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- NASH・NAFLDの診療ガイド2021
商品情報
内容
本書全体を定義,疫学,病因・病態,検査所見,病理所見,治療,予後の全7章に分け,図表を多用し診療に役立つ最新情報を記載.また前版に引き続き,病理所見はアトラス形式を用いてわかりやすく提示.さらに,最新の診療ガイドラインに準拠するとともに,その一歩先を行く内容を盛り込むことで,NASH・NAFLD診療の現状とスタンダードを指し示した.本疾患に携わる多くの方々に手にとっていただきたい一冊.
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序文
序 文
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,最も頻度の高い肝疾患です.世界の各地域からの報告により差はありますが,現代人の約20%がNAFLD に罹患しており,その中の約10%,即ち全人口の約2%が病理学的に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と診断される進行性の肝疾患を有していると推計されています.勿論,全ての患者さんに肝生検を実施するわけにはいきませんから,その実態は不明です.
同じく進行性の肝疾患であるウイルス性肝炎は,B 型肝炎ウイルス,C 型肝炎ウイルスの感染により引き起こされますが,ウイルス肝炎マーカーの測定により,その診断は比較的容易です.ウイルス性肝炎もNASH も肝癌のハイリスク群ですが,前者の場合は,ウイルス肝炎マーカー陽性者をリスク群とすることにより,効率的なサーベイランスが可能です.一方,NAFLD は頻度が高く,その中からNASH や肝癌のハイリスク群を拾いあげることは難しいのが現状です.
治療に関しても,NASH とウイルス性肝炎のおかれている状況は著しく異なります.ウイルス性肝炎の場合は,C 型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)やB 型肝炎に対する核酸アナログのように,特異的な治療薬があります.しかし,NASH の場合は診断されても,有効な薬物治療法が確立していないことが問題です.
このように,NAFLD・NASH の診療に関してはバイオマーカーの開発などの新しいブレークスルーが必要であり,同時に新規の治療薬の開発が期待されています.
NAFLD・NASH は肝臓学の研究,臨床において現在最重要のテーマの一つになっています.本書は,前著である「NASH・NAFLD の診療ガイド2015」を6 年ぶりに大幅に改訂したものです.本疾患の現在おかれている状況を的確に纏め,今後進むべき方向を示す書籍として,多くの先生方に利用されることを期待しています.
2021年3月
一般社団法人日本肝臓学会理事長
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学
竹原徹郎
刊行にあたって
日本肝臓学会はガイドラインを補完する目的で,各種疾患の診療ガイド,マニュアルを発刊しています.ガイドラインは信頼性の高い科学論文に基づいて執筆されます.しかし,作業開始後に発表された最新の論文は,ガイドラインに反映されません.また,専門医の間では一般化していても,論文化されていない事項,いわゆるexpert opinion に関して,言及するのは困難です.このため専門医はガイドラインに物足りなさを感じます.また,非専門医は図表などを盛り沢山にして,理解しやすくした刊行物を希望します.これらの要望に応えるのが,診療ガイド,マニュアルです.この度,日本肝臓学会は日本消化器病学会と合同で,「NAFLD/NASH 診療ガイドライン2020(改訂第2 版)」を発刊しました.これに応じて,「NASH・NAFLD の診療ガイド2015」を改訂し,本診療ガイドを刊行するに至りました.
生活習慣の変化によって,NAFLD/NASH は増加の一途を辿っています.この情勢を鑑みて,日本肝臓学会は2010 年に「NASH・NAFLD の診療ガイド2010」を発刊しました.2014 年には同ガイドの要約版を作成し,ホームページにも掲載しています.また,同年に日本消化器病学会が日本肝臓学会の協力の下に,「NAFLD/NASH 診療ガイドライン2014」を刊行した際には,これを補完する目的で「NASH・NAFLD の診療ガイド2015」を発刊しました.その作成にあたっては,NASH 診断WG と同病理医協議会を立ち上げました.このため2015 年版には病理所見がアトラス形式で解りやすく提示してあり,わが国におけるNASH の組織学的診断に関する均てん化に寄与しました.今回の2021 年版も前版の方針を引き継ぎ,病理所見のみならず,図表を満載して,読者が理解しやすいように編集しております.執筆者は全員が「NAFLD/NASH 診療ガイドライン2020(改訂第2 版)」の作成に関わった専門医です.また,同ガイドラインの作成責任者である徳重克年先生(東京女子医科大学)には,アドバイザーとして加わっていただきました.これによって,本刊行物の内容はガイドラインと齟齬がないように配慮されています.最新版のガイドラインに準拠し,より解りやすく,さらに一歩先を行く刊行物と見なされます.
