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- うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル ワークブック 改訂第2版
商品情報
内容
全部で12章と補章からなり,段階的にプロトコルを学んでいく構成.本書を活用して精神的な苦しみを乗り越えていっていただきたいと願っています.
序文
推薦の辞
本書は,認知行動療法のエッセンスを医療場面で有効に使えるように専門家向けにまとめられた『うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル セラピストガイド 改訂第2版』の効果を高める目的で作成された利用者向けのワークブックの改訂第2版です.
本ワークブックは,『うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル セラピストガイド』を使っている専門家の治療を受けるときに,本書を利用すると,認知行動療法の効果が高まるように作られています.ですから,本書で紹介されている方法を使って治療を受けている方は,本書を手に取りながら治療を進めていただくと, より効果が期待できるでしょう.
改訂第2版の特徴としては,日本の研究チームの10年以上にわたる臨床と研究の経験が反映されていて,より科学的な裏づけのある内容になっている点が挙げられます.さらに,原著者の許可を得たうえで,日本人にとってわかりやすい内容に説明が修正され,イラストなども多く盛り込まれていて,使いやすいものになっています.
本書の特徴は,どのような精神疾患に悩んでいる人にも使っていただけるように,様々な疾患に使われている認知行動療法の方法をわかりやすくまとめ,統一した形で使えるようにしているところにあります.実際の医療現場を受診される方々の症状は多様で,人それぞれ違っています.そのなかで,うつと不安という心理的苦痛の中心的な状態に焦点を当てた「診断を越えた統一治療」を活用することで,いわゆる精神疾患に苦しんで医療機関を訪れる人たちの役に立つ認知行動療法を提供することができます.
もちろん本書で使われている方法は,日々のストレスに対処するためにも役に立ちます.私たちは,精神疾患とはっきり診断されなくても,毎日様々なストレスを体験しています.多くの場合は,無意識にそのストレスに対処できているのですが,そうした人でも本書で紹介されているようなストレス対処法を身につけていると,より効果的にストレス状況を切り抜けていくことができるようになります.
ぜひ本書を活用して,精神的な苦しみを乗り越えていっていただきたいと願っています.
2024年2月
大野 裕
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
認知行動療法センター顧問
ワークブック
日本版改訂第2版によせて
日本のみなさまへ,こころからの挨拶をさせていただきます.『うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル』(UP)のセラピストガイドとワークブックが日本で出版されることをうれしく思っております.ヨーロッパ,アメリカ,日本,アジアの国々など,世界中において不安症やうつ病で多くの方が苦しまれています.加えて,新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大においては,不安症やうつ病の有病割合がほぼ2倍にまで高まったと報告されています.UPでは,ネガティブな感情を感じやすい傾向や,感情をいやがって回避する傾向に焦点を当てます.そして,UPのスキルを学ぶことを通して様々なつらい症状を和らげることを目標にしています.
伊藤正哉博士とその同僚の方々は,専門的見地から第2版を翻訳し,感情症への最前線の捉え方や,診断横断アプローチを反映させてくれました.ワークブックではたくさんの新たなイラストが加えられていて,セラピーの進め方やアプローチの重要なポイントを見事に描いてくれています.さらには,英語オリジナル版で作られた素材を,日本の方々に合うように丁寧に工夫されています.こうした修正によって日本の方々が大切な考えをしっかりと理解して,取り組むことができるようになっています.
この改良された最新の第2版を作るなかで,伊藤博士らはクライエントや臨床家の方々からの声に耳を傾け,そうした感想や意見をしっかりと分析されてきました.日本版のこうした努力が英語オリジナル版や,その他の言語で出版されている初版の今後の改訂にも反映されていくことでしょう.
伊藤博士とその同僚の方々がこの翻訳をなしとげてくれたことを,かたじけなく思っております.“感情の痛みでつらい状態にある人が癒やされていく”.私たちのこの目標を共有する様々な方々が,こうしたUPの実践を役立つものと感じていただけるよう,心から願っています.
2024年2月
デイビッド H. バーロウ
トッド J. ファーキオーニ
マサチューセッツ州ボストンより
監訳者あとがき
いま,どのような気持ちでこの本を手にとっていただいているでしょうか.
