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  • 僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。~論文をどう読んでどう考えるか

僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。~論文をどう読んでどう考えるか

  • ページ数 : 311頁
  • 書籍発行日 : 2021年4月
  • 電子版発売日 : 2021年5月19日
3,960
(税込)
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商品情報

内容

研究目的と研究デザイン・統計学が結びつき、「論文をどのように捉えればいいのか」が見えてくる

論文の言っていることがわからない,細かいところが気になって進まない,結果をどう解釈したらいいのかわからない.そんな苦労をしている人のために,本書は「どこまで理解して読めばいいのか」の道筋を示します.

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序文

はじめに


この本を手に取っていただいた方のなかには「論文を正しく読めるように」と勉強したにもかかわらず、実際は「自分は正しく論文が読めているのだろうか」「バイアスと言われてもどこまで評価する必要があるのだろうか…」と悩まれた経験がある方もいるのではないでしょうか。これらは僕自身の経験ですが、振り返れば当然であったと思います。


なぜなら唯一の正しい論文の読み方という明確な答えはないからです。


研修医も指導者もそれぞれのレベルで理解し、それぞれの立ち位置のもとで原著論文を読んでいます。論文が読めないと思っている人は、「原著論文をどこまで理解して読めればいいのかがわからない」ので、論文が読めないと思っているのではないでしょうか。 本書のタイトルはそこからきており、「原著論文をどのように読むといいのか?」を主に初学者・レジデント向けに解説した本です。本書は大きく分けて3 つの点を意識しています。

1つはそもそも論文を読むために知っておきたい原著論文を読むための予備知識です。論文が出版されるまでや雑誌の話など意外と学ぶきっかけに乏しいところがあり、初学者にとってこの部分は非常に取りかかりやすいでしょう。


2つ目に研究目的を軸とした横断的な臨床研究の知識です。臨床研究に関する書籍はたくさんありますが、残念ながら研究デザインの本や生物統計学の本だけを読んでも原著論文を読めるようにはなりません。論文を読むためにはこれらの知識を横につなげていくことが必要だからです。本書では研究目的を軸に、研究手法が有機的につながっていくように意識して解説しています。


最後にどこまで理解して読めばいいのか? という視点です。臨床研究論文は患者さんを対象にしている以上、「正しく解釈すること」が求められます。しかし、この部分こそが「多くの臨床医が臨床研究論文を正しく解釈する体系的なトレーニングを受けていないにもかかわらず、正しく解釈することを求められる」という矛盾を生み出しています。本書ではこの「どこまで読めればいいのか?」という部分に対し、「Dr. Goto からの一言」として「これくらいの理解でもいいよ」「個人的にはこう思っている」という、臨床研究経験を踏まえた個人的なメッセージを各項目に入れてあります。この部分だけ流し読みしてもある程度内容は汲み取れると思いますし、おそらく多くの初学者にとってこのような割り切った線引きは原著論文を読む手助けになるはずです。


また、本書は主な読者としてレジデントを想定しているため、国家試験に出てくるレベルの単語(P値やオッズ比、感度・特異度など)はある程度知っているものとして解説していますが、それでも難易度は項目によってさまざまです。そこで本書では各項目の難易度を大まかに以下の5段階に分けています(難易度であって必ずしも重要度を反映しているわけではありません)。


★☆☆☆☆:基本的事項なので知っておいてほしい

★★☆☆☆:論文が苦手な人でも頑張りたい

★★★☆☆:専攻医であれば知っておきたい

★★★★☆:臨床研究論文をちゃんと読みたい人向け

★★★★★:指導医あるいは臨床研究に興味があるという人向け


僕は昔から英語が大の苦手で、その苦手意識は医学部に入り臨床実習を経て医者になってからも変わりませんでした。特に抄読会は大嫌いで、「なぜよくわからない英語論文を読まなきゃいけないのだろう」と思いながら友達や先輩に助けられつつ発表するものの、論文の読み方はこれでいいのかわからないという気持ちを抱えたままでした。


そんななか、僕が所属していた福井大学医学部附属病院救急部では、Step Beyond Resident を執筆されている林寛之先生が、「論文100本読めばその領域に詳しくなれる!」と言って、自分の決めたテーマの論文を100本以上(概算)読むという福井流ジャーナルクラブを行っていました。英語が苦手な自分には(とっても)苦痛でしたが、今思うと数を読むというのは論文への抵抗感を減らし、その分野に詳しくなるという意味で非常に効果がありました。しかし、その後いろいろな施設で研修し救急専門医を取得しても、原著論文1 本を最初から最後までちゃんと読むことを教わる機会はほとんどなかったように思います。そこで、「原著論文を読むための道筋となる本が欲しい」という当時レジデントだった自分を思い出し、本書を執筆しています。