本刊行物の草稿は,企画広報委員会の委員が全員で査読しました.指摘された事項は,執筆者全員とアドバイザー,企画広報委員会委員長からなる会議で討議し,その決定事項を最終稿に反映させました.COVID-19 蔓延下で多忙な中,ご尽力いただいた関係者の皆様に感謝申し上げます.わが国の肝癌は,ウイルス性症例が減少する一方で,NAFLD/NASH などによる非ウイルス性症例が増加しています.本刊行物がわが国における肝癌の撲滅に寄与することを期待します.
2021年3月吉日
日本肝臓学会副理事長,企画広報委員会委員長
埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科
持田 智
目次
第1章 NAFLDの定義と分類
1. 非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDとは
2. 疾患概念の変遷と臨床現場での認識の変化
3. NAFLDの定義(診療ガイドラインに準拠した定義)
第2章 NAFLDの疫学
1. NASH・NAFLDの有病率
1 有病率と性別・年齢・地域との関連
2 有病率とBMI との関連
3 線維化への進展
2. NAFLDにおける生活習慣病の頻度
3. 非肥満患者におけるNASH・NAFLDの有病率
memo アジア人における非肥満NAFLD
4. 小児におけるNASH・NAFLDの有病率
memo B, C型慢性肝炎治療後の脂肪肝
第3章 NAFLDの病因・病態
1. NAFLDの基本的病因・病態
1 肥満
memo メタボリックシンドローム
memo アディポサイトカイン
2 インスリン抵抗性
2. NAFLDの発症機序
1 遺伝的素因
1)PNPLA3 遺伝子
2)NAFLD病態に関与するその他の遺伝子多型
a.TM6SF2
b.GCKR
c.MBOAT7
d.DYSF
e.PEMT
2 脂肪肝形成にかかわる脂質代謝
1)脂肪酸およびTG 合成系
memo adenosine monophosphate(AMP)activated protein kinase(AMPK)
2)肝細胞での脂肪酸酸化
3)肝細胞からのTG の血中放出
3. 脂肪肝に伴う肝細胞傷害の機序
1 酸化ストレス
memo 活性酸素種(ROS)とROS 消去系
1)ミトコンドリアの異常
2)ミクロソームおよびペルオキシソームの関与
2 脂肪毒性
3 腸内細菌叢の変化と自然免疫系
4 NAFLD病態形成に関与するその他の要因
第4章 NAFLDの検査所見
1. 肝脂肪化診断に有用な画像検査
1 腹部エコー検査
2 VCTE
3 MR spectroscopy(MRS)
2. 肝線維化診断に有用な血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステム
1 肝線維化マーカー
2 スコアリングシステム
3. 肝線維化診断に有用な画像検査
4. 肝生検の適応症例
5. 肥満・2 型糖尿病患者におけるスクリーニング
第5章 NAFLDの病理所見
1. はじめに
2. 病理所見
1 ballooning の評価
2 マロリー・デンク体の評価
3 脂肪化の評価
4 線維化の評価
3. 所見の記載と総合評価
4. 参考資料
5. まとめ
第6章 NAFLDの治療
1. はじめに
2. NAFLDの治療方針
3. 食事療法・運動療法
4. 薬物療法
1 糖尿病治療薬
1)チアゾリジン薬
2)SGLT2阻害薬
3)GLP-1受容体作動薬
4)ビグアナイド薬(メトホルミン)
2 脂質異常症治療薬
1) スタチン系薬剤(HMG-CoA 還元酵素阻害薬)
2)フィブラート系薬剤
3)エゼチミブ
3 降圧薬
1) アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),ACE 阻害薬
4 抗酸化療法
1)ビタミンE
2)ペントキシフィリン
3)ベタイン
4)瀉血療法
5 肝臓用薬
1)ウルソデオキシコール酸
2)強力ネオミノファーゲンシー ®
6 現在開発中の薬剤
5. 外科療法
1 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術,腹腔鏡下胃バイパス術
2 肝移植
第7章 NAFLDの予後
1. はじめに
2. NAFLDの予後
3. NAFLの予後
4. NASHの予後
5. NASH肝硬変
6. NASH肝細胞癌の特徴
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書籍情報
- ISBN:9784830621109
- ページ数:71頁
- 書籍発行日:2021年3月
- 電子版発売日:2021年4月30日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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