「どんな本だろう?」と,初めて本書を開いてみたかたがおられるかもしれません.
UPに取り組んでいるまさに真っ只中にいるかたもおられるかもしれません.
つらい思いのなかで本書を読み進めたり,途中で投げ出したり,それでもまた手にとったりして,UPをなんとかやり遂げ,充実した気持ちでいるかたもおられるかもしれません.
UPに取り組んだ日々をなつかしんで,こんなことやあんなことをやったなあと,あのがんばっていたときのことをほろ苦く,やさしくふり返っているかたもおられるかもしれません.
あなたがいまどんな状況であろうと,本書を手にとっていただけているというご縁をありがたく思います.そして,本書が少しでも,何らかのかたちでお役に立てたらと,そう願っております.・・・
人は,強く激しく,自分を圧倒するような感情を体験します.
まるで世界が曇天におおわれているかのように,どんよりと暗くなるようです.
心がじくじくと傷んで,身動きがとれなくなるときもあるかもしれません.
泣き出したくなったり,さけびたくなるときだってあります.
もうなにもしたくない! ずっと引きこもっていたい.そんなときだってあると思います.
そういうつらさがどうしたってあって,どうしようもできない.
いつも,ずっと,とにかく苦しい,というかたもおられるかもしれません.
この社会が何事もなくまわっているようで,自分だけが苦しみのなかに閉じ込められ,取り残されているように感じることもあるかもしれません.
このつらい感情が,諸悪の根源のようにさえ思えるかもしれません.
こんなに自分を苦しめるなんて……と,人生の敵のように感じられるかもしれません.
感情なんて見たくない,感じたくない,触れたくもない…….
そんなかたにこそ,ぜひ本書を活用していただきたいと願っています.
感情は,むやみやたらに悪さをするわけではないようです.
感情がよくない方向にはたらいていくのには,案外とシンプルなパターンがあります.
それは,うすうすわかっているけれど,なかなか変えられないパターンのようです.
感情がからみあって,よくない方向に動いてしまう,そのからくり.
それがはっきり見えてくると,どうやって感情と関わったらいいかもわかってきます.
感情を大切にする,その感情とともに学んでいく.
UPは,その手助けをしてくれます.
人はどうして精神的につらい状況におかれるか.このことは学問的に重要な課題として,長らく世界中の研究者が取り組んできました.そして,そのヒントとして見えてきたキーワードが,感情でした.うつ,不安,怒り,おそれ,パニック,強迫,トラウマ…….そうしたたくさんの精神的なつらさはどれも,感情との関わり方が鍵となっていることが見えてきました.そして,感情という鍵を手がかりに,人のつらさや苦しみを理解する知恵が積み重ねられてきました.そうして積み上がってきた“知”を用いて,感情との関わり方を学ぶ方法,すなわち本書がお伝えするUPのスキルが形づくられてきました.
UPのスキルを学び,回復していくかたがたの姿は,なにやら不思議でもあります.
いわゆる“精神的な病”で苦しんでいるかたは,病院に来て,はじめに何らかの診断がつけられて,医学的な状況として理解されます.実際,何らかの病名のもとに長年治療を続けてこられたかたもたくさんおられます.認知行動療法はうつ病,不安症,強迫症,心的外傷後ストレス症等に有効であることが知られていて,医師の推薦で紹介されたり,ご自身が希望したりして,それらの病を治すために認知行動療法をはじめるかたがほとんどです.UPもそのひとつです.
しかしながら,UPがはじまってみると,あまり“病の治療”という雰囲気でもありません.
UPでは,自分の心の動きを観察して,感情に気づき,考えをやわらかくして,行動の結果を想像し,いままでと逆のことをやっていきます.身体の感覚を取り戻し,本当はやりたかったけどできてこなかったことに,挑んでいきます.
そこにあるのは,自分の気持ちを大切にして,自分に素直になって,自分のやりたいことを大事にするような姿です.簡単なことばかりではなくて,ときには不安ななかで勇気をだしたり,落ち込んで体が重たいときに外へでたりと,困難に立ち向かう瞬間もあります.