この本をきっかけにして論文を読むことのハードルが下がり、実際に自分たちで研究を行うことに興味をもってもらえたら嬉しく思います。


2021年春

後藤匡啓

目次

監修のことば/長谷川耕平

はじめに

第1章 論文を読む前に知っておきたいこと

01 論文を1 本全部読む必要はあるの? ★

02 なぜ論文が読めないのか ★

03 そもそも臨床研究ってなに? ★★★

04 論文が世の中に出てくるまで ★★★

05 論文が掲載される医学誌を知る ★

06 どの医学誌から論文を選べばいいの? ★

07 論文の質はどうやって担保されているのか ★★

08 医学誌には原著論文以外も載っている ★

09 論文を探してみよう!:Google は便利 ★

10 論文を探してみよう!:PubMedの使い方 ★★★

11 論文を手に入れるにはどうしたらいいの? ★

12 どの論文を読めばいいの? ★★

第2章 論文の読み方

01 論文を読む前に心に留めてほしいこと(重要!) ★

02 論文の読み方に決まりはあるのか ★

タイトルページを読む

 03 論文のタイトルを読む ★

 04 アブストラクトを読む ★

 05 論文の著者・共著者:誰が論文を書いたか? ★★★★

イントロダクションを読む

 06 イントロダクションの構造 ★★

 07 研究目的を把握する ★★

 08 研究目的の具体例を知る ★★

メソッドを読む:基本編

●メソッドの構成と研究デザイン

 09 メソッドに何が書いてあるかを知る ★

 10 メソッドを読むのは難しくて当たり前 ★

 11 研究目的と研究デザイン:study design and setting ★★

 12 ランダム化比較試験:介入研究での研究デザイン ★★★

●観察研究で用いられるデータ

 13 データベースを知ることが重要 ★★★

 14 観察研究で用いられるデータの種類と特徴 ★★★★

 15 Claims データ ★★★★★

 16 データベースと研究デザイン ★★★★★

●研究対象集団とアウトカム

 17 研究対象集団の母集団を意識する ★★★

 18 研究対象集団を明確にする:組み入れ基準と疾患の定義 ★

 19 何を測定・評価したかを確認する ★★

 20 アウトカムを確認する ★★

メソッドを読む:発展編

●内的妥当性と一般化可能性

 21 内的妥当性と一般化可能性を意識する ★★★

 22 内的妥当性の検討:①選択バイアス ★★★★★

 23 内的妥当性の検討:②情報バイアス ★★★★

 24 内的妥当性の検討:③交絡…を説明する前に ★★★

 25 内的妥当性の検討:④交絡 ★★★★

 26 一般化可能性の検討:研究結果を自分の臨床現場に用いてよいのか ★★

●統計解析の基本

 27 なぜ統計解析が必要なのか ★★

 28 記述統計:研究対象集団を表す ★★★

 29 2群の要約統計量に差はあるのか? ★★★

 30 推測統計を知る:アウトカムとの関連性を推測する ★★★

 31 推測統計の基本:①回帰分析 ★★★★

 32 推測統計の基本:②生存分析 ★★★★

 33 推測統計における点推定値と95%信頼区間 ★★★

●研究目的と統計解析

 34 研究目的に応じた統計解析の考え方 ★★★

 35 〈関連と因果推論〉リスク因子の研究は2 種類ある ★★★★★

 36 〈関連と因果推論〉回帰分析と交絡の調整 ★★★★★

 37 〈関連と因果推論〉傾向スコアと交絡の調整 ★★★★★

 38 〈関連と因果推論〉ランダム化比較試験と関連性の指標 ★★★

●研究目的と統計解析(診断と予測)

 39 診断・予測モデルの研究の考え方 ★★★

 40 〈診断・予測モデルの研究〉予測モデルの構築と検証 ★★★

 41 〈診断・予測モデルの研究〉具体的な予測モデルの構築 ★★★★

 42 〈診断・予測モデルの研究〉性能の評価 ★★★

 43 〈診断・予測モデルの研究〉discrimination とcalibration ★★★★★

●サブグループ解析・感度解析

 44 サブグループ解析・感度解析で評価すること ★★★★★

結果を読む

 45 結果の全体の流れ ★

 46 研究対象集団はどんな集団なのか:Study flowとTable1 ★★

 47 関連性の指標を知る:オッズ比などの考え方 ★★

 48 記述研究の結果を読む ★★

 49 リスク因子の研究の結果を読む ★★★★

 50 治療・介入の研究の結果を読む:①研究対象集団 ★★★

 51 治療・介入の研究の結果を読む:②治療・介入の効果 ★★★

 52 診断・予測の研究の結果を読む ★★★

考察を読む

 53 考察の全体の流れ ★★

 54 研究限界:Limitations ★★

55 結論を読む ★

56 引用文献と利益相反・資金提供 ★★★

57 主要誌以外の論文を読む ★★★★

第3章 論文を読み終えたら

01 論文の批判的吟味と解釈 ★★★

02 抄読会に向けて情報をまとめる ★

03 文献を管理する ★★★★

04 知識をアップデートしていくために ★★★★


参考文献

おわりに

索引

コラム

論文を読めば良い医師になれる?

インパクトファクター(IF)の是非

なぜ大学院・研究留学したの?

Lancetにレターが載った!

メタアナリシス(メタ解析)はどう読むの?

臨床研究と機械学習

医療系ベンチャーとインターン

機械学習の応用①:クラスタリング

機械学習の応用②:治療効果の異質性

機械学習の応用③:診断と予測

機械学習の論文の読み方

医者が機械学習を学んだ方がいい?

はじめての海外学会発表

マルチレベル分析

オープンジャーナルに対する誤解

医療系ベンチャーで働きたい?

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書籍情報

  • ISBN:9784758123730
  • ページ数:311頁
  • 書籍発行日:2021年4月
  • 電子版発売日:2021年5月19日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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