価

3 問題点と利点

4 リハビリテーション

5 作業療法経過および考察

COLUMN ⑨内部障害と認知機能[下田信明]

第4章 高次脳機能検査の実際

1 知能を評価する検査[岡部拓大]

1 コース立方体組み合わせテスト

2 WAIS-IV知能検査

COLUMN ⑩Flynn(フリン)効果[下田信明]

2 認知機能スクリーニング検査[岡部拓大]

1 MMSE-J

2 HDS-R

3 MoCA-J

3 注意機能を評価する検査[岡部拓大]

1 Trail Making Test日本版(TMT-J)

2 標準注意検査法(CAT)

4 遂行機能・全般的な前頭葉機能を評価する検査[岡部拓大]

1 BADS 遂行機能障害症候群の行動評価 日本版

2 前頭葉機能検査(FAB)

3 ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)

5 失語・失認・失行などを評価する検査

1 標準失語症検査(SLTA)[小森規代]

2 標準高次視知覚検査(VPTA)[趙 吉春]

3 半側空間無視の検査(BIT行動性無視検査日本版)[坂本一世]

4 Gerstmann症候群の検査[坂本一世]

5 標準高次動作性検査(SPTA)[趙 吉春]

6 精神疾患で用いられる検査[趙 吉春]

1 統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)

2 陽性・陰性症状評価尺度 (PANSS) 日本語版

3 精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)


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書籍情報

  • ISBN:9784758114349
  • ページ数:335頁
  • 書籍発行日:2023年9月
  • 電子版発売日:2023年9月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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