感情,感情,感情と,感情という言葉ばかりを綴っていますが,ここでお伝えしたいのは,人生まるまるまでを見渡したことでもあります.感情を大切にするということは,自分が感じていること,考えていることを大切にすることです.自分のひとつひとつの体験をみとめ,それを次の行動へと活かすということです.そうして積み重ねていった先に,いつの間にか,とても変わった自分の姿があることに気づくでしょう.・・・
UPは長年の科学研究の成果に基づいています.厳格な臨床試験は,バーロウ先生やファーキオーニ先生らUP開発チームのボストン大学だけでなく,スペイン,デンマーク,コロンビア,そして私たちの日本においても実施され,その安全性や有効性が示されてきました.
なぜUPは効果があるのか? この点についても学術研究から蓄積された理論があり,その理論を構成するひとつひとつの仮説を確かめる無数の研究があります.そしてまた,現在でもUPをよりよいかたちで,より広く,より確実に届けるための研究や試みが世界中で蓄積されつつあります.UPだけでなく,心理療法,臨床心理学,精神医学の研究は,いまでも世界中の患者のかたと研究者によって協力して進められています.
私たちのチームが2012年に本書の初版を出版したときには,まだほとんど経験がありませんでした.そのため,可能な限り英語原版にそった忠実な翻訳を心がけました.それから10年をかけて,病院にこられたたくさんのかたに協力をいただいて,このUPが役立つものかを確かめる臨床研究を進めてきました.つたないながらも,私たちなりに最高水準の,厳格な臨床試験をすべきだと考え,取り組んできました.そのため,臨床試験の成果がでるまでに長い月日と,たくさんの方々のご協力が必要でした.得られた結果は有望なもので,UPはたしかに日本のかたがたにお役に立てそうだと結論づけられました(Ito M, Horikoshi M, Kato N, Fujisato H, et al. Efficacy of the unified protocol for transdiagnostic cognitive-behavioral treatment for depressive and anxiety disorders: a randomized controlled trial. Psychological Medicine 2023; 53: 3009-3020).
英語改訂第2版でもたくさんの改善がされていて,感情のARC用紙の使い方など,日本チームが提案したアイデアも採用されました.そしていま,この日本版改訂第2版においては,たくさんのかたとUPに取り組むなかで学んできたことを,存分に込めることができました.そのおかげで,英語の原著の本質を変えることなく,日本のほうが使いやすいように,よりよくなったUPを届けることができたと感じております.
これまで一緒にUPに取り組んでいただいたかたがたに,心よりの感謝の気持ちをお伝えいたします.また,これまでの研究は,国民の税金から成り立つ日本学術振興会科学研究費助成事業等に支えられて実施されて参りました〈基盤研究(A)23H00080,若手研究(A)17H04788,若手研究(A)25705018,挑戦的萌芽研究16K13500,挑戦的萌芽研究26590171,若手研究(B)15K17319,若手研究18K13337〉.ここに記して,御礼を申し上げます.
本書は,国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターに所属するスタッフのかたがたからもたくさんの意見をいただきました.また,わかりにくいお願いも見事にイラストに仕上げていただいた野崎ひろこ氏,様々なわがままにも答えていただき,見事に編集をしていただいた櫻岡仁氏に,心よりの感謝をお伝えいたします.・・・
本書もいよいよ,最後のページとなります.
ここに至って,いまさらながらではありますが,UPに取り組むヒントをお伝えします.
UPは自分の感情,身体の感覚,考え,行動のいずれも大切にしていきます.それは,自分を大切にすることでもあります.ですから,UPに取り組んでいるときには,存分に自分を大事にしていただけたらと思います.UPに取り組む時間は,自分の人生に取り組む貴重な時間です.
本書を読んでいるとき,ペンを手にとって用紙に書き込んでいるとき,その一瞬一瞬の時間を大事にしてください.家のリビンクで,落ち着いた時間に,お気に入りのお茶を淹れてみて,ゆったりと用紙に向き合ってみてください.お気に入りの公園やカフェで,取り組んでみるのもいいでしょう.すきな音楽をかけてみてもいいでしょう.
自分のために時間をとって,自分のために自分を使う,そんなUPタイムをお過ごしください.
2024年2月
伊藤正哉,加藤典子,藤里紘子,堀越 勝
目次
推薦の辞
ワークブック日本版改訂第2版によせて
原著者一覧
第1章 感情にまつわる困難
①感情との関わりが難しくなるとき
②UPはどのような困難に役立ちますか?
③UPはあなたに合っているでしょうか?
第2章 UP で学ぶこと
①UPの内容
②ワークブックをどのように使うといいでしょうか?
③他の治療と同時にできますか?
④UP を行うとどのような効果が得られるのでしょうか?
⑤UPをはじめるタイミングは?
第3章 観察して記録する
①なぜ記録をつけるのでしょうか?
②客観的な観察者になる
③何を記録するのでしょうか?
用紙3.1 進行表
用紙3.2 不安尺度
用紙3.3 うつ尺度
用紙3.4 ポジティブ感情尺度
用紙3.5 その他の感情尺度(オプション)
第4章 目標を定め、やる気を育む
①困っていることをはっきりさせる
②目標を定め、ステップに分ける
③ステップの進み具合(進捗)を記録する
④やる気(動機づけ;モチベーション)
⑤変わること、今のままでいることの両面を考える
用紙4.1 目標を定める用紙
用紙4.2 両面を考える用紙
第5章 感情を理解する―3 点チェック
①どうして感情に注目するのでしょうか?
②どうして人には感情があるのでしょうか?
③感情とはどのようなものでしょうか?
用紙5.1 感情の3点チェック用紙
第6章 感情を理解する―前後を観察するARC
①感情のARC
②現在の反応パターンが作られた理由
③これまで学んできた行動パターンは、これから学び直せる
④ARC を使って観察し、自分のパターンについて情報収集していく
用紙6.1 前後を観察するARC用紙
記入例6.1 前後を観察するARC用紙
第7章 ありのままの現在に気づく
①ありのままの現在への気づきとは何でしょうか?
②「ありのままの現在への気づき」を練習する
③基本練習:ありのままの現在への気づき
④応用練習:音楽で感情を喚起して練習する
⑤実践練習:現在にとどまる
用紙7.1 ありのままの現在への気づき用紙
第8章 やわらかく考える
①考えはなぜ大切なのでしょうか?
②自動思考とは何でしょうか?
③思考の落とし穴とは何でしょうか?
④思考の落とし穴を見つける
⑤やわらかく考えるための問い
⑥感情についての考え
⑦侵入的で望まない考えやイメージについて、やわらかく考える
⑧自動思考の根底にある信念
用紙8.1 やわらかく考える練習用紙
用紙8.2 下向き矢印法
第9章 代わりの行動をとる
①感情行動とは何か?
用紙9.1 感情行動リスト
用紙9.2 代わりの行動を実践する用紙
第10章 身体感覚になれる
①なぜ身体感覚が重要なのでしょうか?
②身体感覚への解釈はその場の状況で変わってくる
③身体感覚に向き合えば自然と耐えられるようになる-内部感覚エクスポージャー
④身体感覚を引き起こす
用紙10.1 身体感覚テスト用紙
⑤くり返し身体感覚になれる
用紙10.2 身体感覚になれる練習用紙
第11章 感情エクスポージャー:UP スキルの総実践
①感情とともに学ぶ-感情エクスポージャー
②感情エクスポージャーの3つの方法
③感情とともに学び、生活を広げていく
④感情とともに学ぶうえで大切なこと
用紙11.1 取り組むことリスト
用紙11.2 感情とともに学ぶ用紙(両面版)
用紙11.3 感情とともに学ぶ用紙(1 枚版)
第12章 できてきたことを認めて、この先に活かしていく
①UPで学んだ大事なこと
②できるようになったことを、しっかりと認める
③この調子で歩んでいく
④困難や後退に備えておく
用紙12.1 できるようになったことのふり返り
用紙12.2 生活で実践するための用紙
補章 薬物療法について
①薬物療法についてのよくある疑問
②医師と相談することの大切さ
付録A クイズの答え
付録B 用紙の記入例
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書籍情報
- ISBN:9784787881687
- ページ数:208頁
- 書籍発行日:2024年4月
- 電子版発売日:2024年7月3日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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